審査をしていて印象に残った料理の数々
ここで今回いただいた中で印象深かった料理をいくつかご紹介します。
まずは、白鳥翔太さんの「どぜう春巻き」。
東京・浅草橋に店を構えていることから、ドジョウ料理をセレクト。ドジョウのふわっとした食感と衣のパリッとした食感のコントラストが小気味いい。若い人が気軽にドジョウを食べられるきっかけになるのでは!? そう感じさせた一品でした。
審査員からは、ドジョウ料理だから柳川のようにゴボウを入れるか、その代わりになる具材を入れるともっと美味しくなったのでは? という声が挙がっていました。
続いて、鄭大羽さんの「白いポッサムキムチ」。
白菜キムチをキムチと汁に分解。キムチは唐辛子を洗い流すことで、昔ながらの白いキムチにしています。さらに、汁は自身が生まれ育った埼玉県産のビーツをピューレにして合わせ、再構築。
見た目からして衝撃のお料理は、はさみでカットしていただくというこれまでにないキムチの食べ方。
中からマグロやホタテ、いちごなどが現れ、甘・辛・酸のバランスがお見事。見た目だけでなく、味もインパクトがありました。
そして、根本郁弥さんの「イカ人参」。
自身の出身地・福島県の郷土料理を新たな視点で作り上げた意欲作。もとは乾燥スルメイカと人参の千切りで作られるところを、生のイカにチェンジ。人参は福島県国見町産の長人参をピューレにして甘味と旨みを引き出しています。
見た目から美しく、サーブ時にふわっと醤油の香りが漂い、食欲をそそります。クリーミーな人参ソースに、イカの食感のマッチングが見事で、食べている途中から「また食べたい!」と思うほどドハマリしました。
今回審査させていただいて思ったことのひとつは、「M-1グランプリ」のように、登場の順番に左右されること。「最初なんで評価を高すぎないように」という「M-1」の審査員の方々の気持ちが少しわかりました。
また、調理時間から少し経っての提供になるシェフもいて「できたてだったらより美味しかっただろうな」と思うこともしばしば。それを考えると、提供タイミングに左右されない料理を考えるというのも戦略のひとつだったかもしれません。