銭湯のでかい湯船に浸かって温まれば、何ともいえない心地よさ。ふらり立ち寄り、極楽時間を過ごしたら、今度は銭湯やその周辺でちょいと至福の一杯を。東京に残る銭湯約450軒の中から、そんな楽しみが待つ、銭湯を厳選して紹介します…
画像ギャラリー銭湯のでかい湯船に浸かって温まれば、何ともいえない心地よさ。ふらり立ち寄り、極楽時間を過ごしたら、今度は銭湯やその周辺でちょいと至福の一杯を。東京に残る銭湯約450軒の中から、そんな楽しみが待つ、銭湯を厳選して紹介します。
第1位『深川温泉 常盤湯』 @森下
湧いた! 江戸の温泉 下町銭湯の懐かしさそのままにリニューアル
[住所]東京都江東区常盤2-3-8
[電話]03-3631-9649
[営業時間]12時~24時半(最終受付24時)
[休日]木
[交通]都営大江戸・新宿線森下駅A7出口から徒歩3分
【温泉で癒され酒場天国森下の街へ】
でかい湯船で手足を伸ばせば思わず「はぁ~」と声が出る。見上げれば雪化粧の富士山。なんだかとても贅沢だ。しかしここは箱根でも伊豆でもない。お江戸は深川、東京のど真ん中なのである。80年以上の歴史を持つ『常盤湯』が、2023年3月リニューアルオープン。懐かしい宮造りの建物は活かしつつ、屋内の設備を一新。目玉は敷地内に湧く天然温泉だ。
「以前から敷地内に温泉が出るのではないか、という話はあったんですが、ほんとうに出てよかった。銭湯に新しい時代が来ていると思います。古さは大切にしながら、少しでもみなさんの『癒し』になりたい」と、三代目の山本彬善さん。男湯のみだが温泉の露天風呂まである。うれしいのは湯船によって、温度が約36度、約40度、約42度と分けられていること。「熱湯」派も「ぬる湯」派も楽しめる。水を飲み体を整えたら……さあ湯上りの一杯を。ロビーでまずは生ビール。
くぅ~っと体に吸い込まれ、勢いづいて近くの『田口屋』へ。こちらも風情ある建物に赤提灯、酒樽を使った椅子がかっこいい。「樽生のクラフトビールがありますよ」とご主人。酒樽の椅子で飲むビールが旨い。
道を挟んだお隣の『三徳』は、創業55年の老舗居酒屋。「レバフライタルタルソースがけ」は、レバーの旨みと甘めのソース、タルタルソースが調和し、あとを引く。「下町ハイボール」で口をさっぱりとさせて、またがぶり。銭湯帰りらしい、「風呂セット」のカゴを持ったお客がほろ酔いで帰っていく。ご近所さんがうらやましい。『常盤湯』『田口屋』『三徳』。「幸せの三角地帯」と呼ばせてください。
『田口屋』 @森下
ビールに日本酒、ジンなどを角打ちで
ドラフトビールは約4種類、日本酒、ジン、ワインなどグラス400円。販売する商品はすべて店内で飲める(グラス使用・抜栓料も無料)。「『三徳』さんが満席のときはウェイティングバー的に飲む方もいます」と、ご主人の飛田良則さんが笑う
剣菱樽酒、TOKYO Blues、地元深川蒸留所のジンFueki すべて400円
[住所]東京都江東区常盤2-6-11
[電話]03-3634-4711
[営業時間]9時~19時
[休日]日・祝
[交通]都営大江戸・新宿線森下駅A7出口から徒歩3分
『三徳』 @森下
安くて旨い! これぞ下町居酒屋
「もつ煮込み」は8種の味噌を使う、コクのある味わい。土鍋で出されるので熱々だ。同じ味噌ベースを使った「下町マーボー豆腐」680円は、まかないから生まれた逸品。安旨つまみ揃いの人気居酒屋だ
ポテトサラダ 350円、三徳特製もつ煮込み 550円
[住所]東京都江東区常盤2-11-1 新光社ビル1階
[電話]03-3631-9503
[営業時間]17時~24時(23時半LO)
[休日]日・祝
[交通]都営大江戸・新宿線森下駅A7出口から徒歩3分
第2位『一の湯』 @沼袋
