回転寿司では大人気だが、江戸前では扱われることの少なかった寿司ネタ“サーモン”。しかしここ数年、サーモンを扱う江戸前寿司店が増えてきている。その理由、そしてサーモンの魅力について徹底調査!
回転寿司で人気を博し、ついに江戸前のカウンターにまで
「サーモン?子どもじゃあるまいし、寿司屋でそんなもん頼めるか!」なんてコンサバな台詞を吐いていた御仁もいるかと思うが、いまやすっかり市民権を得た寿司ネタ、サーモン。回転寿司に限らず、近頃は老舗の江戸前寿司店でもちゃんと仕入れて握ってくれる店が増えている。
「どういう仕事をしてやるかは店によると思いますが、くどくない脂が魅力ですし、今は他のネタと区別なく考えてますよ」とは、『都寿司』の5代目主人・山縣さん。日本橋で続く老舗江戸前寿司だ。ネタケースの中のサーモンは、しっとりきれいなオレンジ色で頼む前から旨そうだ。生で入荷されるノルウェーサーモンには“鮮度のよさ”も感じるそう。ものが年々よくなって先代が入れ始めたという。
そもそも江戸前の寿司ネタになぜサーモンはなかったのか。ひとつは天然の鮭(サーモン)には寄生虫がいることが多いから。もうひとつは、鮭はそもそも江戸前=東京湾近辺で獲れる魚じゃないし、国産・天然モノこそ上等ってこだわりがずっとあったからだ。それを覆したのが養殖された輸入サーモン。特に、質量ともに評価されているのがノルウエー産のアトランティック・サーモンだ。
ノルウェーから日本へ、サーモンが紹介されたのは1980年代から。海洋養殖され食用として安全基準を満たしたサーモンは生食もOKだ。最初から受け入れられたわけではないが、この40年で品質はアップしている。冷たく澄んだ海中を自由に動き回れる生育環境。清潔で高品質な餌。伝統的な知見と科学的なアプローチ……。ご存知の通り最初にサーモンが定着したのは回転寿司。現在はマグロと1、2位を争う人気ネタだ。
そんな中でもノルウェーサーモンのトップブランド「オーロラサーモン」を15年前から扱っているのが『すし銚子丸』だ。「ノルウェーの中でもより北の、北極圏海域で通常より2割増しの時間をかけて成長し、脂がのりながら身質がしまっています。それが水揚げから48時間で生のまま氷詰めで成田に届くんです」とは、同社経営戦略室の下公祐ニさんの話だ。
それも生産者、輸入商社、荷受会社との連携があってこそだという。豊洲市場でサーモンを扱う水産仲卸『山治』の山﨑康弘社長にも話を聞いた。「実際に食べ比べて、色味が良くて、甘みが強くて、餌臭さのないものがいいサーモン。餌に天然資料を使い、出荷前にエビを食べさすとか、技術革新も年々進んでいます。私たち魚河岸の人間も変わっていかないとね」