塩さばを燻製にかける
サバの燻製は商品として販売するために、ブラッシュアップはしたものの、ふたりで楽しむために開発した製法が基本だ。
大きなこだわりポイントとしては、サバはフィレで仕入れるのではなく、まるごと買って自ら3枚におろし、塩さばにしてから燻製にすることだ。
「フィレに加工されたものは旨みがすっかり洗い流されていたり、何度も冷凍解凍を繰り返すことでコンディションが落ちている場合もあります。サバの脂のおいしさをいかすために、これは欠かせない工程です」と陽子さん。「手間はかかりますけれども、自分たちが食べておいしいものを作りたいんですよね」
使用するのは400~600gサイズのノルウェーサバ。冷水で半解凍したのち、3枚におろしてカゴに入れ、ていねいに水洗い。濃いめの塩水に短時間つけて、塩さばにする。季節によって浸水時間や温度などは、細やかに調整している。
「販売はしていませんが、この塩さばがおいしいんですよ」と陽子さん。
そして、いざ燻製に。燻製の方法は熱燻。80℃以上の高温で、短時間だけ燻す、燻製機は自家製だ。「試行錯誤して、火の回りがよい小型のものを作りました。脂を落とし過ぎないように気を付けながら仕上げます」。
桜のチップで燻したら粗熱をとり、冷蔵庫でひと晩寝かせて薫香を落ち着かせる。
かくして2020年、めでたく完成したサバの燻製は「鯖とろスモーク」と名付けられた。しかし周囲の評判は上々だったものの、当初は「まったく売れなかった」そう。
しかし、またまたサバの神は川上夫妻のチャレンジを放ってはおかなかった。
全国商工連合会連合会の品評会「buyer’s room AWARD2020」で金賞を受賞。それをきっかけにネット上で話題を呼び、全国から注文が殺到! 次々とメディアで取り上げられるようになった。
見事に起死回生を果たした、鯖とろスモーク。その味わいはいかに!
「燻製ですよね?」ジェンヌ、食感に驚き
うっとりと飴色の鯖とろ燻製スモーク。芳醇な香りが漂う身を口に入れると……えええ? えええええええ!?
ふわとろ! 燻製なのに????? く、燻製ですよね?
動揺するジェンヌさん。
燻製なのに極めて身の食感がふわふわ、ジューシー。これって塩さばの表現なんですけど……!
「燻製は固いものだと思っていたけれど、あれ? とお客様によく言われます(笑)」と陽子さん。
そして燻製感はしっかりあるのに、極めて「やさしい」。かつてないほど、サバ燻製界における「癒やし系」(涙)。
燻製といえば「ウイスキーやハイボールのおとも」というイメージだけれど、癒し系サバの燻製は、その範疇を超えるもの。
ズバリ。米に合う!
「焼き魚のイメージで味わってもらえたら」と陽子さんが言うとおり、白米にぴったり。身のしっとり感がなんら違和感なく米にフィット。醤油やら何やらかけなくても、もー、わしわし米がすすむ。奇跡の白めしテロな燻製!
卵かけごはんにしても、旨し! 程よくスモーキーで、なんとも奥深い「卵かけごはん」が完成。
米に合うなら、和食全般に合うはず……というわけで、ジェンヌさんいろいろやってみました。
冷奴にオン。お。豆腐にしっくりなじんで、日本酒のおつまみに最高。
おからに合わせて。主張しすぎない燻製感がコクうま。あー、こちらも日本酒とか焼酎お湯割りとか。
そしてジェンヌさんが超おすすめなのが「燻製サバそば」。かけそばにとろ鯖スモークをのせると……。単なるコンビニのお蕎麦ですら、まさかの「十割ですか?」現象が! 蕎麦に馥郁ある味わいが生まれ、ダシはサバの旨みで香ばしい!
パンに合わせるなら、「たまごサバサンド」がおすすめ。たまごのやさしい味わい、そしてふかっとやわらかな燻しフレーバー、ふわっとしたサバの身。うーん、癒される、癒される……。
ふるさと納税の返礼品、JALショッピング「グルメファーストクラス」に採用されるなど、快進撃を続けるとろ鯖スモーク。ぜひ、奇跡の「ふわとろサバ燻製」を味わってみて!
■『丸上商店』
http://sabatoro.ptu.jp/
都内では「日比谷しまね館」で販売。
取材・撮影/池田陽子