「シーナが音楽の中で生きちょる」
そのシーナは2015年2月14日この世を去った。シーナの命日である2020年2月14日、シーナの死後、初のアルバムとなる『LIVE FOR TODAY!-SHEENA LAST RECORDING&UNISSUED TRACKS』がリリースされた。生前、シーナのヴォーカルが遺されたトラックを編集したアルバムだ。日本ではテンプターズで知られる「今日を生きよう」、チャック・ベリーの「JOHNNY B.GOODE」、ザ・ローリング・ストーンズの「Heart Of Stone」などカヴァー曲が多い。
このアルバム発売直前に鮎川誠と逢った。シーナの死後、初めてのインタビューだった。
“シーナはいなくなったけど、そりゃあガックリきたけど、いつまでもメソメソしていたら天国のシーナに怒られる。あんたにはロックしかないやろって言うてね。区切りをつけるって言うわけではないが、シーナのヴォーカルが残っている発表していないトラックがいっぱいあるけん、それを整理して、ちょっと手を加えたりしたのが、このアルバムなんや。シーナは若い時、GS(グループ・サウンズ)が大好きで、学校さぼってタイガースやらテンプターズやらが九州に来た時によく観に行っていた。そこでテンプターズの「今日を生きよう」の原曲であるグラス・ルーツの「Let‘s Live For Today」からLive For Todayをアルバムタイトルにしたんや。ロックちゅうもんはいろんなミュージシャンが語り継いできた。ロックちゅうもんは今日を生きるってことなんやと思うねん”
鮎川誠はそう熱く語っていた。
見本盤のCD以外に『SHEENA & THE ROKKETS LOVE BOX』を鮎川誠は持参していた。ボックスのジャケットはシーナを含めた4人のバンド・メンバーの写真だ。
“この写真いいやろ。シーナが音楽の中で生きちょる”
ぼくは良いジャケットですねと誉めた。インタビューから2、3日後、自宅にボックス・セットが届いた。ジャケットを誉めたので鮎川誠が送ってくれたのだ。こういう気配りが優しい男だった。
岩田由記夫
1950年、東京生まれ。音楽評論家、オーディオライター、プロデューサー。70年代半ばから講談社の雑誌などで活躍。長く、オーディオ・音楽誌を中心に執筆活動を続け、取材した国内外のアーティストは2000人以上。マドンナ、スティング、キース・リチャーズ、リンゴ・スター、ロバート・プラント、大滝詠一、忌野清志郎、桑田佳祐、山下達郎、竹内まりや、細野晴臣……と、音楽史に名を刻む多くのレジェンドたちと会ってきた。FMラジオの構成や選曲も手掛け、パーソナリティーも担当。プロデューサーとして携わったレコードやCDも数多い。著書に『ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち』など。 電子書籍『ROCK絶対名曲秘話』を刊行中。東京・大岡山のライブハウス「Goodstock Tokyo(グッドストックトーキョー)」で、貴重なアナログ・レコードをLINN(リン)の約400万円のプレーヤーなどハイエンドのオーディオシステムで聴く『レコードの達人』を偶数月に開催中。最新刊は『岩田由記夫のRock & Pop オーディオ入門 音楽とオーディオの新発見(ONTOMO MOOK)』(音楽之友社・1980円)。