ビフィズス菌は胃酸に弱く、熱に弱い 答えは(3)です。食物繊維やオリゴ糖は、ビフィズス菌などの善玉菌のエサとなります。これらのエサを摂取することで、善玉菌が活発に働くようになり、菌数の増加に繋がります。 善玉菌はこれらの…
画像ギャラリー「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』の三択コラム」では、食に関する様々な疑問に視線を向け、読者の知的好奇心に応えます。今回のテーマは「腸内のビフィズス菌を増やすには?」です。
文:三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治
肥満、肥満予備軍が増加
長引くコロナ禍で多くの人が巣ごもり生活を余儀なくされた結果、「肥満」や「肥満予備軍」の状態にある人が世界的に増加傾向にあると言われています。そのほかにうつや不眠症なども増加しており、このような心身の不調の一因として、腸内環境の変化が指摘されています。腸内環境を整えるには、大腸におけるビフィズス菌の働きが重要です。
およそ100兆個あると言われる大腸内の細菌の中には、健康に有用な発酵活動を行う善玉菌と、逆に有害な腐敗活動を行う悪玉菌がいて、日々勢力争いを繰り広げています。善玉菌約20%、悪玉菌約10%のバランスが健康な状態だと言われていますが、タンパク質・脂質中心の食事、不規則な生活、ストレスなどが影響すると、腸内環境は悪玉菌優位の方へ傾きます。また、善玉菌の中心選手であるビフィズス菌は、加齢とともに減少(50~60歳ごろには乳児期の100分の1ほど)する一方、ウェルシュ菌などの悪玉菌は増加するため、腸内環境は加齢によっても悪化する傾向にあります。
このような状況を改善するひとつの方法は、生きたビフィズス菌を食品から摂り入れることです。ビフィズス菌を多く含む食品の代表はビフィズス菌入りのヨーグルトですが、ヨーグルトを食べて大腸内のビフィズス菌を増やすのにもっとも効果的とされるのは次のうちどれでしょうか。
(1)ビフィズス菌入りヨーグルトは、ほかの食べ物と一緒に食べると効果が薄まるので、食間(食事とその次の食事との間)に単独で食べるほうが良い
(2)牛肉や鶏肉を焼く前にヨーグルトに漬け込んでおくと、肉が柔らかくなるだけでなく、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌も摂取できて一石二鳥
(3)ビフィズス菌入りヨーグルトだけでなく、食物繊維も摂取すると、ビフィズス菌を増やすのに効果的
ビフィズス菌は胃酸に弱く、熱に弱い
答えは(3)です。食物繊維やオリゴ糖は、ビフィズス菌などの善玉菌のエサとなります。これらのエサを摂取することで、善玉菌が活発に働くようになり、菌数の増加に繋がります。
善玉菌はこれらのエサをもとに、「短鎖(たんさ)脂肪酸」を作り、腸内環境の改善を促進します。代表的なものには、酢酸、酪酸、プロピオン酸などがあります。短鎖脂肪酸はさまざまな有用な効果をもつ物質です。これについてはあらためてとり上げます。
ビフィズス菌は大腸で活躍するので、生きたまま大腸に届けることが必要ですが、胃酸に弱く、腸に届く前に胃の中で多くが死んでしまいます。そのためヨーグルトを食間や食前に単独で食べるよりも、食後の胃酸が薄まった状態で食べるほうが、生きたビフィズス菌がより多く大腸に届きやすいと考えられています。
肉をヨーグルトや酢に漬けると、pHが下がり、筋原線維タンパク質が分解され、保水性が高まって食感が柔らかくなります。しかしビフィズス菌は熱に弱く、50~60℃で死滅してしまうため、肉を焼いてしまうと、肉に付着したビフィズス菌は死んでしまいます。ただし、ビフィズス菌は死んでいても、ほかの善玉菌のエサになるため、間接的に腸内環境の改善に寄与する面はあると考えられます。
(参考)
[1] 新型コロナウイルス感染拡大の陰で起きている体調変化や生活習慣に関する最新調査(一般社団法人 日本生活習慣病予防協会)
https://seikatsusyukanbyo.com/calendar/2021/010550.php
[2] 肉をヨーグルトに漬けると軟らかくなるのはなぜですか?(一般社団法人日本乳業協会)
https://nyukyou.jp/dairyqa/2107_173_363/