血液中のブドウ糖の濃度 【答え】GI値がもっとも大きいのは、(3)のジャガイモです。 そもそも血糖値とは?血糖値とは、「血液中のブドウ糖(グルコース)の濃度」です。なぜブドウ糖だけを考えるのでしょうか? 食品表示基準では…
画像ギャラリー「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』のクイズ」では、三択形式のコラムで読者の知的好奇心に応えます。第16回のテーマは「血糖値」です。
糖尿病は、食事療法が重要
糖尿病の予防や治療では食事療法が重要です。以前は「カロリー制限」が主流でしたが、近年は糖質の摂取量に着目した「糖質制限」という考えも広まってきました。さらに最近では、食品に含まれる糖質の含有量が同じでも、糖質の種類やほかの栄養素などの影響によって食後の血糖値の応答が異なることが分かり、「GI値」(Glycemic Index:グリセミック・インデックス)や糖質含有量を考慮した「GL値」(Glycemic Load:グリセミック負荷)という概念が提示されています。
【問題】
さて、次の食品のなかで、食後の血糖値上昇がもっとも大きい(GI値がもっとも高い)ものはどれでしょうか?
(1)リンゴ
(2)フルーツヨーグルト
(3)ジャガイモ
答えは次のページ!
血液中のブドウ糖の濃度
【答え】
GI値がもっとも大きいのは、(3)のジャガイモです。
そもそも血糖値とは?
血糖値とは、「血液中のブドウ糖(グルコース)の濃度」です。なぜブドウ糖だけを考えるのでしょうか?
食品表示基準では「炭水化物」は「糖質」と「食物繊維」とに分けられます。「糖質」のうちショ糖や麦芽糖などの「少糖類」と、でんぷんやオリゴ糖などの「多糖類」は、そのままでは吸収されません。消化酵素により最終的に単糖類に分解され、小腸で吸収できるようになります。(なお、「糖類」とは、糖質と混同されがちですが、食品表示基準では単糖類または二糖類を指します)
単糖類にはブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、ガラクトースがありますが、食べ物から摂取された糖質は、消化吸収を通して最終的にはブドウ糖に分解され、エネルギー源として利用されます。ブドウ糖は、特別な場合を除いて、脳がエネルギーとして利用できる唯一の物質で、人体にとっても重要な栄養素です。
なお、血糖値は「グルコース」の濃度なので、フルクトースガラクトースは食後すぐの血糖値上昇には直結しません。(ただし小腸で吸収されたフルクトースとガラクトースは肝臓に運ばれ、一部がグルコースに変換される経路もあります)
果物類などに含まれる果糖(フルクトース)の甘味は糖類の中で最高で、ショ糖(砂糖の主成分)の約1.5倍甘いと言われます。グルコースよりフルクトースで甘みを出すようにすれば、血糖値上昇を抑えることができます。ただしフルクトースが過剰になると、中性脂肪に変わり、脂肪肝や肥満、血中の中性脂肪濃度上昇の原因になるため、注意が必要です。
グルコースを多く含む食品は?
(3)のジャガイモの主成分はでんぷんです。でんぷんはグルコースがつながってできた多糖です。したがって消化酵素によりでんぷんがグルコースに分解され、血糖値を大きく上昇させます。ゆでたジャガイモでGI値は78程度です(参考[2])。
(1)のリンゴは、糖質量は決して少なくはありません。しかし果糖(フルクトース)の割合が高く、GI値はそれほど高くありません。GI値は36程度です(参考[2])。
(2)のフルーツヨーグルトもGI値はそれほど高くはなく、GI値40程度(参考[2])です。種類にもよりますがフルーツはフルクトースの割合が高く、ヨーグルトなどの乳製品はガラクトースの割合が高いためです。
なお、ここでのGI値はあくまで参考値で、商品によって大きくバラつくことがあります。
(参考)
[1] 炭水化物 / 糖質|e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-018.html
[2]「GIとカーボカウント」(日本糖尿病学会誌第56巻第12号)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/56/12/56_906/_pdf/-char/ja
1990年代に注目されだしたGI値
GI値は、食物を摂取した後の血糖値上昇を評価するために、その食物に含まれる炭水化物と同じ重量の炭水化物を含むブドウ糖、白パンあるいは白飯を基準とし、血糖上昇曲線下の面積比として算出したものです。
1990年代にFAO(国際連合食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が、「食後の血糖応答に関する指標として利用できる」というレポートを出し、GI値は注目されるようになりました。
GI値に影響する要素として、前述の糖質の種類のほかに、つぎのようなものがあります。
・脂質はグルコースの吸収を遅らせるのでGI値を低下させる
・食物繊維はグルコースの吸収を抑制するのでGI値を低下させる
・タンパク質やアミノ酸を糖質と同時に摂取すると、インスリン分泌刺激が高まるため、タンパク質やアミノ酸の含有量の多い食品のGI値は低い
最近の研究結果で、GI値の高い食事が糖尿病や心筋梗塞の発症率のリスクを増加させる可能性があることが示され、メタボリックシンドローム関連因子との関連も示唆されています。しかし日本の厚生労働省は、「どの程度の GI(値)の食事を勧めるべきかに関する知見はまだ十分ではない」としています(参考[5])。
(参考)
[3] 糖尿病は糖質制限で改善できるのか(糖尿病お助け隊)
https://gluco-help.com/media/diabetes-carbohydrate126/
[4] 糖尿病の食事に「グリセミック・インデックス」を導入 血糖値の急上昇を避ける食べ方(糖尿病ネットワーク)
https://dm-net.co.jp/calendar/2021/035852.php
[5] 日本人の食事摂取基準(2020年版)p158(「日本人の食事摂取基準」策定委員会、厚生労働省)
00_5_名簿_cs6_0110追加.indd (mhlw.go.jp)
出題:三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治
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