チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介。今回は「のせチャーハン」問題に真っ向から向き合います。悩みに悩んだ末、大府市の町中華店で出合ったチャーラーで答えが出る!?
画像ギャラリーチャーハン好きの間で論争になる「のせ系チャーハン」問題。つまり、チャーハンの上に何かしらの具材をトッピングするのはアリかナシかというもの。
アリ派に言わせると、「おいしければいいんじゃね?」ということだろうし、「炒める技術を味わうのがチャーハンだ!」というナシ派の言い分も理解できる。
のせ系チャーハンはチャーラーとして成立しないのか
愛知県春日井市にある『圓家』は、長崎ちゃんぽんと特製チャーハンが名物。春日井市の本店以外にも小牧市や一宮市、名古屋市中川区にも暖簾分けした店があり、筆者もたまに食べに行く。
目当てはここの特製チャーハンだ。甘辛く炒めた豚肉と玉ねぎ、ニラがのり、さらに別料金でフワフワの玉子をのせることも可能なのだ。
こんなの、旨いに決まってるじゃないか(笑)。ただ、チャーラーという観点では疑問が残る。本店にはもうひとつの名物、長崎ちゃんぽんの他、醤油や味噌、塩のラーメンなど麺類を用意しているが、どうしても特製チャーハンのインパクトの方が勝ってしまうのだ。
のせ系チャーハンはチャーラーとして成立しないのか。そう諦めかけていたとき、見つけてしまったのである。
あれは愛知県の知多半島方面へ取材に行ったときのこと。半島の付け根あたりに位置する大府市で昼食を摂るために入った中華料理店でのことだった。それが今回紹介する『らーめん 中華料理 ミツワヤ』だ。
マンションの1階にあり、昔ながらの町中華とはやや趣が異なるものの、メニューのラインナップを見ると、思いっきり町中華。「らーめん」(620円)をはじめ、「塩バターらーめん」(850円)、「焼き豚ワンタンらーめん」(950円)など麺類が充実しているようだ。
思わず、二度見してしまったのが「ロースチャーハン」(750円)というメニュー。ちなみにノーマルな「チャーハン」は620円。130円の価格差はどこにあるのだろう。しかも、「らーめん・ロースチャーハン」(1280円)なるセットメニューも。これは注文するしかない!
で、目の前に運ばれたのがこれ。なるほど! ロースチャーハンというのは、豚ロースの焼肉をのせたチャーハンだったのだ。前出の『圓家』の特製チャーハンと比べてシンプル。これをラーメンと合わせて食べると、どのような化学反応が起こるのだろうか。
旨すぎて口の中はまさにお祭り騒ぎ
まず、ラーメンから食べるのが私の作法。ラーメンは中華料理店らしく澄みきった鶏ガラスープ。麺の上にはメンマとネギ、そしてチャーシューではなくハムがのる。これも中華料理店でたまに遭遇する。そりゃチャーシューの方が気分もアガるけど、昨今の物価上昇による値上げでチャーシューにすると利益が出ないのかもしれない。赤字と黒字、ギリギリの攻防戦。その象徴がハムだとしたら、とても尊く感じる。
では、スープから飲んでみよう。おおーっ! しっかりと抽出された鶏の旨みが身体にじんわりと染みわたる。きっと、丁寧な仕事をしてらっしゃるんだろうな。中太麺もいかにも中華料理店らしい。ラーメンが多種多様に進化する中、この普通さが今となっては逆に新鮮に思える。ずっとこのままであってほしい。
次にラーメンのスープを飲んで、口の中に味の余韻が残った状態でロースチャーハンを食らう。うっ、旨い! 豚ロースの焼肉は、タレを使っているものの味は濃すぎず、チャーハンとよく合う。というか、口の中はラーメンスープの鶏の旨みに豚肉の旨みが加わって、ハッピ姿で「まつり」を熱唱する北島三郎がリオのカーニバルに乱入しているような感じとでも言おうか。まさにお祭り騒ぎ。とにかく旨すぎるのだ。こりゃたまらん!
いかん、ちょっと一度冷静になろう。お冷を飲んで口の中をリセットした上で再び食べてみたが、やっぱり旨い! では、次に豚ロース焼肉を除けて、チャーハンだけを食べてみる。豚の脂がチャーハンに染みていて、これもおいしいのよ。
やっぱり、ラーメンのスープを飲んだ後に思いっきり頬張るのがいちばん。もう、無限に食べられるほど旨い。ただ、のせ系チャーハンとラーメンの組み合わせの唯一のマイナス点は、これを食べてしまったらノーマルのチャーハンに戻れなくなってしまうことだ。
チャーラーの旅のルールに於いて、のせ系チャーハンはご法度か否か。いや、たまにはイイだろう。だって、おいしいもん(笑)。ゆるーく楽しむのがチャーラーの旅なのだ。
取材・撮影/永谷正樹
画像ギャラリー