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「経木、指サック、絆創膏」

指のケガの治療、今昔

包丁について、続きを少しだけさせてもらいます。

包丁を扱う板前にとって指のケガは避けて通れないもの。私もこれまで何百回となく指を切りました。

私の若い時分など、指を切ろうものなら親方に「バカヤロウ! 塩で揉んで酢で締めとけ!」なんて怒鳴られたものです。

そもそも板前が指を切るのは怠け者だからと思われていた時代。「指を切りました」なんて言うと、「仕事がしたくないのか?」って睨(にら)まれるのがオチです。

とはいえ時代は変わりました。さすがに怠けたいから指を切る奴はいないとは思いますが、少なくとも注意散漫であるのは間違いありません。

今の若いもんはハナから考え方が違います。「痛いから仕事ができません」と悪びれたところがないのだからカチンときます。私の若い頃にそんなことを言おうものなら、確実に張り倒されていたでしょう。

当時、私たちは指を切ったら経木の紐で縛り上げて血を止めていました。経木というのは、スギやヒノキを紙のように薄く削ったものです。紐状に細長くしたものは駅弁の箱を縛るのに使ったりしていました。これできつく縛れば血は止まるのですが、水に濡れると沁みて痛いし、治りも遅かったんですね。そこで登場したのが指サック。これは重宝しましたね。

でもねえ、絆創膏には敵いませんでした。いまではありとあらゆるタイプの種類が売り出されていますから便利なことこの上ありません。私らの商売にとって、欠かせないのは絆創膏なんですね。

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おとなの週末Web編集部 今井
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