造り手が減りつつある、サバのなれずしを居酒屋で
サバ郷土料理が充実しまくりの福井県。ジェンヌがぜひとも味わっていただきたいのが「サバのなれずし」だ。基本は、サバと米、麹などとともに漬け込んだもので、福井県内では、おもに山間部に位置する勝山市、若狭地方で作られている。
ここで最初に説明しておきたいことがある。なれずし、というと「ふなずし」的なものを想像する人が多いかと思うが別モノ! におい、ありません。くさみ、ありません。酒の友として好む方もいますが「女子」と「子ども」にファン多数!
そんなサバのなれずしを福井市内で提供しているのが、居酒屋『おいで康』。
福井県の新鮮な魚を使った料理をメインとしたお店で、店主の嶋崎康志さんが自ら漬け込んだ「さばのなれずし」を堪能できる。
サバが大好きな嶋崎さん。自分でもおいしいサバのなれずしが作れたら……と思い、チャレンジをはじめた。じつは、いま、サバのなれずしを作る人はどんどん少なくなっている。
そんな現状から、「貴重な食文化が失われるのは残念だし、さみしいなあと思ったんです」と嶋崎さん。
サバのなれずしは、地域によって製造スタイルが異なる。若狭地方では、へしこにしてから漬け込むが、嶋崎さんの基本は勝山流。
まず国産のサバを1週間ほど塩漬けしてから、水と酢で洗う。次に米麹、県産コシヒカリ、そして、刻んだショウガ、昆布、にんじんとともに桶にいれて低温で、1か月ほど漬け込み発酵させる。
「塩の加減で発酵の度合いが変わりますし、なかなか思うような仕上がりにならなくて大変でした」と嶋崎さん。それでもあきらめることなく、試行錯誤を重ねて3年がかりで完成。
出来上がったなれずしを食べて、まずおいしい! と大ファンになったのは、6歳になる嶋崎さんのお嬢さんだ。
では、嶋崎さん渾身のなれずしをいただく。
「フレッシュ、マイルド。そして爽やか」!
サバは漬け込まれているのに、食感も残り、酸味をおびて「しめさば」のようなフレッシュさ!
そして発酵の過程で生まれた乳酸菌の効果で、米と麹がヨーグルトのような甘酸っぱい独特のソースになって、サバをまとう。
これは、いうならば「サバの麹マリネ」! 日本酒もさることながら、ジェンヌ的には泡と白ワインが最高のマリアージュ! 一度食べたら、あなたのサバ人生にとって欠かせないものになるはず!
■『おいで康』
[住所]福井県福井市堀ノ宮1-325
[電話番号]0776-28-0828
[営業時間]17時~翌1時
[休み]月(祝日の場合営業)
[交通]えちぜん鉄道日華化学前駅から徒歩5分
福井ならではの定番を、各店舗で独自にアレンジし極めた福井市サバグルメ。これはきっと、脈々と受けつがれた「サバソウル」のなせる業。サバファンを震え上がらせる「魂のサバグルメ」、福井編はまだまだ続きます!
■池田陽子
全日本さば連合会広報担当 サバジェンヌ/薬膳アテンダント
サバを愛する消費者の集まりである「全日本さば連合会」(全さば連)の広報を担当。日本各地のサバ情報の発信、サバ商品のPR、商品開発等を行う。北京中医薬大学日本校を卒業、国際中医薬膳師資格を持ち、薬膳アテンダントとしても活動。水産庁「海の宝!水産女子の元気プロジェクト」認定メンバー。著書に『サバが好き!~旨すぎる国民的青魚のすべて』(山と渓谷社)、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)など。全さば連HP:http://all38.com/
取材・撮影/池田陽子