沼袋で創業73年 やさしさあふれる「ウチのお風呂」
[住所]東京都中野区沼袋1-39-10
[電話]03-3386-2836
[営業時間]16時~翌2時(女湯は翌1時半)
[休日]水
[交通]西武新宿線沼袋駅北口から徒歩1分
【銭湯愛を語りつつ夜は更けていく】
『一の湯』に入るたび、「やさしい銭湯だなぁ」と思う。シャンプー、ボディソープはもちろん、子ども用のおもちゃもある。女湯には無料の化粧水やクリーム、そして脱衣所のハンガーにかかった洋服には、「ご自由にどうぞ」。なんと、風呂上り、もし無性に着替えたくなったらもらってよいのだ。
なぜこんなにやさしいのか。「家のお風呂のように入ってほしいから」。女将の西川祥惠さんに伺うと、こんなひと言が返って来た。「うちは駅から近いし、仕事帰りに本当に手ぶらで寄れる銭湯にしたいんです。だからフェイスタオルも2枚まで無料にしてるの」。
帰り道に、ぶらりと寄れる銭湯で一日の疲れを取って――。そうか、『一の湯』のやさしさは、そんな女将さんの母心にあったのだ。湯は井戸水を軟水化しているので、シャンプーや石鹸の泡立ちもよく、髪や肌もしっとりする。創業は1950年。70年以上地元の人たちが浸かってきた。銭湯前の通りに「一の湯商店街」と名がつくほど沼袋の街に溶け込んでいる。
ぽかぽかが冷めないうち、目指すのは焼とんの人気店『たつや』だ。ハートランドの生ビールで「てっぽう」をひと口。ビールはあっという間に消え、「フローズンキンミヤ、ホッピーとセットで!」。
沼袋から去りがたく、もう1軒。『BarCafe チロル』はこじんまりとしたかわいらしいバーだ。「『チロルチョコみたいに小さいけど、親しまれる店にしたかった」と店主の櫻井恭子さん。わずか7席、自然と客同士の会話もはずむ。「僕も『一の湯』入ってきましたよ」「昔はもう一軒『清水湯』もあってね」。銭湯愛を語り合い、沼袋の夜は更けていく。
『たつや』 @沼袋
旨みたっぷりのやきとんで一杯!
鮮度のよいモツを、店主藤井龍成さんが最高においしく焼き上げる。独自に調合した「味噌」はクセになる味。「乗り鉄」の藤井さんが、旅先で仕入れた特産品がメニューに登場するのも楽しみ
フローズン キンミヤ・ホッピーセット 500円、てっぽう、かしら、しろ 各130円、みと 180円、トマト肉巻き 220円
[住所]東京都中野区沼袋3-27-6
[電話]03-5942-9986
[営業時間]18時頃~23時(22時半LO)
[休日]不定休
[交通]西武新宿線沼袋駅北口から徒歩2分
『BarCafe チロル』 @沼袋
酒好き、銭湯好きが集うバー
窓が大きく開放的な雰囲気のバー。開けた窓からは気持ちのよい風が入って来る。リキュール「ピプノティック」のカクテルは、爽やかな青が初夏にぴったり。同じ沼袋に、姉妹店「和チロル」「チロルさん」もあり
カクテル 700円、チーズの盛合わせ 600円
[住所]東京都中野区沼袋1-45-6
[電話]03-3388-7698
[営業時間]19時~翌1時
[休日]不定休
[交通]西武新宿線沼袋駅南口から徒歩3分
第3位『東京浴場』 @西小山
湯に浸かって寛いで 西小山に蘇った街の憩いの場
[住所]東京都品川区小山6-7-2
[電話]03-6421-5739
[営業時間]5時~12時、14時~翌2時
[休日]火
[交通]東急目黒線西小山駅から徒歩1分
【ぬる、熱、水の交互浴で、心も体も癒される】
湯に浸かる前、まずはロビーが心地よい。壮大な書棚にマンガや本がびっしり。読書スペースでマンガに読みふける人。駄菓子コーナーをじっと見つめる子ども、ベンチでジョッキを傾けるお父さん。みんながくつろぐ居間のようだ。
