冬の北海道ずらし旅(前編)鹿皮のそりで雪すべり体験や、朝ドラの舞台「マッサン」のニッカウヰスキー余市蒸溜所見学

絵本の中の風景のような 、創業者のマッサンこと竹鶴政孝とリタの邸宅

冬の北海道にはほかにはない魅力がある。一面の銀世界、この時期ならではの海の幸、流氷などの大自然、そして雪まつりなどの各種イベント。ゲレンデだって世界がうらやむふわふわのパウダースノウだ。けれど人が集まる観光地をすこしずら…

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冬の北海道にはほかにはない魅力がある。一面の銀世界、この時期ならではの海の幸、流氷などの大自然、そして雪まつりなどの各種イベント。ゲレンデだって世界がうらやむふわふわのパウダースノウだ。けれど人が集まる観光地をすこしずらすと、まだあまり知られていない魅力的な集落に出合える。そこで札幌や旭川、小樽などからもアクセスがよく、ずらし旅にうってつけの小さな町をご紹介。

東川町(ひがしかわちょう)

旭川空港から車で約15分の写真と家具デザインの町

旭川空港から車で15分以内。旭川の街より空港に近い東川町は広大な土地にある静かな集落だ。空港からは車で10分以内だ。その中心に位置するせんとぴゅあ1・2は図書施設、会議室、食堂、日本語学校などで構成された複合施設だ。館内の図書施設には名作家具が並び、実際に座りながら読書する人や、勉強をする学生たちの姿が。館内のギャラリーには近隣に住む椅子研究家・織田憲嗣氏による「織田コレクション」の展示があり、伸びやかな空間を生かしたインテリアを体感できる。東川町は家具デザインの町であり、木工家具のアトリエやショップを併設したギャラリーが点在する。旭川家具があるカフェも多く、カフェ巡りという楽しみ方もある。

かつて小学校だった校舎を改装して多機能な複合施設にしたせんとぴゅあ1
夏は建築物の外に写真を飾りアウトドアギャラリーとする試みも
せんとぴゅあの図書施設内にはデザイン家具が並びギャラリーのよう

東川町は著名なフォトグラファーのトークショーや展示などさまざまなイベントを企画し、写真文化首都を名乗っている。高校生が競う写真甲子園や東川町国際写真フェスティバルを開催するなど、次世代のフォトグラファーもサポート。町全体がギャラリーとなる、建物の外壁など、屋外に写真を展示する東川町町内屋外写真展などの試みもユニークだ。

隈研吾が建築事務所のサテライトオフィス〈KAGUの家〉も2022年に設計し、デザインミュージアムもオープン予定。各界のアーティストが注目する町なのだ。

【白老(しらおい)・登別(のぼりべつ)】

アイヌ文化を体感するウポポイのホワイトシーズンもまた格別

新千歳空港から電車で約40分の白老も注目のスポット。2020年にオープンした民族共生象徴空間ウポポイは、アイヌの生活文化を博物館の展示や伝統芸能の鑑賞だけでなく、遊びや物づくりを通じて交流できる施設。アイヌ料理の調理、楽器演奏、弓矢体験など「ゴールデンカムイ」の世界そのもののプログラムも。鹿皮のそりでの雪すべり体験はホワイトシーズンならではだ。過酷な冬をどうしのいだのか、食品を保存する知恵や集落での暮らしなどを伝統的な家屋、チセのなかでレクチャーにも臨場感がある。そして銀世界の中に北海道の動物たちが浮き上がる幻想的なルミネーションも2月13日まで開催。

ウポポイのすぐ裏手にはポロト湖があり、ワカサギ釣り体験も大人500円、子供200円で体験できる。釣り竿もテントもレンタル可能で、手ぶらでも、しかもこんなに駅チカで本格的なアウトドア体験ができるのは珍しい。氷上で揚げたて天ぷらを頬張ろう。

大湯沼川散歩道は温泉街から徒歩圏内。もうもうと湯気が立つ風景に圧倒される

白老から特急列車で1駅約10分、普通列車で5駅約20分で行ける登別へ向かうのもいい。駅からバスで30分弱で登別温泉につく。直径約450m、面積約11haにおよぶ爆裂火口群、地獄谷も壮観だ。公営温泉・湯元さぎり湯は朝7時から夜21時まで営業し、大人450円で入浴できる。しかも650円の一日利用だと、外出も可で、何度も温泉で体を温めながら、休憩室でくつろげるのだ。

この距離で巨大なヒグマにえさやりができるのぼりべつクマ牧場
雪の中、無邪気に遊ぶこグマ達。ひょいと降りて行けそうな近さで見ることができる

登別温泉街の散策コースにぜひ入れたいのはクマ牧場。ゴンドラリフトで山頂にたどりつくとそこには70頭近くのエゾヒグマが。人間が檻に入り、ガラス越しにエサをやったり、子グマたちが雪の中で遊んでいる様子を眺めたり、驚くほどの距離感でクマたちと触れ合える。こんなスリルを味わえるのはここならでは。登別温泉のバスターミナルから新千歳空港や札幌までのバスも運行し、宿によっては札幌までの無料送迎バスがあるので、アクセスもいい。

【余市(よいち)】

上質なウイスキーやワインが生まれ、宇宙を身近に感じる町

開業当時からある一号貯蔵庫など蒸溜所の各棟を案内しながら、工程を説明してくれるガイドさん
絵本の中の風景のような、創業者のマッサンこと竹鶴政孝とリタの邸宅
予約制の工場見学ではタイミングが合えば迫力ある石炭直火蒸溜の作業風景も見学できる

例えば小樽から3駅の余市。朝ドラ「マッサン」の舞台ともなったニッカウヰスキー余市蒸溜所でも知られる町だ。駅の目の前に蒸溜所の正門があり、コロナ禍でしばらく見学できなかった工場見学も予約制で再開された。ガイドさんに導かれ、製造工場や旧竹鶴邸を見学するのだが、昔ながらの石炭直火蒸溜の作業風景は迫力で、雪に囲まれた風景も壮観だ。奥にある売店やレストラン、ミュージアムの展示は予約なしでも行けるが、マッサンがウイスキーづくりに打ち込んだ時代そのものの風景を体感できるのは今だからこそ。人数が限定されているので、広大な空間をほぼ貸し切りだ。しかも工場見学は無料で試飲付き。ぜひサイトで申し込んでほしい。

余市蒸留所ミュージアム内のテイスティングバーでは珍しいウイスキーを気軽に試飲できる

余市町、仁木町はワイナリーでも知られる地域。ドメーヌタカヒコ、OcciGabiワイナリーなど20件近くのワイナリーが集まり、駅前には地元のワインや名産を味わえる週末ワインバーY‘n(ワイン)なども。余市フルーツリキュール醸造所で品種の違うりんごや葡萄のリキュールをそれぞれ比べてみるのも楽しい。駅前ロータリー沿いにワインを楽しむためのレストラン&ホテルLOOPがオープンするなど、洗練された施設も増えている。

奥に醸造所がある余市リキュール醸造所では様々な品種の果実酒を販売
充実のワインセラーがあるレストラン&ホテルLOOP。ダイニングキッチン付きの客室も

そして実は余市は宇宙の町でもある。宇宙飛行士の毛利衛さんの出身地でもあり、ゆかりの余市宇宙記念館スペース童夢などの施設も。毛利さんのご両親が銭湯を営業していたことから、余市川を渡った先には「宇宙の湯 余市川温泉」なる温浴施設があり、日替わりでウイスキー、ワイン、りんごなどのご当地湯に入れる。

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