「辛味辣醤」で引き立つ野菜の甘味とニンニクのパンチ
おっと、ここで炒飯が運ばれた。気になったのはボリューム。ご飯茶碗1杯分にも満たない。小サイズとはいえ量が少なすぎる。ハーフと謳っていても1人前の2/3くらいの炒飯を出す店もあるというのに、なんて書くと、岐阜タンメンのファンからボロクソに書かれるんだろうなぁ。でも、これが偽らざる気持ちなのだから仕方がない。
ただ、お世辞や忖度抜きにして味は抜群によかった。食感はパラパラとしっとりの中間くらい。チャーシューがゴロゴロ入っていて肉の味もしっかり感じた。ピンク色の蒲鉾も町中華を意識していることも伝わってきた。何よりも、岐阜タンそばの野菜の旨みが溶け込んだスープとの相性が抜群だったのだ。
さらに驚いたのは、いちばん最初に出てきた「辛味辣醤」。麺を半分ほど食べたところで投入すると、味がガラリと変わったのだ。辛さを足すことで野菜の甘みとニンニクのパンチが引き立つのである。
そこでパッと頭に浮かんだのが名古屋のご当地麺である台湾ラーメン。ニンニクと唐辛子が入る岐阜タンそばや岐阜タンメンも一度食べたらクセになる不思議な魔力を持っているのだ。後日、今度は近所にある『岐阜タンメン』で「半チャンセット」(980円)を食べに行ってしまったのが何よりの証拠だ。
なぜ店名に「岐阜」を冠しているのか
ちなみに『岐阜タンメン』の本店は岐阜市内にあるものの、運営会社の本社は愛知県一宮市。店舗も岐阜県下8店舗に対して、愛知県下には今回紹介した『岐阜タンメンの町中華』を含めて13店舗と愛知県の方が多い。にもかかわらず、なぜ岐阜なのだろう。その答えは、『岐阜タンメン』の店内の貼り紙にあった。
何でも、岐阜タンメンの前身となるタンメン専門店は愛知県稲沢市で屋台からスタートしたそうで、東海地方にタンメンの文化がないこともあって当時は閑古鳥が鳴いていたという。ところが、岐阜県岐阜市への出店をきっかけにたくさんの客が訪れるようになり、「岐阜の人に感謝タンメン」を略して岐阜タンメンと名付けたとか。貼り紙にはこう書かれている。
「岐阜の人たちが支持してくれたこのタンメンを、日本全国のたくさんの人々に食べてもらいたい。岐阜にたくさんのお客さんを呼んで岐阜に少しでも恩返ししたい」と。実にイイ話だ。お腹のみならず、心も満たされた。
取材・撮影/永谷正樹