NMNを使うことで、NADを減らせないようにする
メディア関係者を集めたクリニックの内覧会では、今井教授はクリニックの理念を説明した上で、老化のメカニズム、最先端の研究の内容にも触れてくれました。
「実は老化、それから寿命の決定というのは、ひとつの臓器だけで行われているものではないんです。例えば、視床下部、脳の奥にある小さな領域が、老化・寿命のコントロールに非常に重要な役割を果たしているということがわかってきた。視床下部は、骨格筋、脂肪組織、小腸といった別々の組織とコミュニケーションをとっています。この臓器、各組織のコミュケーションが、老化・寿命の制御に非常に重要だということがわかってきた」
「では、どうして、そのコミュニケーションが崩れてきてしまっているのか。実は、NADといわれる物質が、私たちの身体の中で減少してしまうというのが引き金になっていることがわかってきた。これには、私の今までの研究が非常に貢献しているんですけど、NADは生命活動をしていく上で、必須な物質なんです。それが減ってしまうことが原因のひとつだとわかってきた。これが、ある一定レベルより下がってしまうと、一番敏感な細胞が機能不全を起こします。例えば、インスリンという血糖値を下げるホルモンを分泌する膵臓のベータ細胞だとか、ある種の脳の神経細胞といったものが、機能不全を起こす。そうすると、そこで起きた問題が他の臓器や組織に広がっていくことで、玉突き式に問題が広がっていく」
「こうした一連の問題が、ある特定の細胞、臓器、組織から全体に起こる過程が、老化ととらえています。これが、世界的な老化・寿命研究のコンセンサスになっている」
「じゃあNAD減るのがきっかけだったら、減らないようにすればいいじゃないか。これが世界的に着目されている抗老化方法論の要の考えなんです。非常に単純なんです。そこで、使われるのが、NMNと呼ばれている物質です。NADのひとつ手前の物質。これを私たちがとると、体内でNADに変換されます。NMNを使うことで、NADを減らせないようにすることで、老化を遅らせることにつながる。実は、マウスの動物実験では、完全に確立されています」
「では、人ではどうか。当クリニックでは、この最先端の抗老化研究を社会実装していくことを目的としているのです」
“夢の若返り研究”の今後が楽しみです。
今井教授の足跡、老化・寿命研究の現状については、今井教授の最新刊『開かれたパンドラの箱 老化・寿命研究の最前線』で詳述されています。
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文・撮影/堀晃和