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米国人の差別的優越感

さて、怒りにまかせてさらに筆を進める。

つらつら思うに、ひょっとして米国民の多くは、未だに日本およびアジア諸国に対して、差別的優越感を持っているのではあるまいか。

さきの「クリントン唐変木説」はけっこう自信があるので断言したが、これはあくまで個人的仮説であるから、少々トーンは落とす。

私はかつて陸上自衛隊に在籍し、心身ともに厳しい教育を受けた。自衛隊では肉体の鍛錬とともに、服務規程や精神教育を徹底して行う。新隊員は1日に数時間、一般部隊においても週に数時間の座学時間を設けて、自衛官としての心構え、すなわち修身道徳を学ぶのである。たまに妙な宗教に走る不心得者もないではないが、その結果わが自衛隊員は総じて真面目である。総人員に対する犯罪率を考えても、ほとんど驚異的な真面目さであろうと思われる。なにしろ自衛官は、警察官よりも事件を起こすことが少ないのである。

そもそも軍隊は、遠くナポレオン・クラウゼヴィッツの時代にその組織的完成を見ている。以後各国の軍隊は機能的な原型はほとんど変えることなく、むしろ兵器の開発と兵士の質的向上の点に於(おい)て進歩をとげてきたと言える。存在のよりあしはともあれ、先進諸国の軍隊に、今や社会良識をわきまえぬ兵士はいないはずなのである。

少なくとも自衛隊にはいない。徒党を組んで無差別に婦女子を拐(かどわか)し、暴行を加えて畑に捨ててくるような兵士は一人もいないと断言する。

本当は米軍にもいないはずなのである。自衛隊と同じ完成された軍人教育によって錬成され、しかもより大規模で、名誉も矜(ほこ)りも完全に与えられている合衆国軍人に、そんな不逞(ふてい)の輩(やから)がいるはずはないと思う。

だが現実に、彼らは犯罪をくり返している。

1991年の4月には2人の海兵隊員が沖縄県内の5ヵ所で連続強盗を働いた。

同年6月、沖縄市の公園で2人の兵士と1人の軍人家族が日本人を刺し殺した。

1992年1月には海軍の下士官が77歳のスナック店主を襲い、金を強奪した。

1995年の5月には24歳の日本人女性が4人の海兵隊員に待ち伏せされ、うち1人にハンマーで殴り殺された。

その他、米軍人の横暴は露見しているものだけでも枚挙に暇(いとま)なく、今回の女児暴行事件も、実はその一つに過ぎないのである。

まさか彼らが、これと同じことを本国でやっているとは思えない。もしそんなことがあるのなら、軍紀そのものがアメリカの社会問題として日本にも伝わってくるはずである。だとすると、彼らは本国を離れた駐留先でのみ、事件をくり返していることになる。

私が、米国人の差別的優越感の存在を疑う理由はこれである。

信じたくないことではあるが、もし仮にそうした差別主義によって合衆国のリベラリズムなるものが形成されているとするなら、われわれは現在の世界観も、過去の歴史もすべて見直さなければならないことになる。

私が、クリントンを唐変木だと罵った理由は、すなわちこれである。

絶対に信じたくないことではあるが、もし仮に彼と彼の軍隊がアジアに対する差別主義をひそかに抱いており、その必然の結果として無辜(むこ)の日本国民が殺傷されたとするならば、彼らが広島や長崎に投下した原子爆弾にもそれなりの意味を見出さねばならないことになる。

50年の時を経てこうした仮定を試みることは、1人の日本人としてほとんど恐怖を感ずる。しかし仮定が容易であるのにひきかえ、私には差別主義の存在についての論理的な否定が見出せない。だからこそ、こんな怖ろしい仮定を思いつかせたクリントンの薄ら笑いと軽薄なコメントを、唐変木だと罵るのである。

私はまさか今さら、世界を相手にして戦ったあの戦争が、人種差別をめぐる義戦であったなどとは思いたくない。ましてや義のための戦(いくさ)がたった2発の原子爆弾で敗れてしまったなどとは、考えたくもない。

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おとなの週末Web編集部 今井
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