お店の雰囲気もよし! 下町風情を感じる「根津メシ」/ヒツジメシ傑作選

吉田羊のヒツジメシ傑作選

吉田羊のヒツジメシ傑作選

女優・吉田羊さんが本誌「おとなの週末」で連載しているグルメエッセイ「ヒツジメシ」が1冊にまとまりました。その書籍「ヒツジメシ」発売を記念して、本誌の連載記事を特別に公開します。今回は、2022年11月号、第94回をお届けします!

画像ギャラリー

名建築家が手掛ける、趣ある店内でいただく釜揚げうどんに舌鼓

ども、羊です。さて、今月は文京区根津。お着物探しにぶらりと出かけた際に小耳に挟んだ2軒をご紹介。

まずは1軒目、『釜竹(かまちく)』さん。地元民のみならず、うどん好き、食通にも名の知れた釜揚げうどんの名店

連日行列の絶えない超人気店は、大阪の羽曳野にある本店が発祥。2代目が名を継ぎ根津に開業、2014年に本店が閉店してからは、ここ根津が実質の本店となったそう。

まず驚くのはその外観。竹林の緑鮮やかな囲いの奥に佇む店舗は、東京都選定歴史的建造物にも選定されたレンガ造りの本物の石蔵。重厚でモダン、かつクラシックな雰囲気は、アンティーク好きの私にはたまらない。しかもあの隈研吾さんがデザインを手掛けたとか!

『根津 釜竹(かまちく)』さん

なるほど、隈氏の緻密で計算し尽されたデザインを堪能できるのは、店内入ってすぐの中庭から。一面の大きな窓越しに、丁寧に美しく整えられた庭が一枚の絵画のように見ることができる。

この日は、階段を上って石蔵の内部へと入っていく座敷席へ。初めてなので、看板メニューの釜揚げうどんをオーダー。「さいぼし」(馬肉の燻製)と「茄子の桜海老餡かけ」も一緒に。

うどんの薬味はネギと生姜、それに揚げ玉。店員さんのおすすめ通り、最初は何も入れずにおダシがよく効いたツユのみでいただく。

「釜揚げうどん」(935円)

凸と凹のように、シンプルなうどんと合わさって初めて完成する、濃く深いダシツユ。生姜を入れたいけれど、もう少しこのツユを味わいたい、でもネギも……そんな葛藤を繰り返させる旨ツユ。薬味を一種ずつ入れれば4段階で楽しめますので、どうぞお好みで。

追加ネギもある

初体験のさいぼしは、燻製とあってひと口目はまるでカツオの藁焼きの香り。ふた口目からしっかり馬肉の甘みやコクを味わい、感覚の変化を感じられる一品。

つまみにも最高の「さいぼし(馬肉の燻製)」(935円)

食事の最後、餡かけ茄子を食べながら思いつき、小さな器にツユと麺、桜エビの餡をかけて即席餡かけうどんを作る。いうまでもなく、おいしいうどん屋さんは餡も絶品なのだ!

根津 釜竹(かまちく)
[住所]東京都文京区根津2-14-18
[電話番号]03-5815-4675
[営業時間]11時半~14時LO、17時半~21時半(20時半LO)※うどんなくなり次第終了
[休み]月
[交通]地下鉄千代田線根津駅1番出口から徒歩3分

登録有形文化財の家屋でしっとりのんびりと食す。塩で食べる“おとなの串揚げ”

2軒目、串揚げ屋『はん亭』さん。明治時代に建てられ、文化庁の登録有形文化財にも指定された、総けやき造りの日本家屋の店舗。根津のノスタルジックな下町風情を象徴するようなこちらのお店は、界隈のランドマークと言っても過言ではないかも。

こちらはコースでいただきました最少12本から。一巡して足りなければ、「もっともっと」と書かれた追加メニューあり。旬のお野菜、肉・魚などあれこれの間に箸休めが2品。お通しは、消化を助けるキャベツや大根などを自家製味噌で。調味料は塩とタレの2種。

串揚げ12本にお通し2品等が付く「最初のセット」(4730円)

