「独学力」向上!トレーニング受験理論

アインシュタインは数学の落ちこぼれ?学力だけじゃない、受験に大切なモノ

トレーニング受験理論

「受験は競争、受験生もアスリート」。トレーナー的な観点から、理にかなった自学自習で結果を出す「独学力」を、エピソードを交えながら手ほどきします。名付けて「トレーニング受験理論」。その算数・数学編です。第19回では、ドイツ…

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「受験は競争、受験生もアスリート」。トレーナー的な観点から、理にかなった自学自習で結果を出す「独学力」を、エピソードを交えながら手ほどきします。名付けて「トレーニング受験理論」。その算数・数学編です。第19回では、ドイツ生まれの理論物理学者、アルベルト・アインシュタイン(1879~1955年)のエピソードから、「得点力」について考えます。

「学力がある」と「テストで点が取れる」はイコールではない

アインシュタインと言えば、その名を知らない者がいない天才物理学者ですが、実は数学が出来なかったという説があるのをご存じでしょうか。こう聞けば多くの方がびっくりすることでしょう。ただしこれは学校での成績の話です。アインシュタインは幼少期には言語能力に難があり、計算ミスも多かったと言われています。そのため、学校のテストでは良い点数が取れないことがあったようです。

アインシュタイン

一方で、数学には子どもの頃から異才を発揮していたという反対のエピソードもあります。9歳でピタゴラスの定理を自力で証明し、12歳でユークリッド幾何学や微分積分額を独学で習得したと言われています。また、有名な相対性理論を打ち立てましたが、それは非常に難解な数学を必要とします。したがってアインシュタインが高度な数学力の持ち主だったことは間違いないでしょう。

このエピソードは、非常に大事なことを教えてくれます。つまり、数学の力があるからと言って、必ずしもテストで良い点を取れるわけではないということです。

「えっ、学力があれば点数がとれるんじゃないの?」

そんな声が聞こえてきそうです。

もちろん、基本的にはそのとおりです。つまり、得点力は学力がベースとなります。しかし、学力がそのまま正確に得点に反映されるわけではありません。得点には学力以外の要素も絡んでくるのです。もし学力を上げるのに限界を感じ、点数が伸び悩んでいるのなら、得点力を上げる工夫をする必要があります。

学力だけでなぜ足りない?

ここでは数学の「学力」を『定義・定理・公式などの基本事項を理解して身に付けており、問題を解くことができる力』、「得点力」を『試験で高得点を取れる力』と定義しておきます。

なぜ学力と得点力に違いが生じるのでしょうか。それは以下のような理由によります。

・試験には制限時間がある
難解な問題を何時間かけてでも解く力は、立派な学力だと思いますし、もし数学者の道に進むなら、そのような力は必須ではないかと思います。しかし、試験は決められた時間内で点数を競うものです。したがって、処理の速さや要領の良さなどの影響も大きく、それが得点力につながります。

・試験では計算力が重要
計算力も数学力の一部ですが、それは学力というより、むしろ必要な道具です。言語に似ています。言語を話すだけなら子供でもできますが、それで文章能力があるわけではありません。数学でも、議論を進めるのに計算が必要ですが、計算能力がいくら優れていたとしても、それで高度な理論を展開したり、難解な理論を理解したりできるわけではありません。計算はコンピュータに任せればよいと考える人もいます。

しかし、得点力においては、速く正確な計算力は重要な力です。試験では、計算を間違えば大きく失点します。考えが合っていても、計算ミスがあれば、まったく解けない人と同じ結果(点数)となりかねません。また、計算が速ければ、より多くの問題を解き進めることが出来ます。

・試験は対策次第で点数を上げられる
同じ生徒でも、試験の方式(記述式かマーク式かなど)、出題構成、傾向を熟知しているかどうかなどによって点数が変わります。つまり、学力は変わらなくても、試験への対策を講じることで、得点力は上がります。また、山を張る(どの問題が出るかを予想する)のがうまい人は、それによって実力以上の点数を取れることもしばしばあります。

「学力がある」ことが、試験での高得点につながるとは限らない

得点力を上げる「6つ」の注意点

もし子どもさんが、「勉強はしているし、理解もしているようだけど、いまひとつ点数が伸びない」と思われるなら、得点力を上げる以下のような工夫が必要かもしれません。

(1)計算ミスやケアレス・ミスを防ぐ
得点力を上げるためにまず一番に挙げたいのが、計算力をつけること、ミスによる失点を防ぐことです。失点を防げたら、それは得点したことと同じです。経験上、試験では先を急いで解くよりも、ミスがないように解き進めるほうが点数はとれることが多いです。計算ミスを0にすることは可能です。そのためには、計算をしたら必ず検算を行うことです。普段から習慣づけることで、短時間で行えるようになります。

