どこにでも見られる菌
ボツリヌス食中毒とは?
ボツリヌス菌が産生したボツリヌス毒素を食品とともに摂取した場合、摂取後8時間~36時間で、吐き気、嘔吐や視力障害・言語障害などの神経症状があらわれることがあります。これがボツリヌス食中毒で、重症例では呼吸麻痺で死亡します。ボツリヌス菌は、偏性嫌気性菌(酸素がほとんどないところでのみ生育できる菌)であるため、低酸素状態のビン詰、缶詰、レトルトパウチ食品などで増殖が可能です。増殖の際にボツリヌス毒素を産生し、これが食中毒を引き起こします。ボツリヌス菌が増殖すると、変形可能な容器は膨張し、開封すると異臭がするので、そのような場合は注意が必要です。
予防法は?
ボツリヌス毒素は80℃で30分間(100℃で数分以上)加熱すると失活するので、食べる直前に十分加熱するのが効果的です。ボツリヌス菌自体は、芽胞と呼ばれる状態では100℃の高温でも死滅しませんが、体内に入ったとしても、ほかの腸内細菌との競争に負けてしまい、毒素を出すまで腸内にとどまることができず、通常は何も起こりません。ボツリヌス菌はどこにでも見られる菌で、またその産生する毒素が最強の毒性を持つにもかかわらず、食中毒の患者数がそれほど多くないのは、このような理由によります。
1歳未満の乳児は要注意
ただし1歳未満の赤ちゃんの場合、腸内環境がまだ整っておらず、ボツリヌス菌が腸内で増えて毒素を出すことがあります。これが乳児ボツリヌス症です。特にハチミツは加熱処理を行わないため、ボツリヌス菌が混入していることがあり、幼児にはリスクの高い食品です(1歳以上ならリスクは高くありません)。ハチミツ入りの飲料やお菓子は1歳未満の乳児には与えないようにしましょう。
(参考)
[7] ボツリヌス菌|「食品衛生の窓」(東京都福祉保健局)
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/boturinu.html
[8] ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161461.html