受け取ってみると、そばの上には磯海苔もめかぶも、たっぷりと乗っているではないか。
うれしい。
さらには、ホタテの稚貝まで、3個乗っているではないか。
うれしい。
なにか得した気分である。私の知る限り、ホタテを参画させた立ち食いそばというのは、聞いたことがない。いや普通の町そばでも、希少だろう。
まずツユをひと口飲むと、かなり熱い。
青森の気候を考慮してなのだろうか、すっとは飲めないほどに熱く。ひと口で体が温まる。
そして主役の磯海苔がいい。
香り豊かで、磯香が鼻に抜け、海苔の旨みがツユに溶け込んで、グッと味が深くなる。そばに絡めて、ずずっと手繰れば、海苔の香りが鼻に抜けて、粋な花巻そばの風情が漂う。
一方のめかぶは、味や香りというよりぬめりである。
ぬめっとした食感が、そばの一本一本と絡んだ、山かけ的情趣が生まれる。そんな磯海苔とめかぶの演出を感じながら、ホタテをかじる。小さいながらも甘みがあり、そばの句読点として、実によろしい。
最後のツユは、海苔の旨みとめかぶの粘りが溶け込んで、一段と味わいが膨らんでいた。
だからつい、最後の一滴まで飲み干してしまった。
取材・撮影/マッキー牧元