最近、焼酎が面白くなってきた。“らしさ”を大切に造られてきた焼酎が、もっと自由に、遊び心あふれる造りへと進化してきているのだ。心震わす斬新な香り、感動を呼ぶ味わい。美味しい新世界を案内したい。
【旨さのヒミツを求め、いざ鹿児島へ】
話題の芋焼酎はこうして生まれた
その名も、インパクト絶大な「フラミンゴオレンジ」。みずみずしい柑橘の香りが広がる、ミラクルな本格芋焼酎だ。2018年の発売直後から話題を呼び、今では入手困難な人気銘柄。芋だけで造っているのにオレンジのような香りがするのはなぜ?その謎を追いかけて鹿児島の国分酒造を訪ねた。
サニークリーム、フラミンゴオレンジ、クールミントグリーン
蔵は、田んぼが広がるのどかな山間部にある。モダンなラベルから想像した洒落たイメージとはかけ離れた、昔ながらの酒蔵だ。現代の名工に選ばれた安田杜氏は御年70歳。飄々とした人柄で、笑顔がとてもチャーミング。「ちょっと」と手招きされついていくと、そこには小さな花壇が。米麹に使う稲と主原料のさつま芋を育てる試験畑だという。
「稲を育てて初めて米麹のことがよくわかったんです」と安田杜氏。原料を栽培することが焼酎造りにもたらすものは大きいという。研究家肌の安田杜氏はこれまで芋焼酎の世界に斬新な変革をもたらしてきた。
例えば、古(いにしえ)の焼酎の味わいを求めて大正時代のさつま芋・蔓無源氏(つるなしげんじ)を復活させたり、米麹が主流の芋焼酎で、蒸した丸芋に直接麹菌をつける芋麹を初めて成功させたり。その背景には自身が思い描く焼酎を造りたいという圧倒的な熱量があるのだ。
「フラミンゴオレンジ」の前哨戦となったのは、減圧蒸溜への挑戦だ。芋焼酎は一般的に常圧蒸溜でどっしりとした酒質を出すが、減圧蒸溜はもっとライトな酒質になる。最初の年は「なにかインパクトがなかったなぁ」と苦笑い。そこでアイデアを出してきたのが笹山社長だ。「酵母を変えたらどうだろう」。
選んだのは鹿児島で開発された香り酵母。これが当たった!華やかなオレンジを思わせる香りが立ち昇ったのだ。調べてみると、柑橘性の香りをもたらすシトロネロールとネロールという成分が他の焼酎の10倍も含まれているという。「できちゃった焼酎だね」と安田杜氏はちゃかすが、そんなわけはない。確かな技術とゆるぎない信念に基づいた、二人三脚による夢の結晶なのだ。
『国分酒造株式会社』 @国分
『国分酒造株式会社』の情報
[住所]鹿児島県霧島市国分川原1750
[電話]0995-47-2361
※一般の見学は不可
https://kokubu-imo.com/