杜氏の晩酌

醸造のプロ「杜氏」は酒をどう飲む?鳥取『諏訪酒造』編「食を選ばない『諏訪泉』を燗でゆっくりと」

酒の造り手だって、そりゃ酒を飲む。誰よりもその酒のことを知り、我が子のように愛する醸造のプロ「杜氏」は、一体どのように呑んでいるのか?杜氏と社長が二人三脚で醸す味わい深い酒は、温めることで真価を発揮し、魚介、きのこ、肉、…

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酒の造り手だって、そりゃ酒を飲む。誰よりもその酒のことを知り、我が子のように愛する醸造のプロ「杜氏」は、一体どのように呑んでいるのか?杜氏と社長が二人三脚で醸す味わい深い酒は、温めることで真価を発揮し、魚介、きのこ、肉、チーズと食を選ばない。これぞザ・食中酒だ。

鳥取県『諏訪酒造』

【白間恭司氏】

『諏訪酒造』の杜氏、白間恭司氏

1959年、鳥取県生まれ。JAを経て、1994年に諏訪酒造入社。長年杜氏を務めた鳴川喜三氏の薫陶を受ける。2006年に杜氏就任。鳴川氏の「天のない酒造り」(酒造りには完成はない)の言葉を胸に取り組んでいる。

一年中、燗をつけてゆっくりと

「うちの酒は燗にして旨くなるように造られています。純米酒なら70℃近く、吟醸系なら45℃くらいに一度温めてから、冷めていくところを酌む」と杜氏は言った。「諏訪泉」を醸す諏訪酒造の杜氏・白間恭司さんだ。1月初めから3月までの造りの期間、白間さんは蔵人と共に泊まり込みになる。賄い作りは料理好きの白間さんが買って出る。

「魚が多いですね。カンパチや鯛を1本買って、お造りや煮付けにしたり。調理は決まってビールを飲みながら。出来上がったら、燗酒と共にゆっくりと味わいます」元々の家業である酒米とブドウの農業を奥さんと共に営み、夏野菜や豆類の自家栽培にも精を出す。「山菜や旬の野菜は最高の肴。ナスの油炒めとうちの酒は相性いいと思いますわ」と胸を張る。

“日本酒の生き字引”がつける燗酒と佳肴を味わいたわいない話をする幸せ

JAの職員だった白間さんは、趣味の釣りをもっと楽しみたいと、夏場に時間が自由になる日本酒蔵に転職。とりわけ大好きな鮎釣りと、これまた目がない酒を造る仕事が暮らしの両輪になっている。この日は、諏訪酒造COOの東田雅彦さんと行きつけの店へ。蔵のほど近くにある『うどん家&真菜板』だ。“真菜板”と聞いてピンときた日本酒ファンも多いだろう。

東京・高田馬場で人気を博した銘酒居酒屋がこの地に移転開業していたのだ。店主は日本酒の生き字引とも言われる杉田衛保さん。「後期高齢者になってからのIターン開業ですからね、みんな驚かれましたよ。東京とは違ったゆったりした時間の中で楽しんでいます」と杉田さんは笑い、鳥取県産山田錦のみで醸した「諏訪泉田中農場」の燗をふたりに注ぐ。肴は真鯵のなめろうや炙り〆さばの他、東京時代から人気の発酵バターとバゲットなどの皿が並ぶ。

『うどん家&真菜板』旬の魚のお造りからグラタンまで、ジャンルにこだわらず熟成酒や無濾過生原酒との相性抜群のつまみが並ぶ。〆の定番、発酵バターをたっぷり使っためんたい焼きうどんも絶品

「諏訪泉」は80年代初頭に居酒屋を始めた頃から扱っている、杉田さんのお気に入りの銘柄。今こうしてその蔵元と杜氏と、地元の仲間として酒を酌み交わしているのだから、なんとも不思議な縁だ。やはりハゼ釣りが好きだという東田さん。話は海釣りから川釣りへ移り、そして、きのこ、山菜へと山深く分け入っていく。山国・智頭町の夜は静かに更けていった。

『諏訪酒造(株)』@鳥取県

1859年に旅館を母体に創業。県内産の酒造好適米・玉栄を中心に、千代川の伏流水を汲み上げて醸す。熟成感のある旨みたっぷりの純米酒がメイン。代表銘柄「諏訪泉」は「鵬」「満点星」など多彩なラインナップ。

【純米吟醸 杉の雫 きのこブーケラベル】

『諏訪酒造(株)』の「純米吟醸 杉の雫 きのこブーケラベル」

【純米酒 うさぎラベル】

『諏訪酒造(株)』の「純米酒 うさぎラベル」
『諏訪酒造(株)』

『うどん家&真菜板』

『うどん家&真菜板』

[住所]鳥取県八頭郡智頭町智頭1642-37
[電話]090-9204-3380
[営業時間]11時半〜13時半(LO)、17時〜21時(LO)
[交通]JR智頭線ほか智頭駅から徒歩3分

撮影/松村隆史、取材/渡辺高

2023年9月号

※2023年9月号発売時点の情報です。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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