新型コロナ第8波は「鍋」で乗りきる(後編)

野菜を煮込んでもビタミンCの60%以上が残る 堂園博士のところでは、鍋料理も患者さんにすすめているという。 「先日も60代の女性の患者さんが来ましたが、肌がすごくきれいになっているんです。娘さんから”お母さんどうしたの、…

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新型コロナウイルスへの感染が急速に広がっています。現在の第8波では、昨年12月から1月10日までの間に1万人以上が亡くなってもいます。日本での新型コロナによるこれまでの死亡者数は6万人を超えていますが、その6分の1ほどがこの1か月で亡くなっている現実をとらえると事態は深刻です。根本的にはやはり、自分自身の免疫力を高めておくことに尽きるのでしょうが、野菜の力がこれまで以上に期待されています。なかでも「野菜スープ」、とりわけ「野菜は生で食べるな」「煮込んでこそ価値がある」という主張に注目が集まっています。ノンフィクション作家・奥野修司さんのレポートの後編をご紹介します。※本記事は奥野修司『野菜は「生」で食べてはいけない』(講談社ビーシー/講談社)の一部を抜粋し再編集したものです。

鍋のしめの雑炊は発芽玄米で免疫力をさらに高める

ところで、鍋の最後を雑炊でしめることはよくあるが、白米の代わりに発芽玄米を用いるなら、より栄養価が高くなる。その理由を「最強の野菜スープ」の考案者で、抗がん剤の世界的権威であった故・前田浩先生(熊本大学名誉教授)はこう語っていた。

「発芽玄米の胚芽には子孫になるDNAが全部入っていて、その周囲には、DNAが壊れないように、活性酸素を消去する抗酸化物質が充填されています。発芽が始まるとあらゆる酵素が活発に動き出しますが、これが発芽玄米で、栄養価が高いのです。発酵して吸収されやすくなった発芽玄米を食べ続けると、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)が変わります。腸管の細菌叢が変われば免疫が高まり、がんにもなりにくくなるのです」

もちろん、免疫力が高まれば新型コロナの予防にも効果を発揮するはずである。冬の寒い時期、鍋料理は「最強の野菜スープ」という考え方なら、和食のメニューにある煮込み料理の多くも同類と言えるだろう。

世界のご当地名物料理も、栄養豊富な「鍋」

アトピー性皮膚炎の患者に野菜スープをすすめている診療所として知られる鹿児島市の「堂園メディカルハウス」院長の堂園晴彦博士も鍋料理をすすめていて、「世界の料理の基本は鍋料理です」と言う。

実際、おでんをはじめ、ボルシチ、ビーフシチュー、ブイヤベース、フォンデュなど、世界には鍋料理があふれている。国内でも、寄せ鍋、すき焼き、もつ鍋、土手鍋、水炊き、ちり鍋と種類も豊富で、どの地方へ行っても必ず鍋料理があるほどだ。というより、昔は調理器具と言えば鍋しかなかったから、必然的に鍋料理が基本になったのだろう。

「野菜スープは野菜だけですから、どうしても栄養不足になりがちです。特にタンパク質と体に必要な脂肪分ですね。だから、野菜スープを作るときは、いりこだしや、鰹節を入れるようにすすめています」と堂園博士。

鍋やスープの肉の脂は取り除きたい

「野菜スープに対する考え方には二種類あって、病気を治すための野菜スープと健康維持のための野菜スープです。アトピーや潰瘍性大腸炎を治したい方には、野菜を中心に、せいぜい魚を入れる程度をすすめますが、元気な人には肉などをたっぷり入れた野菜スープをすすめます。ただし、肉を使うときは、できれば表面に浮いた余分な脂分を取り除くことです。ビーフシチューもそうですが、これがポイントですね」(堂園博士)

鍋料理や野菜スープに入れた肉類から出た脂はそのつど取り除けばいいが、料理によっては、ひと晩おいてから浮いた脂を取ることもあるという。たとえばビーフシチューだ。

「私自身は野菜スープをもとにカレーやビーフシチューを作るようにしていますが、ビーフシチューの場合は、ひと晩おくと表面に脂が溜まりますので、その脂をすくい取ってから食べるようにしています。脂の摂りすぎは肥満の原因になります。砂糖を摂ると血糖値が上がって満腹中枢を刺激するので、脳は食べるのをやめるように指示しますが、脂だとそれができないので、極端に言うと、お腹に詰め込むようにして食べてしまうのです」

