ニッポン“チャーラー”の旅

名古屋の高級中華チェーン『浜木綿』が手がける町中華でチャーラーを食らう!/ニッポン“チャーラー”の旅 第20回

名古屋の高級中華チェーン『浜木綿』が手がける町中華でチャーラーを食らう!/ニッポン“チャーラー”の旅 第20回

名古屋の高級中華チェーン『浜木綿』が手がける町中華でチャーラーを食らう!/ニッポン“チャーラー”の旅 第20回

チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介。今回は名古屋の中華レストランチェーン『浜木綿』による町中華業態のチャーラーについて。町中華とは何なのかを考えさせられます。

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店主の高齢化や後継者の不在などに新型コロナも加わり、地元で昔から親しまれてきた町中華が廃業を余儀なくされている。その反面、レトロブームが追い風となって町中華の魅力を再発見する動きもある。

ホテル中華のクオリティを気軽に楽しめる『浜木綿』

中華チェーン『大阪王将』の街中華モデルをはじめ、大手外食チェーンもそれにあやかりたいと町中華の業態店を続々とオープンさせている。そんな中、筆者が暮らす名古屋を中心にチェーン展開する中華レストラン『中国料理 浜木綿(はまゆう)』(以下、浜木綿)が2022年7月、名古屋市千種区茶屋が坂に町中華業態の新ブランド『中国食堂 はまゆう』をオープンさせた

『浜木綿』の新ブランド『中国食堂 はまゆう』茶屋ヶ坂店。地下鉄名城線茶屋ヶ坂駅1番出口からすぐ。駐車場も完備している

メニューは、麻婆豆腐や酢豚、天津飯、焼売など町中華の定番がメイン。しかも、ランチタイムには、「炒飯&ラーメン定食」、つまりチャーラーも用意。これはもう行くしかない! と、その前に母体である『浜木綿』について触れておこう。

『浜木綿』は、筆者の地元にも店があり、家族の誕生日や結婚記念日に何度か利用したことがある、と書くと『浜木綿』の立ち位置をわかってもらえると思う。

高級中華やホテル内の中華レストランほど敷居は高くない。ファミリー向けの『バーミヤン』や『餃子の王将』、『大阪王将』よりも高級というポジションである。メニューも料理の味付けもホテル内の中華レストランに近く、どれも上品という印象がある。そんな『浜木綿』が手がける町中華のチャーラーは、はたしてどんなものなのか?

店に到着したのは、ランチのピークを過ぎた13時半近く。それでもほぼ満席で、辛うじてカウンター席にすべり込むことができた。店内は町中華というよりもカジュアルな雰囲気。町中華っぽいのは赤字に黄色の文字で描かれたメニューくらい。

種類が豊富な平日(月〜金)のランチメニュー

で、ランチメニューがこれ。エビチリや麻婆豆腐、ニラレバ炒めなどメイン料理に点心が付く定食や天津飯や炒飯、担々麺、ラーメンをメインとした定食などが揃う。巷の町中華と比べると、圧倒的に種類が多い。店主のワンオペか夫婦が基本の町中華と違い、2名のスタッフが調理を担当していたし、サービス担当のスタッフも多いからメニューの種類が多くても対応できるのだろう。

また、小籠包や焼売、餃子などが定食にプラスできるほか、定食のご飯の大盛りやおかわり、炒飯への変更など細かくカスタマイズすることも可能だ。これには好感が持てた。注文したのは、もちろん炒飯とはまゆうラーメン、サラダがセットになった「炒飯&ラーメン定食」(979円)。

「炒飯&ラーメン定食」(979円)

待つこと約10分。目の前に運ばれたのがこれ。すべての料理が同時に出されるのもうれしかった。まず、セット全体のビジュアルからチェックしてみよう。炒飯もラーメンもそれぞれしっかりと1人前あり、ボリュームは言うことなし。サラダが付くのも箸休めにはぴったりだ。

町中華と対極にある上品で繊細な味

すごく考えられていると思ったが、町中華にはない上品さが気になった。例えば、炒飯には欠かせない紅ショウガが添えられていなかったり。コスト面もあるだろうが、少量でも炒飯の皿の縁に紅ショウガがあるとビジュアル的にも映えると思うのだが。

では、ラーメンからいただくことにしよう。まずはスープをひと口。おーっ、鶏ガラのみなのか豚骨を加えているのかわからないが、旨みというか滋味が染みわたる。とくにこの日は寒かったから旨さも倍増する。中太でやや縮れのある麺もスープによく合っていておいしかった。

具材に豚ミンチなどがのる「はまゆうラーメン」

ただひとつ気になったのは、具材。町中華のラーメンといえば、チャーシューとメンマ、モヤシ、ネギと相場が決まっている。しかし、「はまゆうラーメン」の麺の上にのるのは、青菜とモヤシ、ネギ、そして豚ミンチ。ラーメンというよりは、台湾の担仔麺に似ている。これがとてもオシャレに見えてしまうのは私だけだろうか。

上品な味わいの「炒飯」

一方、炒飯は見た目こそ町中華のそれと変わらないが、味がまったく違う。どこかで食べたことがあると思ったら、やはり母体である『浜木綿』の味なのだ。またはホテルの中華バイキングで出される炒飯っぽい。いずれにしても、町中華のワイルドな味とは対極にある上品で繊細な味。そりゃ間違いなく旨い。

ラーメンと炒飯を交互に食べても旨い。さらにその合間に酸味をきかせたもやしときゅうり、しめじのサラダをつまむと口の中がリセットされて、よりおいしく食べられる。いやー、本当に旨い

酸味をきかせたサラダは箸休めに最適

でも、これが町中華の味なのかといえば、首を傾げたくなる。あっ、これはあくまでも個人的な見解だが、町中華の魅力は、マーケティングでは分析できない、いや、分析しようがない「大雑把さ」にあると思うのだ。『大阪王将』の街中華モデルが成功したのは、もともと大衆向けだったからだろう。

『浜木綿』は1967年に瑞穂区新瑞橋で町中華からスタートしたという。高級中華へ路線変更して、客を掴むまでは苦労の連続だったに違いない。しかし、ここで再び町中華に原点回帰するというのは、さらに料理のレベルを上げることよりも難しいのではないか。『中国食堂 はまゆう』が今後どのように進化していくのか見守っていきたい。

取材・撮影/永谷正樹

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