(2)問題の選択眼を磨く
試験のときに、どの問題から解くかを見抜く力は大事です。その選択を間違えると、解けたはずの問題に時間が充てられず、大きく失点をすることがあります。試験においてある程度問題に取り組んでみて、ひっかかった場合や時間がかかりそうな場合は、あまり時間をかけずに別の問題に移ります。一通りすべての問題に取り組んだ後で、残り時間をどの問題に充てるかを考えながら、少しでも多く解けるようにします。最初から順番通りに問題に取り組まないと気が済まない生徒さんもいますが、その癖はなるべく直した方が良いでしょう。「解けそうな問題から取り組む」が鉄則です。

(3)試験の傾向を分析し、その傾向に慣れ親しんでおく
試験の傾向や問題構成に慣れ親しんでいるかどうかで点数は大きく違ってきます。受験の場合、過去問を数多く解いて、傾向を熟知し、その傾向に絞った学習をすることで、その学校の試験の得点力を上げることが可能です。

(4)答案は必要最小限に
証明問題の場合、試験では問題集のような答案を書く必要はありません。必要なものは盛り込まなければなりませんが、それは最小限に絞りましょう。試験のときだけそのような答案を作ることは出来ませんので、普段からそれを意識して学習することが必要です。先生の模範解答や、数学の成績の良い友人の答案を参考にしましょう。

(5)答案はある程度見通しが立ってから書き始める
どのようにすれば解けるかまだ出口が見えていないのに、解答用紙に答案を書き始める人がいます。少しでも時間短縮を図りたいと考えてのことでしょうが、方針が異なっていた場合、それまで書いた答案を消して書き直すのは大きな時間的ロスとなります。また、解答できたとしても、冗長な答案になる可能性があります。

(6)1点でも多くとろうという気迫が大事
入試は1点で合否が分かれます。私が受け持った生徒の中には、東大入試で合格ラインに1、2点足りずに落ちた受験生も実際にいました。完答出来なくても、部分点を狙って、途中まででも書いておく、方針だけでも書いておくといったあがきが大事です。また、うまい方法が思いつかなければ、膨大な計算を行って力ずくで解く、といった泥臭い方法をとってでも点を取ろうとする努力が大事です。

試験で点数を取れない学力以外の原因として、緊張や焦りで実力を発揮し切れないといったメンタル面に問題があるケースもあります。その原因と対策は人によってことなりますが、模試をたくさん受けて試験慣れしておくことは必要です。

いずれの場合でも、普段の学習において、実際の試験を想定して問題を解くことが大事です。

得点力が大切

【トレーニング受験理論とは】
一流アスリートには常に優秀なトレーナーが寄り添います。近年はトレーニング理論が発達し、プロアスリートやオリンピック・メダリストはプロトレーナーから的確な指導を受けるのが常識。理論的背景のない我流のトレーニングでは、厳しい競技の世界で勝ち抜けないからです。自学自習が勉強時間の大半を占める受験も同様です。自学自習のやり方で学力に大きな差が出るのに、ほとんどが生徒自身に任されて我流で行われているのが実情です。トレーナーのように受験生の“伴走者”となり、適切な助言を与えながら、自学自習の力=独学力を高めていく学習法です。

圓岡太治(まるおか・たいじ)
三井能力開発研究所代表取締役。鹿児島県生まれ。小学5年の夏休みに塾に入り、周囲に流される形で中学受験。「今が一番脳が発達する時期だから、今のうちに勉強しておけよ!」という先生の言葉に踊らされ、毎晩夜中の2時、3時まで猛勉強。視力が1.5から0.8に急低下するのに反比例して成績は上昇。私立中高一貫校のラ・サール学園に入学、東京大学理科I類に現役合格。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。大学在学中にアルバイト先の塾長が、成績不振の生徒たちの成績を驚異的に伸ばし、医学部や東大などの難関校に合格させるのを目の当たりにし、将来教育事業を行うことを志す。大学院修了後、シンクタンク勤務を経て独立。個別指導塾を設立し、小中高生の学習指導を開始。落ちこぼれから難関校受験生まで、指導歴20年以上。「どこよりも結果を出す」をモットーに、成績不振の生徒の成績を短期間で上げることに情熱を燃やし、学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて難関大学に現役合格した実話「ビリギャル」並みの成果を連発。小中高生を勉強の苦しみから解放すべく、従来にない切り口での学習法教授に奮闘中。

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