福井ならでは! 街で長く愛される“へしこイタリアン”
福井ならではのサバ郷土料理で忘れてはならないのが「サバのへしこ」(サバのぬか漬け)。独特の旨みがクセになる味わいで、ご飯にも、酒の肴にもぴったりの珍味だ。
そんなへしこを「イタリアン」で楽しんでみるのはいかが?
創業42年を迎える老舗イタリアンレストラン『イタリア食堂ITSUKI』では、へしこのピザや、パスタが楽しめる。
福井県大野市出身の谷口雅治シェフは、日本におけるイタリアンの黎明期という昭和40年代に、大阪・北新地のイタリアンレストランで修業。福井にリターンして『ITSUKI』を開いた。もちろんのこと、当時、福井ではイタリアンはとても珍しかった。
「ミートソースは知っていても、ミネストローネってなに??? カルボナーラって、は??? エスプレッソって??? 見たことないし、なに、量が少ない !!! みたいな時代でした。早すぎましたね(笑)」と奥さまのタミさん。
と、なぜそんな前置きをしたかというと、いきなり「へしこ」が登場したからだ。
いまでこそ、へしこを使った洋風メニューは珍しくないものの、「カルボナーラが未知なる食べ物」のなかで、果敢にもデビューを果たしたのが「へしこピザ」だった。
「へしこの強い旨みがアンチョビのように使えるのでは、と思って試したらおいしく仕上がりました。福井の人はへしこを食べなれているし、提供をスタートしたんです」と雅治さんは語る。
しかし食べなれているといっても、ご飯か日本酒とセット、である。
「ピザは、かなり勇気が必要なようでした……」と雅治さん。
おずおずと見たこともないへしこピザを食べたお客さんたちは、「おいしい」と大絶賛。おつまみにもよいと大人気。リピーターが増え、たちまちピザメニューの「トップの座」を張る看板商品となった。
おそらく福井県における、へしこイタリアン、いやいやサバイタリアンの元祖ともいえる『ITSUKI』のへしこピザ。生地は小麦粉、水、オリーブオイルのみとごくシンプル。イタリアから輸入したトマト、玉ねぎ、ワインなどを入れて煮詰めた特製のトマトソースを塗り、へしこ、チーズをトッピングして焼き上げる。
「へしこは基本塩気が強いので、しょっぱくならないように使用するものを厳選。量も工夫しました」と雅治さん。
こんがり焼き上がったピザは、皮がカリッ。中はモチッ。シンプルで雑味なくトマトのフレッシュ感いっぱいのソース、シャキシャキの玉ねぎ、とろけるチーズ、そこにへしこが加わると、特有の旨みと甘みが広がってパッと華やかに味が広がる。味のグラデーションが、アンチョビよりはるかに深いのだ。
しかもワインばかりか日本酒にも合うピザ! 「日本酒のイベントでも、おつまみに好評ですね」と雅治さん。
へしこを使用した、野菜たっぷりのペペロンチーノ、その名も「へしこんチーノ」も『ITSUKI』の人気メニューだ。
へしことガーリックの相性もバッチリ。へしこの旨みがしみこんだ野菜がこれまたおいしい。
福井ならではの「へしこイタリアン」をとことん、味わってみていただきたい。
■『イタリア食堂 ITSUKI』
[住所]福井県福井市中央3-3-11
[電話番号]0776-22-1190
[営業時間]11時半~14時、17時~21時半
[定休日]月
[交通]JR北陸線ほか福井駅から徒歩13分
[URL]https://fukui-itsuki.com/