食品ロスが世界的な問題となっている昨今、賞味期限切れの食品を食べることに抵抗がないという人が増えています。 しかし、賞味期限は食の安全を守るために設けられている基準だけに、無視していいわけではありません。正しく賞味期限切…
画像ギャラリー食品ロスが世界的な問題となっている昨今、賞味期限切れの食品を食べることに抵抗がないという人が増えています。
しかし、賞味期限は食の安全を守るために設けられている基準だけに、無視していいわけではありません。正しく賞味期限切れの食品を食べるか食べないかの判断をしないと体に害を及ぼすこともあり得るのです。
そこで今回は、賞味期限切れの食品と正しく付き合うコツをご紹介します。
文/田村順子(フードライター)、メイン写真/Tsuboya-Stock.Adobe.com、写真/写真AC
意外と知らない?「賞味期限」の詳しい定義と注意点
賞味期限は、記載された期日を過ぎても劣化しづらい食品に表示されるもので、「美味しく食べられる期間」の指針です。
そのため、風味や味にこだわらなければ、賞味期限切れのものを食べても問題はないとされています。
具体的には、スナック菓子、即席麺類、缶詰、ペットボトル飲料、卵、加工肉、牛乳、乳製品などの食品に表示されています。また、製造日からの賞味期限が3カ月を越えるものについては、「年月」だけの表示でもよいことになっています。
食品にはもうひとつ、消費期限が記載されているものがあります。
こちらは、記載された期日を過ぎるとおおよそ5日以内に傷んで食べられなくなる可能性のある食品に表示されているため、消費期限切れのものは食中毒などの危険があるため食べないことが推奨されています。
具体的には、弁当、調理パン、惣菜、生菓子類、食肉、生麺類などに表示することが義務づけられています。
知っておいてほしいのは、賞味期限も消費期限も、未開封、指定の保存状態を守ることを前提に算出されているということです。例えば、要冷蔵なのに常温で保存していたりと、保存状態が悪いものはたとえ賞味期限であっても期限が切れたら食べないほうが無難です。
賞味期限“切れ”に明確な基準なし?
賞味期限切れ後でも食べられると言われても、いつまでなら安全に食べられるのかは気になるところです。
実は、消費者庁ガイドラインでは明確な期間は示されていません。同庁の食品表示基準Q&Aでも「それぞれの食品が食べられるかどうかについては、その見た目や臭いなどにより、五感で個別に食べられるかどうかを消費者自身が判断する」とされています。
つまり、賞味期限切れの食品を食べるか食べないかは、自己判断に委ねられ、さらに自己責任で食べましょうというのが現実です……。
ビン詰めは要注意! 開封後は2~3日中に食べきる
賞味期限とは前述のように、未開封で保存することが前提の期間です。賞味期限がまだ先の食品であっても、開封した時点でその期限は無効となります。開封後の食品は酸素に触れることで変質したり、雑菌が混入して腐敗しやすくなるため開封後は2~3日中には食べきりましょう。
注意したいのは、食べるぶんだけスプーンや箸で取って食べるような瓶詰のつくだ煮やなめ茸、福神漬け、マーガリンなどです。こういった食品は、2~3日で食べきることは難しく、開封後も長く冷蔵庫に保管しているという人が多いはずです。
そういった食品を取り出す時に、唾液や雑菌が付いた箸やスプーンを瓶の中に入れてしまうと、急速に腐敗が進んでしまうので、清潔な食器を使用して中身を取り出すようにしましょう。
また、マーガリンやバターのパッケージにバターナイフを突っ込んだまま保管するのも厳禁。バターナイフは毎回取り替えて清潔なものを使用しましょう。パンくずなどが混入したまま保管するのもNGです。
ヨーグルト・牛乳・卵はなぜ「消費期限」ではなく「賞味期限」!?
ヨーグルトや牛乳、卵は生鮮食品というイメージがあるため、表示されている日付を消費期限と勘違いしてはいませんか? 意外かもしれませんが、それらに記載されているのは賞味期限なのです。
季節にもよりますが、卵は賞味期限切れ後、生食でなければ2カ月以上もの長期間にわたり食べられると言われています。ただし、それは保存状態が完璧な場合です。殻に微小なヒビが入っているといったこともあり得るため、基本は1~2週間程度で食べきりましょう。賞味期限切れ以降は生では食べず、加熱して食べることをお薦めします。
牛乳は消費期限と賞味期限が表示されているものの2種類が存在します。賞味期限が表示されている牛乳は120~130度で2~3秒の殺菌をした「超高温殺菌」のもの、消費期限が表示されている牛乳は63~65度で30分以上かけて殺菌した「低温殺菌」のものです。
スーパーなどでは両方の牛乳が混在しているため、購入時には消費か賞味かをしっかり確認しましょう。
ヨーグルトも牛乳も「未開封の状態」で「10℃以下で冷蔵保存」した場合のみ賞味期限切れでも食べられると考えましょう。ただし、未開封であっても、他の食品よりは食べられる期間は短く、安心して食べられるのは1~2日。3~4日過ぎても腐敗するようなことは稀ですが、万全を期すなら料理に使用するなど、加熱して消費することをお薦めします。
スナック菓子やビスケットなど“油もの”は酸化に要注意
スナック菓子、ビスケット、油で揚げた麺を使用したカップ麺や即席麺など、油の含有量が多い食品は、賞味期限後の長期保存はお薦めできません。未開封であっても油の酸化が進むからです。
酸化した油を体内に取り込むと、老化や生活習慣病の原因となる活性酸素が大量に発生してしまいます。また、お腹が弱い人は、腹痛や下痢を起こしたりすることもあります。
こうしたことから、油の含有量が多い食品は長くても期限切れ後半年以内には食べきることをお薦めします。また、賞味期限が切れてそれほど時間が経っていなくても開封した時に、古くなった油の臭いを感じたりしたら、食べるのは控えたほうが無難です。
バター、マーガリン、サラダ油などの調理油は、未開封で保存状態がよければ賞味期限切れから1~2カ月くらいまでなら問題ありませんが、それ以上になると急速に酸化が進むことも考えられます。
缶詰や瓶詰、レトルト食品は何年経っても食べられる?
完全に密封してから加熱殺菌される缶詰、びん詰、レトルト食品は雑菌の混入がないため長期間の保存ができます。ただし、未開封・冷暗所での保存が前提となっています。
缶詰や瓶詰に関しては、通常は賞味期限切れ後3~4年は美味しく安全に食べられます。それ以降に関しても食べることは可能ですが、味や風味は損なわれてしまいます。10年くらいは大丈夫といわれることもありますが、食材の種類、保存方法によっては危険な場合もあるため、あまりに長く保存することはお薦めできません。
缶や瓶の蓋が膨張している場合は、中が腐敗してガスが発生していることが考えられますので食べるのは控えましょう。缶が錆びているような場合も食べないほうが無難です。
レトルト食品も理論上は缶詰や瓶詰と同じくらいの期間は食べられるのですが、万全を期すなら期限切れから半年以内には消費するのが望ましいといえます。
缶詰、瓶詰、レトルト食品の賞味期限や保存方法に関しては「日本缶詰びん詰レトルト食品協会」のサイトに詳しく解説されているので参考にしてください。
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