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洞窟に棲むコウモリのフンから集めたミクロの強壮剤

2皿目。

雲南省の洞窟に棲息するコウモリのフンを集めてきて、それを絹の布にくるみ、土砂から砂金を選び出すように丹念に洗い続ける。やがて余分なものは流され、あとに黒ゴマよりも微小な点々がこびりついている。この点々こそ、前夜コウモリが夜空を飛び回って食べまくった蚊の大群の、消化されなかった目玉である。

なんと、蚊の眼球ですゾ。眼球は消化されずに排泄される、これが猛烈な強壮剤になるというミクロを発見した人もすごいが、その超微粒を集めて、ミンクの生殖腺から採れるわずかな油で細心に妙め、塩をふり、カナッペにして常食していた江儀の執念のほうが、もっとすごい。

足の裏といい、蚊の目玉のキャビアといい、千鳥の卵といい、バレバラスのひと振りが絶対だという。男たちの強さに対するあこがれと涙ぐましい努力の数々。

(本文は、昭和58年4月12日刊『美食・大食家びっくり事典』からの抜粋です)

『美食・大食家びっくり事典』夏坂健(講談社)

夏坂健

1936(昭和9)年、横浜市生まれ。2000(平成12)年1月19日逝去。共同通信記者、月刊ペン編集長を経て、作家活動に入る。食、ゴルフのエッセイ、ノンフィクション、翻訳に多くの名著を残した。その百科事典的ウンチクの広さと深さは通信社の特派員時代に培われたもの。著書に、『ゴルファーを笑え!』『地球ゴルフ倶楽部』『ゴルフを以って人を観ん』『ゴルフの神様』『ゴルフの処方箋』『美食・大食家びっくり事典』など多数。

  

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おとなの週末Web編集部 今井
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