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サバファンが集う「全日本さば連合会」広報担当サバジェンヌこと池田陽子さんによるとっておきのサバグルメをお届け。今回は島根県松江市発サバの燻製。ジェンヌ衝撃の「ふわとろ食感」の逸品です。

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みなさんに質問。日本でいちばんサバの消費量が多い町はどこかご存じですか。

島根県松江市!

そんな松江市のサバグルメがいま、話題を呼んでいる。島根県松江市鹿島町・丸上商店が手掛けるサバの燻製「鯖とろスモーク」。名だたる百貨店のバイヤーたちが太鼓判を押す銘品だ。

ジェンヌさんも、たまたま島根県のアンテナショップ『日比谷しまね館』でいただいてたまげた絶品。

しかし、そもそも丸上商店はサバを扱っていたわけではなく、なおかつ燻製を作っていたわけでもない。

今回はサバ燻製の魅力とサバがご夫婦に起こした奇跡の「サバドラマ」をご紹介!

苦節3年、夫婦二人三脚で開発

丸上商店は島根半島の根元に位置する鹿島町で、昭和20年代に創業。現在は3代目である川上貢さんが代表を務める。創業当初は、近くの恵曇漁港で大量に水揚げされていたイワシの丸干し製造を行っていた。

松江市鹿島町古浦に位置する丸上商店。古浦は、昔ながらの街並みが残る漁村集落
松江市鹿島町古浦に位置する丸上商店。古浦は、昔ながらの街並みが残る漁村集落

しかし、イワシの水揚げが激減。自社製造を休止して、下請け加工専業に業務転換。食品会社のサケ切り身加工を行っていた。

ところが下請け加工の受託も年々、厳しくなり行き詰まっていた状況だった。そこで、サバの燻製を開発!……と、いうわけではなかった。

「サバの燻製を作ってみたんです。自分たちで食べたくて」と語るのは、奥様の陽子さん。

「たまたま『燻製風味のサバ』を食べたら、とてもおいしかったんです。ただ、それは『燻製フレーバー』の調味液につけて仕上げたものだったので、『本物の燻製』を食べてみたいなあと思って」。

そこで自分たちで作ってみようと思い立った川上夫妻。

丸上商店代表の川上 貢さんと、奥さまの陽子さん
丸上商店代表の川上 貢さんと、奥さまの陽子さん

でも、燻製を作ったことはない。参考にしたのは「マンガ」だ。

「燻製がテーマのマンガ『いぶり暮らし』を読んで研究しました(笑)。意外にすんなり、コレという味わいに成功しましたね」。

じつは、下請けをしていた食品会社は「サバ」も扱っていた。大量生産が難しくてフェードアウトしてしまったたものの、「サバの加工は、試行錯誤していた時期があるんです」と説明する陽子さん。サバに関してまったくの素人だったわけではなかったのだ。

納得いく仕上がりになった、サバの燻製。そして商品化スタートですか!?

「おいしいねー、と主人と食べていました」

ニコニコ語る陽子さん。

「あと、近所のみなさんに配ったらおいしいねって喜んでくださって」。

まさかの商売っ気、ゼロ。けれど、サバの神は川上夫妻を放ってはおかなかった。

鹿島町では毎年、納涼花火大会が開催される。そこで、サバの燻製を販売してみたところ、大好評!「おいしい」「どこで買えるの?」と次々とお客さんから声がかかった。鹿島町観光協会の会長からも「こんなに旨いのに、なぜ販売していないの?」と言われて「うちには、人さまに売るようなものを作る設備はありませんから」と答えた陽子さん。

ところが次の日、事態は急転する。

「役所の方がうちにやってきました。『補助金がとれますよ』って。会長がすぐさま連絡したらしくて(笑)」

まさかの展開。しかしそこから、商品発売まで「3年」の月日を要した

開発に試行錯誤を重ねて……と思いきや、陽子さんの返事は思いもよらぬものだった。

「主人がぜんぜん乗り気じゃなかったんです」

えー!

「笛を吹いても絶対踊らないタイプ。そんなこと、とまったく首を縦にふってくれませんでした」。

けれど、陽子さんは「なんとなくこれは面白いことになるのでは」と感じていた。商品開発などこれまでしたことがない。知識を身に着けるべく、商工会主催のセミナー、バイヤーの勉強会、ビジネス交流会に参加するうち「どんどん楽しくなってきたんです」と陽子さん。

陽子さんは千葉出身。もともと島根とはまったく無縁だ。

ときどき思うことがあった。「加工場と自分の家の往復だけで、わたしの一生は終わるのかな。いつも決まった人にしか会っていないな。本当にわたし、それでいいのかな? って。」

ところが状況は変わった。「サバの燻製をきっかけに、いろんな展開が起きて、楽しくって」。サバが陽子さんの人生の意外な突破口になったのだ。

勉強会や交流会の出来事を、貢さんに伝えること3年。「最後はなんとかなるんじゃないか、と賛成してくれたんです」と笑顔で語る陽子さん。

ようやく、夫婦力を合わせての商品化がスタートした。

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池田 陽子
池田 陽子

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