コロナ禍により、原点に立ち返る大切さを実感
頼りになる父を亡くし、店を盛り立てようとがんばっている矢先に起こったコロナ禍。
みなさんもご承知の通り、世界の風景は一変してしまった。
「あれだけ賑わっていた浅草がまるでゴーストタウンのようでした」と振り返る。
浅草・仲見世通りの店の多くはその時期、シャッターを下ろしていた。
行列ができる人気店だった『カツ吉』も当時の客足はかなり減り「どうもがいていいのかすら、わかりませんでした」と和美さんが言うように売り上げはガクンと落ちた。
3年を経て、それまでの世界が戻ってきたような現在、何を思っているのだろうか。
「あの地獄の日々、どん底を味わったことは覚えておかなければなりません。苦しみを味わったからこそ、お客さまが戻ってきた今は何があっても辛くないですし、お客さまがお越しくださるありがたみと感謝の気持ちを持ち続けるという原点に立ち戻れました。
人に良いと書いて『食』。人は良き食から作られていくものです。通常通りの生活が戻りつつある中で、そういう原点を忘れてしまっている人が多いように感じます」
そうした“食の原点”でありたいと願い、フレンチのコックでもあった勝雄さんが開いたのが『元祖 カツ吉』だ。
お客さんに喜んでほしいという思いで勝雄さんが開発したメニューはなんと50種類以上! その多くは、豚上ロース肉の間に具材を挟み、衣をつけて揚げるという手をかけたもの。さまざまな素材を生かしたラインナップだ。
名物の「味噌とんかつ」(単品1300円)は、独自の発酵製法を施した自家製味噌を中に閉じ込めている。
初代のアイデアが光る「納豆とんかつ」(単品1730円)や「餃子とんかつ」(単品1730円)、気温や季節などによりチーズのブレンドを変えるという「チーズとんかつ」(単品1470円)なども人気だ。
最近は特に名物の味噌やチーズなど、発酵食品を使用したメニューがよく出るそう。
一見しただけではどんな料理かわからないメニューが載っているのも『カツ吉』のユニークさだ。
例えば「ザ・スペシャル」(単品1780円)は、海苔とネギとカツオ節がとんかつの中に隠されている。
和食材の旨みが詰まっているから食べ飽きないし、シンプルだからこそ肉のおいしさがよくわかる一品だ。
ちなみに、何がスペシャルかというと、初代が毎日入荷する肉のコンディションを確かめるときにこのメニューで肉の質と味の見極めをしていたからだとか。
現在は先代の味を忠実に再現できる約30種類に絞って提供。気になるメニューが目白押しなので、ぜひ一度足を運んでみてはいかがだろうか。