フィッツジェラルドが好きな作家の筆頭に挙げた
食の決闘噺に始まって、料理女を雇う場合の心得まで書き残したモンスレーの作品を、誰よりも愛し、理解したのは、ヘミングウェイ、フォークナー、スタインベックと並ぶ今世紀のアメリカが生んだ文豪、スコット・フィッツジェラルドである。彼はいつも好きな作家の筆頭にモンスレーの名をあげていた。
ちなみに、モンスレーのいう「料理女を雇う場合の心得」を紹介しておこう。
『唇は厚く、首は太く、肩はたくましく、両の乳房は破裂するほど盛りあがり、うしろから見たとき二匹の牛が並んで行進するかの如き臀部を有し、ぽってりと肉厚の手の指が愛らしくもよく動き、無口だが、時折発する声の見事に大きくて、目の小さな女』
これが、料理のうまい女性の理想像だというから恐れ入る。
試しに部分を集めてイメージを構築してみると、どこがどうとうまく説明できないが、
「なるほど! さすがッ」
と捻らせる観察の妙があるではないか。
(本文は、昭和58年4月12日刊『美食・大食家びっくり事典』からの抜粋です)
夏坂健
1934(昭和9)年、横浜市生まれ。2000(平成12)年1月19日逝去。共同通信記者、月刊ペン編集長を経て、作家活動に入る。食、ゴルフのエッセイ、ノンフィクション、翻訳に多くの名著を残した。その百科事典的ウンチクの広さと深さは通信社の特派員時代に培われたもの。著書に、『ゴルファーを笑え!』『地球ゴルフ倶楽部』『ゴルフを以って人を観ん』『ゴルフの神様』『ゴルフの処方箋』『美食・大食家びっくり事典』など多数。
Adobe Stock(トップ画像:OLKS_AI@Adobe Stock)