「アンパンマン」が誕生して、2023年で50年を迎えました。「アンパンマン」の”はじまり”がわかる「絵本『あんぱんまん』〜はじまりのアンパンマン〜」展が、同年9月24日まで東京文京区の印刷博物館P&Pギャラリーで開催されています。本展は、原画(複製)を含む約50点の作品とともに、絵に”触れて感じる”印刷の仕掛けや、原画が絵本になっていく工程を紹介しています。やなせたかしさん自筆の編集指示が入った展示もあり、イラストなどの仕事を目指す人にとっても楽しめる空間となっています。入場料は無料なので、夏休みのおでかけや自由研究にもおすすめな貴重な機会です。
”はじまり”はひらがなの『あんぱんまん』
子どもから大人まで広く親しまれている「アンパンマン」は、1973年に幼稚園や保育所を通じて販売されるフレーベル館の月刊絵本「キンダーおはなしえほん」10月号に掲載されたのがはじまりです。その時のタイトルは、カタカナではなくひらがなの『あんぱんまん』でした。その理由は、「幼児向けの絵本」ということからだそうです。
その後、なぜカタカナの表記になったのか。やなせたかしさんは自著(『人生なんて夢だけど』(2005年/フレーベル館)の中で、こう述べています。
「平仮名をなぜ片仮名にしたかといえば、ぼくの子どもの頃はパン屋さんの看板は全部『パン』で、これが強烈にインプットされていて『ぱん』だと違和感があるんですね」
フレーベル館刊行のアンパンマン絵本の累計発行部数は、2018年に8000万部を超えており(アニメイラスト本含む)、今もなおその人気は続いています。
展示は、3章構成。第1章は、絵本『あんぱんまん』の全ページの原画(複製)18点を中心に、「アンパンマン」の原点を紹介しています。物語の内容がわかる文章もあるので、絵本を開いて読んでいるようなワクワク感なども楽しめます。
最初の『あんぱんまん』と今のアンパンマンを見比べると、人間味にややリアル感がある印象です…。
第2章では、絵本の原画と絵本製作の裏側を紹介しています。絵本ができていく工程がわかる展示の説明には、漢字にふりがながふってあるので、イラストの多い教科書のようにわかりやすくなっています。文字位置の修正前、修正後など比較してみることができるので、さらに理解が深まります。
第3章では、絵本をより楽しくする”印刷の仕掛け”に触れて体感できるようになっています。何気なく触れてきた絵本の”仕掛け”の、不思議な印刷方法がわかります。