クッキングパパの読んで美味しいレシピの話

「佐藤錦」生誕100年! “果物の宝石”さくらんぼ 短い旬の採れたてを味わう荒岩流チェリータルトの鉄則

週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で連載中の「クッキングパパ」は、主人公のサラリーマン荒岩一味が、得意の料理の腕を振るって、家族や同僚らとの絆を深めるストーリーが人気。 著者のうえやまとちさん自身が、試行錯誤を繰り返…

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週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で連載中の「クッキングパパ」は、主人公のサラリーマン荒岩一味が、得意の料理の腕を振るって、家族や同僚らとの絆を深めるストーリーが人気。

著者のうえやまとちさん自身が、試行錯誤を繰り返しながら作り上げた自信作のオリジナルレシピを、詳細なイラストと臨場感あふれる筆致で紹介しています。本欄では3月3日号で通算1600話を突破した膨大なエピソードのなかから、毎週1つを取り上げ、その料理にまつわる四方山話をお届けします。

長引くコロナ禍で、自炊をする人が増えているいま、「クッキングパパ」を参考に料理を作って食べて楽しんでみませんか。第15回目は、「サクランボ」です。

“クッパパ”荒岩流チェリータルトは「分量」と小麦粉&砂糖の鉄則が美味しさの秘密

まるで真紅の輝きを放つルビーのような「果物の宝石」サクランボが実る季節になりました。愛らしい実をそっと頬張ると、甘酸っぱいジューシーな果汁が口の中いっぱいに広がり、得も言われぬ幸せに包まれます。

なかでも、初めて実を結んでから100年になる最高峰「佐藤錦」は、6月後半にかけて旬を迎えます。みずみずしいサクランボが手に入ったら、ちょっと贅沢なクッキングパパ「COOK.130 中年四銃士のチェリータルト」に挑戦してみましょう。

タルトとは、焼き上げた生地の器の中にクリームを入れて、季節のフルーツをのせたフランス菓子です。サクサクした食感の生地に、甘さ控えめのクリームと新鮮なフルーツの“三味一体”が特徴です。ティータイムのお供に、気取らない手土産にも喜ばれそうです。

お菓子作りの鉄則は、【1】分量をきちんとはかる 【2】小麦粉、砂糖などは必粉ふるい器にかけ、ダマがないよう必ずふるってから使う――これに尽きます。あとは時間と温度を設定してオーブンに入れておけば、うまい具合に焼き上げてくれますので、気軽にチャレンジしやすいのではないでしょうか。

サクサク生地は手早く、しっとりムースは慎重に

まずは、生地作りから。バターは、冷蔵庫から出したばかりのよく冷えた硬いままをボウルに入れ、室温で溶かさぬよう手早く細かく切ります。砂糖→小麦粉の順に、粉ふるい器でよくふるいながら加えていきます。

さらに卵も入れ、泡立て器ではなく箸でよくかき混ぜ合わせます。最後に手で強くもみ込むようにひとまとめに整えたらラップで包み、冷蔵庫で充分寝かした後、タルト型に素早く均等に伸ばしていきます。オーブンに入れる前に底が盛り上がらぬよう、フォークで所々に穴をあけるひと手間もお忘れなく。

生地を15分前後焼いて充分に冷ましている間、流し込むムースを作りましょう。

なめらかな舌触りになるために、下ごしらえはひとつひとつを慎重に。最初に温めた牛乳に砂糖を完全に溶かしきって60℃以下まで冷ましたら、予めふやかしておいた粉ゼラチンを入れて溶かします。

生クリームは使う直前まで冷蔵庫で冷やして。泡立てる目安としては、持ち上げるとクリームがつーっと細いひも状に垂れ落ちる状態です。

最後に、ヨーグルトや香りづけのレモン汁、ホワイトキュラソーすべてをよく混ぜ合わせて、焼き上がったタルト型に流し込みます。この際、後からのせるサクランボでかさが増すのを考慮して、8割程度にとどめて。また、せっかくのせたサクランボがムースの中に沈み込まぬよう、かたまり具合をよく見極めてからのせてくださいね。

お花見の桜からサクランボは収穫できる?

アメリカでは定番スイーツのチェリーパイ。こちらも“日本のさくらんぼ”とは違った味わいが堪らない(Photo/norikko-Stock.Adobe.com)

ところでこのさくらんぼ、春にお花見をする桜の木から収穫したものなのでしょうか。答えは「ノー」。サクランボがなるのは、実桜(ミザクラ)桜桃(オウトウ)と呼ばれる品種で、私たちがよく見かけるソメイヨシノとは別物です。

名前の由来は「桜の子(坊)」が訛って「サクランボ」になったと言われています。そのコロンとした愛らしい実には、鉄分やカロチンといった栄養素がたっぷり詰まっています。

また、家の庭にサクランボの木を植えてみたものの、実がならないという悩みも。そもそも、さくらんぼの木は同じ品種だけでは受粉しない性質があるため、相性の良い別品種の木を近くに植えて交配させるようにしなければなりません。ハチなど自然に頼りすぎず、人の手で受粉させるデリケートな一面もあります。

余談ですが、愛媛県でタルトと言えば、ユズや栗などの入った餡が巻かれたロールケーキの和菓子「タルト」が一般的だとか。

江戸時代、長崎に入港したポルトガル船が持ち込んだ菓子の製法が、愛媛・松山に持ち帰って広まったそう。農林水産省が選ぶ「うちの郷土料理」にも入っています。

一方、アメリカでは、赤黒いダークチェリーやサワーチェリーが入った「チェリーパイ」が、定番スイーツの一角を占めています。人気サスペンスドラマ「ツイン・ピークス」で、主人公が度々コーヒー片手にチェリーパイを頬張る姿が、日本でも話題に上りました。また、7月4日の独立記念日を祝うデザートとしても欠かせないものとなっています。

このように、サクランボの小さなひと粒が放つ存在感は、まさに宝石のような輝きと尊さを秘めているのです。

文/中島幸恵、漫画/うえやまとち、メイン画像/kei-u-Stock.Adobe.com

◆『クッキングパパ』とは?

福岡市博多を舞台に、商社の営業課に所属するサラリーマン、荒岩一味が家族や同僚、友人らに得意な料理の腕前を披露、食を通じて周囲の人々に笑顔とパワーを与える物語。作中に数ある料理のレシピは、定番料理からオリジナルメニュー、地元九州の郷土料理まで多岐にわたり、詳細なイラストとポイントを押さえた簡潔な説明はいま、すぐ作りたくなると好評を博している。

週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で1985年から連載している人気シリーズで、2022年5月現在、単行本は161巻。

※「おとなの週末Web」の記事では本稿紹介の漫画、クッキングパパ 「COOK.130 中年四銃士のチェリータルト」を一話丸ごと読むことができます。

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