新横浜ラーメン博物館10周年で、念願の出店
新横浜ラーメン博物館がオープンする前、博多代表として「ふくちゃんラーメン」、「八ちゃんラーメン」、「一風堂」といった店舗が候補として挙がっていました。
誘致活動を始めた1992年頃、博多で圧倒的に支持を受けていたのは当時百道にあった「ふくちゃんラーメン」でした。ただその当時、あまりにも忙しく、話をする時間もほとんどない状況でした。
そして2003年頃、再度ふくちゃんラーメンにアプローチをかけました。その時一番興味を持ってくれたのが順伸さんご夫婦でした。ただ、代替わりしたばかりの本店も忙しく、人を出す余裕がありません。
そんな中、順伸さんが倒れ、母への負担が大きくなるのを見かねて、数年前に福岡に戻っていた次女の伸江さんは念願であった自分の店(喫茶店)をオープンし、週末だけ、ふくちゃんラーメンを手伝っていました。
伸江さんの人柄から喫茶店は徐々に常連さんが付きはじめ、経営は軌道に乗り始めていました。
出店の話が進むに連れ、人の問題で家族は悩んでいました。母親としては、今まで苦労して自分の店を持った娘に対して「横浜へ行ってくれ」とはどうしても言えませんでした。
しかし伸江さんはお母さんの表情から「自分に横浜に行ってほしい」というのがすぐ分かりました。相当悩んだ末に伸江さんは自分の店を閉めて、横浜に行く事を決心しました。「今までお母さんには迷惑ばかりかけました。あそこまで困っているお母さんを見て、安心させてあげたかった」伸江さんの想いはそれだけでした。
こうして2004年8月、ラー博10周年の年に、念願のふくちゃんラーメンがオープンしました。
素通りさせないふくちゃんの味
【博多本来の中細麺】
一般的に九州のラーメンは極細であるという認識をもたれているのですが、それは替え玉の発祥である長浜の流れを汲むラーメン店がそうであり、本来博多の麺は長浜より少し太い麺が昔から使われていました。ふくちゃんラーメンの麺はその昔ながらの博多の麺を使用。麺は低加水(小麦に加える水の量が少ない)のため、濃厚なスープを吸い込み相性は抜群です。
【その後のラーメン店に影響を及ぼすスープ】
スープに使われる食材は創業以来、豚頭のみ。本来単一の食材のみで作られるスープはどうしても臭みがでるものですが、ふくちゃんラーメンのスープは臭みがなく且つコクがあります。
その秘密は「熟したスープ」と「新しいスープ」とのブレンドでした。「新しいスープ」にはキレはあるが、コクがない。そのコクを引き出すのが「熟したスープ」なのです。
【進化し続ける秘伝のタレ】
一般的な博多ラーメンのタレは塩ダレ又は薄口醤油で味付けされているのに対し、ふくちゃんラーメンのタレは「濃い口醤油」と「うま口醤油」をブレンドしたものに、和風素材や数10種類の香辛料が加えられています。
そのため一般的な博多ラーメンと比べると、醤油感が強く感じるのですが、ブレンドされた濃厚なスープがその醤油感をマスキングするため、なんとも言えぬ絶妙な風味と味わいを醸し出しているのです。