西小山で60年以上営んでいた「東京浴場」が閉業したのは、2019年6月のこと。またひとつ名銭湯が消えた……ところが2020年7月、『東京浴場』は復活した。蘇らせたのは、銭湯代行業のニコニコ温泉株式会社。「また銭湯をやってくれてありがとう」。スタッフは、たくさんの地元の方々からお礼を言われたという。
湯は、「ぬる湯」と「熱湯」。そして、井戸水を汲み上げた「樽水風呂」だ。これらに交代で浸かるのが「東京浴場流交互浴」。これ、ほんとに気持ちよい。2度繰り返すと、コリも取れて体がふわっと軽くなったよう。ロビーに戻れば「あら、久しぶり」なんて声を掛け合う常連さんたち。銭湯は単にお風呂に入るだけの場ではない。みんなの憩いの場なんだなあと、湯上りビールをプハ~っとしながら思う。
銭湯を出て、『クラフトビレッジ西小山』へ。ほの明るい夕方、テラスで本日のビール2杯目、最高です。お次は中華『みんみん』へ。スタートは「焼き餃子」と生レモンサワー。熱々を頬張りながら、メニューをじっくり見れば「中華じゃない方」もかなり充実。
「揚げ空豆」「新筍のあおさ炒め」などかなり魅力的だ。注文した「揚じゃがとイチボの肉じゃが」は、揚じゃがに煮汁がじゅわっ~。すかさず老酒投入。『東京浴場』から『みんみん』まで歩いて2分、次は湯上り直行だ!
『クラフトビレッジ 西小山』 @西小山
好みの美味をテラスでのんびり
1階には居酒屋、ベーカリーなど飲食店数店舗が並ぶ。好みのつまみと飲み物を買って好きな席で食べられる。晴れた日は、2階のテラス席がオススメ
アップルパイ 340円、食堂の日替りポテサラ 450円、ニラ玉焼き 650円、サンドイッチ 240円
[住所]東京都目黒区原町1-7-8
[電話]03-5725-9680
[営業時間]各店舗異なる
[休日]月(祝の場合営業、翌火休)
[交通]東急目黒線西小山駅から徒歩1分
『みんみん』 @西小山
中華から創作料理まで豊富に揃う
1962年、武蔵小山で創業以来、地元で愛されてきた。7年前、再開発で西小山に移転。「その際、お酒もゆっくり飲んでいただきたいと、創作メニューを加えたんです」と三代目のミホさん。ひとり客、家族連れなど幅広い客層でにぎわう
生レモンサワー 450円、焼餃子 450円
[住所]東京都品川区小山6-6-11
[電話]03-6426-6117
[営業時間]17時~24時
[休日]無休
[交通]東急目黒線西小山駅から徒歩3分
第4位『梅の湯』 @西尾久
人と人をつなぐ ひとつ屋根の下の銭湯と焼鳥屋
[住所]東京都荒川区西尾久4-13-2
[電話]03-3893-1695
[営業時間]15時~翌1時
[休日]月
[交通]都電荒川線小台駅から徒歩7分
【期待以上の焼鳥に銭湯抜きで通う客も】
銭湯から即飲み屋!銭湯好きのんべえの理想、ですよね。『梅の湯』はまさに、その理想形。ひとつ屋根の下に、銭湯と焼鳥屋さんが仲良く並んでいるのだから。まずは『梅の湯』の暖簾をくぐった。露天風呂に浸かり、夕暮れの空を眺める。なんて贅沢。その後、高温のジェット風呂でスッキリだ。
『梅の湯』は創業1951年。2009年、三代目栗田尚史さんの母が建物の一部で『梅京』を始めた。2016年に全面リニューアル。館内で印象的なのは地元関係のポスターやチラシが多いこと。『梅の湯』がイベントの会場となることもあるらしい。栗田さんは言う。「銭湯は人が集まるところですから、人と人がつながる場でありたいと思うんです」。
『梅京』の暖簾をくぐる。現在は、栗田さんの義弟・鈴木克典さんが店主だ。鈴木さんによれば、「お義母さんが引退するので、和食の料理人だった私が引き継ぐことになった」そう。話しているうち「おまかせ」5本が焼き上がる。砂肝、レバーの焼き加減は絶妙。もも、ハツもぷりぷりだ。
