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八代海の夕陽に次の旅の始まりを予感する

入店すると、バーテンダーの木場さんを含め、スタッフは全員アロハ姿。分かりやすいメニューもあり、一見でも寛げる雰囲気だ。熊本の柑橘や薬草を使ったジンベースのシグネチャーカクテル「夜香木」は、甘い香りが魅惑的。旅先の感情の高ぶりも手伝って、ついスタッフと話し込んでしまう。

海外のバーでの勤務経験がある木場さん。「外に出て、故郷の良さを痛感しました」。地元素材を使ったカクテルは観光客のみならず、地元民にも評判だ。その美酒を楽しむうちに、夜は更ける。

翌朝目覚めたら、熊本駅から鹿児島本線に乗って八代に向かう。肥薩おれんじ鉄道に乗り換えたら、一路水俣へ。単線の一両編成に揺られていると、窓外の八代海が、ことさら穏やかに凪いで見えてくる。

2015年にリニューアルした水俣駅

水俣名物・水俣チャンポンは、かん水少なめの白い麺が特徴的。「コシはありませんが、スープをよく吸います」と、『喜楽食堂』店主・三牧さんは話す。「戦後の水俣は漁業・林業・工業で栄えたため、外の人との交流が盛んでした。そのなかで多様な麺文化が伝わり、水俣チャンポンの礎となったとされています」。

ゆえに交流の数だけ味わいがあり、和風スープや魚介スープのチャンポンもあるそう。ここ『喜楽食堂』は豚骨100%で、しっかりとした旨みのスープが五層六腑に染み渡る。次に来たら、違うフレーバーのチャンポンを食べよう。街への再訪を誓って、水俣を後にする。

東京へ戻る前に訪れたのは、肥薩おれんじ鉄道・上田浦(かみたのうら)駅。ここでなら八代海の夕陽が眺められる、と思ったからだ。

上田浦駅の陸橋から、水俣方面の夕景を眺める。山や海、太陽が、鉄道と美しく共演する。この景色が拝めるから、鉄道の旅はクセになるのだ

旅の最後の橙(だいだい)の空はいつも切ないが、しかし終わりは始まりでもある。「待ってろよ〜、東九州!」。まだ乗らぬ九州の路線を思い浮かべながら、私は次の旅の予定を立てるのだった。

『夜香木』 @上乃裏通り

国際的なバーテンダーコンペティションの日本代表に選ばれた経験がある木場進哉さん。地元の果物やハーブ、焼酎を使ったカクテルを得意とする。

夜香木 1500円

「夜香木」1500円。タンカレーNo.10とアップルソーダが味わいのベース。熊本産の素材で漬けたシトラスアガペーハニーと、マーガオがアクセントに

またスタッフの気さくな対応が心地いいと評判の店だ。

『夜香木』平日はしっとり、週末は賑やかな店内 バーテンダーの木場さん

[住所]熊本県熊本市中央区南坪井町5-21 1階
[電話]090-8408-5211
[営業時間]18時~24時半(24時LO)
[休日]不定休
[交通]熊本電気鉄道藤崎線藤崎宮前駅出口から徒歩2分

『喜楽食堂』 @水俣

1950年の開業以降、地元民に愛される食堂。名物の「チャンポン」は、店主の三牧さんの祖母・初代女将が天草の漁師や海運業者から教わった味だそう。他にもボリューム満点の日替わり定食が人気。

ちゃんぽん 600円

『喜楽食堂』「ちゃんぽん」600円。最後にウスターソースを足して食べるのが、地元流

[住所]熊本県水俣市浜町1-2-9
[電話]0966-62-2629
[営業時間]11時~15時(14時半LO)、17時~20時半(20時LO)
[休日]土
[交通]肥薩おれんじ鉄道線水俣駅出口から徒歩10分

撮影/大谷次郎、取材/岡野孝次

※2022年9月号発売時点の情報です。

※全国での新型コロナウイルスの感染拡大等により、営業時間やメニュー等に変更が生じる可能性があるため、訪問の際は、事前に各お店に最新情報をご確認くださいますようお願いいたします。また、各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いいたします。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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おとなの週末Web編集部
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