「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』の三択コラム」では、食に関する様々な疑問に視線を向け、読者の知的好奇心に応えます。今回のテーマは「糖質制限ダイエット」です。 文:三井能力開…
画像ギャラリー「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』の三択コラム」では、食に関する様々な疑問に視線を向け、読者の知的好奇心に応えます。今回のテーマは「糖質制限ダイエット」です。
文:三井能力開発研究所・圓岡太治
炭水化物は「エネルギー産生栄養素」
三大栄養素(炭水化物・タンパク質・脂質)は、身体を動かすエネルギー源となる栄養素で、「エネルギー産生栄養素」とも呼ばれます。このうちもっともカロリーが高いのは脂質です。炭水化物とタンパク質が1g当たり4kcalのエネルギーになるのに対し、脂質は1kg当たり9kcalのエネルギーとなります。そのため以前は脂質の摂りすぎがもっとも太る原因と考えられていました。
ところが、体脂肪が増えるメカニズムが明らかになってくると、炭水化物に含まれる糖質を制限する方がダイエット効果が大きいと考えられるようになりました。それが糖質制限ダイエットです。糖質制限ダイエットについて述べた次の文章のうち、適切なものはどれでしょうか。
(1)糖質をもっとも制限するが、脂質もあわせて控えめにする
(2)タンパク質は制限せずに食べて良い
(3)炭水化物は全般的に制限する
基本的な考え方は、「糖質の摂取量」を制限
答えは(2)です。
糖質制限ダイエットにもいくつかのやり方がありますが、「糖質の摂取量を制限する」というのが基本的な考えです。ここではそのもっとも素朴な糖質制限ダイエットについて考えます。糖質制限ダイエットでは、糖質を制限しますが、カロリーについての厳しい制限はありません。むしろ糖質の代わりに脂質とタンパク質でエネルギーを補うために、脂質とタンパク質は積極的に摂取します。
従来のカロリーを制限するダイエットでは、食べられる食品の種類や量が制限されるため、継続するのが難しいという問題がありました。その点、糖質制限ダイエットでは、糖質を多く含むご飯や麺などの主食こそ制限しなければなりませんが、糖質の摂取量に気を付ければ、肉や魚などさまざまな食べ物を普通に食べることも許されるので、カロリー制限ダイエットより継続しやすいという利点があります。それが、糖質制限ダイエットが広く受け入れられた理由の一つでもあります。
なお、炭水化物≒糖質と混同されることがしばしばありますが、炭水化物には糖質だけでなく食物繊維も含まれます。食物繊維はほとんど消化吸収されないため、血糖値を上げることもありません。また腸内環境を整える働きがあります。したがって、炭水化物全般ではなく、その中の糖質量を考える必要があるのです。
エネルギー不足を補うため、タンパク質の分解も
糖質を摂り、小腸からブドウ糖が吸収されると、血糖値が上昇します。血糖値が上昇すると、インスリンが分泌されます。インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞に取り込むよう命令を出すホルモンです。取り込まれたブドウ糖はおもにエネルギー源として消費されますが、余ったブドウ糖は脂肪細胞に取り込まれ、脂肪に変えて蓄えられます。これが糖質を過剰に摂取すると脂肪が増える理由です。
糖質制限ダイエットでは、タンパク質と脂質の摂取に厳しい制限はありません。タンパク質は、エネルギー源としてよりも、筋肉・臓器・骨などを構成する成分としての役割が大きいため、多めに摂取しても支障は少ないというのは納得のいくところです。しかし、体脂肪の材料となる脂質も制限しなくて良いというのはなぜでしょうか。
食事に含まれる脂肪のほとんどは長鎖脂肪酸からなるトリグリセリドで、そのままでは体内に吸収されません。酵素によって脂肪酸などに分解され、その後小腸から吸収されます。また、吸収された脂質は、神経組織、細胞膜、ホルモンなどの材料となります。それ以外の脂質の一部が、インスリンの働きにより脂肪細胞に取り込まれますが、糖質を制限してインスリンの分泌が抑えられれば、脂質が脂肪細胞に取り込まれることも抑えられます。
以上のことから、糖質制限ダイエットでは、糖質を制限すれば、脂質・タンパク質を制限しなくても、体脂肪の増加を抑制できると考えられているのです。
ところが、糖質制限ダイエットにも問題があります。糖質制限をすると、体脂肪を減少させるのには効果的なのですが、過度に糖質が不足すると、不足するエネルギーを補うために、タンパク質が分解されるようになります。そのままの状態でいると、筋肉量が減少し、基礎代謝が落ち、太りやすく痩せにくい体質となる可能性があります。
最近では、適度に糖質を制限する「ロカボダイエット」などの方法もあらわれてきています。
どのような方法も、正負両面があり、また個人差もあります。
正しい知識を得て、自分に合った適切なダイエットを模索することが大事ではないでしょうか。
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