危険なのは肉に含まれている脂だけではない。揚げ物などに使われる油も同じことが言える。では魚の脂なら問題はないのだろうか。

「魚の脂は大丈夫です。鍋料理や野菜スープに魚を入れるときは、骨ごと入れて煮たほうが、より栄養分が摂れます。今の若い人たちは、魚の切り身を食べても内臓を食べません。また農薬や化学肥料を使って栽培した野菜はミネラル分が少ないんです。ミネラルを摂るには魚の内臓系がいいし貝類もいい。そういう食材を一緒に入れると非常に栄養バランスがよくなります。昔から味噌汁にシジミを入れるのはすごく理にかなっているのです」(堂園博士)

鍋スープを冷凍して作り置きし、麺を加える

「また、野菜スープや、鍋料理のスープは冷凍すると使い道がさらに広がります。今はみなさん忙しくて、ご飯を作るにも手間暇をかけられない人が多いですからね。先にご主人が帰ったら、冷凍したスープを解凍して温めておけば、それだけで時短になるわけです。この冷凍して保存できるというのが、ファイトケミカルスープの二番目の利点ですね。みんなご飯を作るのが面倒なんです。だから仕事帰りにコンビニ弁当を買って食べる。でも、スープの作り置きさえあれば、ご飯を入れればおじやになるし、”どん兵衛”をこのスープで煮込んでもいいわけだから、インスタント食品と同じ手軽さです」

たしかにこうした野菜スープさえあれば、簡単に鍋料理ができるだけでなく、スープを温めて麺を入れれば簡単に煮込みうどんやラーメンもできる。市販のスープの素には添加物だらけのものも少なくないから、それを避けるためにも最高の調理法だ。

野菜を煮込んでもビタミンCの60%以上が残る

堂園博士のところでは、鍋料理も患者さんにすすめているという。

「先日も60代の女性の患者さんが来ましたが、肌がすごくきれいになっているんです。娘さんから”お母さんどうしたの、毛穴が小さくなって肌がすごい”と言われたそうです」

堂園博士が注目しているのは、鍋や「野菜スープ」でビタミンCが摂れることだという。

「野菜を煮たらビタミンCが壊れるというのが常識だったのに、野菜は煮込んでもビタミンCは壊れず(前田教授によれば、多くは60%以上残るという)、冷凍に保存しても栄養素がなくならないというのは、常識を覆すような画期的発見です」

と述べ、免疫系とビタミンCの関係についてこう説明してくれた。

「免疫系を健全に保つのに必要なビタミンは、ビタミンA、ビタミンB12、パントテン酸、葉酸、ビタミンCです。特に効果的なのはビタミンCで、人体にとってなくてはならない抗体の産生量も、実はビタミンCの摂取量に影響されることがわかっています。風邪(ウイルス感染)にかかるとビタミンCの量は半減し、その後数日は低い値が続くので細菌感染を受けやすくなります。また、もう一つの免疫物質にインターフェロンがありますが、この産生量もビタミンCの影響を受けることがわかっています。日頃からビタミンCを摂取していると、風邪などの罹患率が低下するうえ、ウイルス感染しても、二次的な細菌感染を防止することが期待できるのです」

野菜の多くは、抗酸化物質だけでなく、ビタミンAやビタミンC、葉酸などを豊富に含んでいる。ちなみに、老化を防ぐには細胞の修復が重要で、それに必要なのが葉酸だ。これは緑の濃い野菜に多く含まれている。鍋料理や野菜スープは、ウイルスに感染しにくい体をつくるだけでなく、老化を遅らせ、がんなどの予防にもなるということだ。

文・奥野修司

奥野修司

おくのしゅうじ。ノンフィクション作家。1948年、大阪府に生まれる。立命館大学卒業後、1978年から日系移民調査。帰国後、フリージャーナリストとして活動。『ナツコ 沖縄密貿易の女王』(文藝春秋)で講談社ノンフィクション賞と大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。近年、『怖い中国食品、不気味なアメリカ食品』(講談社文庫)、『本当は危ない国産食品 「食」が「病」を引き起こす』(新潮新書)などを通じ、日本を取り巻く食事情と食環境に警鐘を鳴らし続けている。

新刊情報
『野菜は「生」で食べてはいけない』奥野修司(著)講談社ビーシー/講談社

健康や美容のため、生野菜をたくさん食べ、野菜ジュースを日課とする人が大勢います。しかし実は、こうした生野菜の摂取は、健康効果の点からはまったくおすすめできません。むしろ、「野菜は生で食べるな」というのが基本。本書は、その理由と、「唯一の解決策」を追った健康ノンフィクションです。

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