【蕎麦】静岡市内にはおいしい蕎麦屋が立ち並び、激戦区といわれる。一説には、もともと静岡では蕎麦づくりが盛んで、家康が駿府の蕎麦を江戸に伝えたために、それが江戸蕎麦の礎となったともいわれている。また大井川を境に、西はうどん…
画像ギャラリー2023年の大河ドラマの主人公は、徳川家康。その家康が75年の生涯で約40年過ごしたのが静岡。山と海に恵まれた食材の宝庫です。そんな今注目の”食の街”に突撃!家康公ゆかりの浜松と静岡(駅周辺)で、地元が誇るうまいもんを食べ尽くしてきました!今回は静岡駅周辺です。家康在城時の駿府城下町は武士に、商人・職人が住み、その上、東海道の宿場町として大層栄えたそうです。その影響が残っているのか、今もにぎわいもあって美味揃い。おでんに蕎麦にクラフトビール、昔から愛される味と、街に新たに根付きつつある味。静岡市でも静岡駅周辺を中心に絶品グルメをお届けします。
【家康公が幼少期と晩年を過ごし“愛したまち”】
8歳で父親と死別した家康は、今川義元の力を借りて自領を守るべく、人質として今川の本拠地・駿府(現在の静岡市)に送られた。ここで19歳までの約11年間を過ごすが、「人質=暗い座敷牢に閉じ込められる」の印象とは異なる。家康は英才教育を受けて元服を果たし、また結婚をして子どもを儲けるなど、義元の庇護のもとで健やかに成長したと伝わるからだ。加えて晩年を駿府で過ごし、大御所として、ここ静岡で幕府の実権を握り続けた。
【おでん】
静岡おでんを特徴づけるのは、牛すじからとるダシの風味。具材は駿河湾で水揚げされる魚介類を使った黒はんぺんなどの練り物に、牛すじや大根、玉子などで、青のりや魚のダシ粉をかけて食べる。市内では専門店のほか、居酒屋や駄菓子屋でも提供され、まさしく市民のソウルフード。あれこれ食べ比べてみよう。
『愛ちゃん』 @常盤町
毎夜の大盛況!横丁で一番賑わう人気の店
1957年から続く「青葉おでん街」。専門店が21軒並ぶ横丁で、一番の繁盛を誇るのが、ここ『愛ちゃん』だ。その理由は訪れれば、一目瞭然。牛すじでとったダシで煮込んだ大根などの具材が、艶々に輝いているからだ。そのきらめきに見惚れつつ食せば、素材とダシの滋味がじわり。絶妙の火入れ加減だ。
大根 100円、しのだ 100円、糸コン 100円、牛すじ 250円、ロマンス 100円、静岡割り 500円
その美味を守るのが、14年前に前店主から店を引き継いだ、松本義和さん(80歳)夫婦。ふたりの漫才の如きやりとりも、この店の名物だ。しかし口を動かしつつ手も動かせるのが、松本さんの凄み。常におでん鍋に手をかけるからこそ、ベストな染み加減で提供できるのだ。
[住所]静岡県静岡市葵区常磐町2-3-6 青葉おでん街
[電話]054-252-3358
[営業時間]16時半~24時
[休日]水・木
[交通]JR東海道線ほか静岡駅北口から徒歩15分
静岡おでん紀行~横丁から駄菓子屋まで~【昼夜を問わず静岡おでんを】
『愛ちゃん』のある「青葉おでん街」からすぐの場所にも、静岡おでんの専門店が集まる「青葉横丁」がある。いずれも10人で満席になる、小さな店ばかり。なぜこのような横丁が誕生したかといえば、戦後に近隣の公園で林立していたおでん屋台にルーツを持つからだ。1950年代の都市開発で、屋台は撤去される運命に。一部が横丁などに移転して、今も営業している。
一方で昔ながらの駄菓子屋や甘味処に行けば、店頭に湯気を立てる鍋があることも。一服しながら、静岡おでんがつまめるのだ。昼はかき氷と一緒に、夜はお茶割りのお供に。日がなおでん三昧の静岡旅はいかが?