「銭湯併設」に気を取られ、実はあまり期待していなかった……。「最初はよく言われました」と笑う鈴木さん。今では焼鳥そのものを気に入ってやってくる客も多い。夜も更けて、おなじみさんがやって来ては「お疲れさま」の声がかかる。『梅京』でもまた、人と人がつながっている。
『梅京』 @西尾久
銭湯から徒歩10秒の実力店
吟味した鶏肉を毎日串打ちし、炭火で焼き上げる。ほか焼串のフランスパン165円、鳥スープ茶漬け、稲庭うどん各550円なども人気。日本酒はその日によって「伯楽星」などオススメあり
[住所]東京都荒川区西尾久4-13-2
[電話]090-4362-8154
[営業時間]18時頃~24時
[休日]月
[交通]都電荒川線小台駅から徒歩7分
『天ふじ』 @西尾久
街で人気の天ぷら屋さん
創業63年。手間暇かかった煮卵天150円は感動のおいしさ。ほか、天丼650円、フキノトウなど季節ごとの天ぷらも楽しみ。持ち帰りのみ。『梅の湯』帰りのお土産にぜひ
[住所]東京都荒川区西尾久1-32-7
[電話]03-3894-4746
[営業時間]10時半~19時頃
[休日]日・祝
[交通]都電荒川線小台駅から徒歩7分
第5位『万年湯』 @新大久保
旅気分も味わえる 軟水風呂がやさしい新大久保の「隠れ湯」
[住所]東京都新宿区大久保1-15-17
[電話]03-3200-4734
[営業時間]15時~24時(最終受付23時半)
[休日]土
[交通]JR山手線新大久保駅から徒歩5分
【日常として浸かれる 落ち着く空間に】
にぎわう新大久保の大通りから、一本路地を入る。さらに角を曲がった先に『万年湯』が現れる。「ちょっと奥まっているのがいいでしょう。だから、うちは『都心の隠れ湯』を謳ってるんです。それに私の名前が名前なもので……」。そう言って少しにやっとしたご主人。名刺を見ると、んん、「武田信玄」さん?「のぶよしと読みますが漢字は同じです」。なるほど、「信玄の隠れ湯」。粋ですね。1961年創業。変貌する新大久保の街で営み続け、2016年に全面リニューアル。
設備は新しくしつつ、木を生かした落ち着く脱衣場、白を基調としたタイル絵。品のよい、落ち着く空間だ。「お客さまが疲れない、オーソドックスな銭湯というのが一番でした」と武田さん。大きな転換は、軟水化させる機械を導入したこと。湯質の劇的な変化は想像以上だったという。実際に湯に浸かってみると、入っているみなさん、くつろいだいい顔をしている。湯から出て肌をなでると、ほんとうにしっとり、入る前とまったく違うのだ。
つるつるの肌をなでつつ、ご機嫌で韓国料理『美名家』へ。「ヤムニョムホタテ」や「セリのチヂミ」がおいしい。合わせて飲むのはマッコリ。「隠れ湯」で肌をしっとりさせ、内側から乳酸菌。これはちょっと人に教えたくないような……いやいや、ぜひ一度お試しあれ。
『美名家』 @新大久保
しっかり食事も可の大衆韓国料理店
落ち着いた雰囲気と細やかなサービスがいい。にぎやかな店が多い新大久保で、大人におすすめの一軒だ。量は多めなのでできれば3、4人でいろいろ食べたい。ポッサムも人気だ
ヤンニョムホタテ 2200円、マッコリサワー 680円、セリチヂミ 1650円
[住所]東京都新宿区大久保1-9-17 寿ビル2階
[電話]03-3203-4088
[営業時間]11時半~15時、17~22時
[休日]月・火
[交通]JR山手線新大久保駅から徒歩8分
撮影/西崎進也(常盤湯、田口屋、三徳、東京浴場、西小山、みんみん、梅の湯、梅京、天ふじ)、鵜澤昭彦(一の湯、たつや、BarCafe チロル)、小島昇(万年湯、美名家)、取材/本郷明美
※2023年6月号発売時点の情報です。
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