「紫蘇巻きの海老」塩で。“調味料に塩を選びはじめたら大人の仲間入りよね(私見)”、と最初に思ったのはお寿司屋さんだったな。「イカを塩で、すだちを搾って」なんつって。その瞬間「あ、いま私大人の階段登ったな」と思ったけれど、多分声は震えてた(笑)。

「枝豆」円形? と思ったら中はずんだと枝豆の粒。2種の食感がうれしい。

「枝豆」

「豚肉巻きの谷中生姜」豚肉に気づいたのがふた口目だったのは、最初のひと口目、余りに生姜の香りが豊かだったから。

「箸休め」キノコのポタージュ。スープと思って飲むと、その粘度に驚くトロリ感。豆乳の香りが私好み。

「箸休め」のキノコのポタージュ

「鱧の梅肉ソースがけ」梅肉がさっぱりでハモの味もちゃんと味わえる。

「蓮根の肉詰め」詰めたお肉がカレー味! 店員さんが事前に敢えて説明しないからこそのサプライズ。

「帆立の丸揚げ」ぷりぷり肉厚、甘み抜群。

「牛肉と牛蒡」牛肉が柔らかいのに弾力も楽しめる不思議。火の入れ具合に職人さんの手腕が光る一本

「生麩」味噌ダレのようなピーナッツソース。シンプルな生麩にぴったり。

「太刀魚」ひと口目と最後に来るインゲンがいいアクセント。

「イカのウニソース」噛み応えのある肉厚のイカ。ウニソースの甘みと香りが最後まで口の中に残って幸せ。

「イカのウニソース」

「大黒しめじ」しめじだけかと思ったらチーズとベーコンも! 肉詰め同様、内容を知らされないからこその楽しいびっくり。

「海老芋」ダシで煮た、ねっとりした絶品お芋を、お塩でいただきフィニッシュ。

各品、ひと工夫が面白く、次はどんなかな? と想像しながら待つ時間も楽しいお店でした。根津はまだまだ掘り甲斐がありそう。では、また来月!

■『はん亭 根津本店』
[住所]東京都文京区根津2-12-15
[電話番号]03-3828-1440
[営業時間]11時半〜15時(14時15分LO)、17時〜22時(21時LO)※日はネタ切れ早仕舞いあり
[休み]月※祝の場合は翌休
[交通]地下鉄千代田線根津駅2番出口から徒歩1分

■吉田 羊(よしだ よう)
2月3日生まれ、福岡県久留米市出身。小劇場を中心に活動後、TV・映画などの映像へと活動の幅を広げる。2007年『愛の迷宮』で連ドラデビュー、2014年には『HERO』でクールな女性検事を演じ注目を集める。映画『ビリギャル』では第39回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞した。2021年には舞台『ジュリアス・シーザー』で第56回紀伊国屋演劇賞個人賞を受賞。現在は、映画・ドラマ・舞台・CM・ナレーションと幅広く活動。2022年には俳優デビュー25周年を迎えた。

※記事の内容・情報は、2022年11月号掲載時のものです。最新情報はお店のSNSやHP等でご確認ください。

画像ギャラリー

この記事のライター

関連記事

【難読漢字】食べ物クイズ 口臭消しにも効果的です

2024年4月29日~5月5日の運勢は?【タナミユキの文豪占い】

GWは「読み物系」連載一気読み!作家やお笑い芸人のためになるコラム揃ってます

【難読漢字】食べ物クイズ 切り株が大好き!?

おすすめ記事

日本橋兜町の昼飲み3選 進化を続ける金融街の粋な酒場をはしご酒

スパイスで煮込んだシチュー「ガンボ」がテキーラやバーボンに合うぞ!! 俳優「岡村まきすけ」さんの『マッキーズ ガンボ』

【難読漢字】食べ物クイズ 口臭消しにも効果的です

このクオリティを駅ナカで!?『天然本まぐろ ありそ鮨し グランスタ東京店』は全てのネタが天然モノ!

GWはゆったり谷根千散策!美味しい人気店から穴場スポットまで、1日中楽しめる完全ガイド

2024年4月29日~5月5日の運勢は?【タナミユキの文豪占い】

最新刊

「おとなの週末」2024年5月号は4月15日発売!大特集は「銀座のハナレ」

全店実食調査でお届けするグルメ情報誌「おとなの週末」。4月15日発売の5月号では、銀座の奥にあり、銀…