【蕎麦】
静岡市内にはおいしい蕎麦屋が立ち並び、激戦区といわれる。一説には、もともと静岡では蕎麦づくりが盛んで、家康が駿府の蕎麦を江戸に伝えたために、それが江戸蕎麦の礎となったともいわれている。また大井川を境に、西はうどん、東はそばの食文化が色濃いと言われており、静岡市はまさしくその境界線の真東に位置する。
『八兵衛 静岡店』 @小黒
ローカル客で大いに賑わう人気の蕎麦処
1975年に静岡県藤枝市で創業。まだ自家製粉が珍しい時代に石臼の機械を導入し、‘89年には静岡店を開業。玄蕎麦の殻を剥かずに殻ごと挽く”押し挽き”を実践。甘皮(繊維)を極力取り除き、食感&のど越しのいい蕎麦を打ち続けている。その風味をダイレクトに味わうなら、せいろがおすすめだ。
鴨汁せいろ 2156円
[住所]静岡県静岡市駿河区小黒1-7-14 ドミ-ルビル1階
[電話]054-284-1331
[営業時間]11時~21時
[休日]無休
[交通]しずてつジャストライン小黒二丁目バス停から徒歩4分
【クラフトビール】
観光資源が豊富な静岡県では昔からお土産用の地ビールづくりが盛んで、1994年の酒税法改正以降、クラフトビール醸造所も増えた。なかでも近年話題なのがウエストコーストIPA&ヘイジーIPAのブームを巻き起こした『West Coast Brewing』(通称:WCB)。また市内には多くのタップバーがあり、さまざまなビールが楽しめる。
『12-twelve』 @紺屋町
WCBのビールを静岡駅チカで楽しめる
シアトル出身で、静岡在住の建築家であるバストン・デレックさんが、2019年に立ち上げた「WCB」。彼がブルワリー創業前から営むビアパブが『12-twelve』だ。静岡市郊外の用宗にある醸造所に行かずとも、駅近でWCB のビールが常時16タップ前後繋がっている有り難さ。多くの客で賑わう理由だ。
フライトセット 1700円
[住所]静岡県静岡市葵区紺屋町7-14 小梳神社第2ビル1階
[電話]054-204-8188
[営業時間]11時~15時、17時~24時、土・日・祝11時~24時 ※日は~22時
[休日]月(祝は営業、翌日休)
[交通]JR東海道本線ほか静岡駅北口から徒歩8分
【手間隙かけた美味に触れに、いざ静岡へ!】
静岡駅周辺、とくに北西側の繁華街は街歩きが楽しいエリア。駿府に隠居した家康が都市整備を進めたため、今も碁盤の目状に道が延びる。その街区に並ぶ、数多の飲食店。「静岡市は県内一の食の街」と言われる所以だ。「水は安倍川水系で、近隣の焼津・清水港で揚がる魚も旨い。静岡は本当にいいところだよ」。
おでん店『愛ちゃん』店主の松本義和さんも、わが街の美味に自信満々だ。その静岡のソウルフードが、ダシが染みた静岡おでん。「おでんと女房には、愛情と手間を注がなきゃ」。冗談交じりに話しつつ、こまめにおでん鍋の世話をする松本さん。その真摯な仕事ぶりと、おどけた対応のギャップが魅力だ。
静岡駅の南側、小黒町で蕎麦店『八兵衛 静岡店』を営む町塚延夫さんの仕事ぶりも、職人気質。理想の蕎麦のために、石臼碾きの機械を特注するほどだ。必要以上に蕎麦の実の甘皮部分を挽き込まないことで生まれる、歯応え&のど越しに秀でた蕎麦。スタッフのサービスも懇切丁寧で、食事時には満席の人気店だ。
また静岡駅の北側は、日本有数のビアパブ密集地。県内に多くのクラフトビール醸造所が存在するからだ。『12-twelve』は全国、また世界にファンを持つ『West Coast Brewing』のビアレストラン。毎週発売される新作のビールが最速で繋がり、いずれもクラフトマンシップを感じさせる味わいだ。
家康が駿府城を整備したことを機に、全国から優秀な職人が静岡に集まったと、『静岡市歴史博物館』で学んだ。彼らが定住し、やがてその技術がプラモデル産業につながったことも、『静岡ホビースクエア』で知った。そして静岡の美味は、職人ともいうべき仕事熱心な作り手が紡いでいる。そう思えば、『ヴィノスやまざき』『キル フェ ボン』などの人気店が静岡発祥なのも、頷けるのだ。手間隙かけて作られる美味に合うために、ぜひ静岡に出かけてほしい。
グルメ旅を盛り上げる【観光スポット&お土産アイテム】
『静岡市歴史博物館』 @追手町
2023年1月にグランドオープン。徳川家康や今川氏などをキーワードに、静岡市の歴史について多角的かつ深く踏み込んだ展示をおこなっている。また建設前の発掘調査で発見された戦国時代末期の道と石垣の遺構も間近で見学できる。
[住所]静岡県静岡市葵区追手町4-16
[電話]054-204-1005
[営業時間]9時~18時(展示室入場は閉館30分前まで)
[休日]月(祝は営業、翌平日休)
[交通]JR東海道本線静岡駅北口から徒歩15分
『静岡ホビースクエア』 @南町
江戸時代を通して、全国から職人が集まった駿府の街。その技術はやがて木型模型製造、そしてプラモデルに引き継がれる。静岡市が出荷額で全国一を誇るこの分野の展示を大体的に行うのが、このミュージアムだ。
[住所]静岡県静岡市駿河区南町18-1 サウスポット静岡3階
[電話]054-289-3033
[営業時間]11時~18時 ※土・日・祝は10時~
[休日]月(祝は営業、翌日休)
[交通]JR東海道本線静岡駅南口から徒歩1分
【発祥の店を行く】
『ヴィノスやまざき 静岡本店』 @七間町
今や全国に店舗網を広げるこちらは、静岡市で1913年に小さな酒屋として創業した。淡麗で飲みやすいのが、静岡の地酒の特徴。「磯自慢」や「初亀」など、小さな蔵元が造る、いろんな銘柄が揃うので、お土産にするのもいい。
[住所]静岡県静岡市葵区七間町18-4
[電話]054-251-3607
[営業時間]11時~20時
[休日]無休
[交通]JR東海道本線静岡駅北口から徒歩20分
『キル フェ ボン 静岡』 @両替町
静岡市発祥のタルト専門店。写真のタルトは3月18日から静岡店・浜松店にて先行販売(全国販売は4月1日から)。3月の間は静岡でしか体感できない味わいを、オリジナル保冷バッグに入れてお土産にするのはいかが?
[住所]静岡県静岡市葵区両替町2-4-15
[電話]054-205-5678
[営業時間]11時~19時
[休日]無休
[交通]JR東海道本線静岡駅北口から徒歩15分
撮影/西崎進也、取材/岡野孝次
2023年は徳川家康公ゆかりの地へ! 「どこ行く家康」キャンペーン
JR東海は、徳川家康ゆかりの静岡、愛知エリアを中心に、「どこ行く家康」キャンペーンを展開中。大河ドラマ館が設置される静岡、浜松、岡崎に加え、名古屋や関ケ原などのゆかりのスポットに魅力的なコンテンツが用意されています。
詳細はこちらから。
https://recommend.jr-central.co.jp/zurashi-tabi/dokoiku-ieyasu/
※2023年4月号発売時点の情報です。
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