廃棄物が作品に!サステナブルな参加型アート「副産物自販機」
「シーサイドエリア」に足を運んだら、「熱海銀座通り商店街」の一角にあるポップな「副産物自動販売機」に注目してみよう。これは、アトリエから出る魅力的な廃材を”副産物”と呼び、回収・販売する資材循環プロジェクト「副産物産店」を展開する矢津吉隆さんと山田毅さんのふたりによる作品である。
今回は、熱海で拾った魅力的な廃材や廃景マップなどを”副産物”とし、オリジナルのケースとともに販売。
実際に「副産物自動販売機」に300円を入れると、誰でも購入ができる参加型アートとなっている。
何気ない街の廃材を掬い上げ、新たな視点で価値を生み出した同作品は、まさに今の時代らしいサステナブルなアートと言えるだろう。
「時代によって変化する廃材は、街の新陳代謝を表すものでもありますよね。そこに面白さを見いだせたらと思っています」と、「副産物産店」の山田さん。
かつての赤線地帯には「遊女」をテーマにした作品も
街中のアートとしては、小さな飲食店が軒を連ねる中央町の「中央町6-4建物」に展示された「羽化と孵化」も見逃せない。この辺一帯は、かつて赤線地帯として女性を求める遊客で賑わっていたそうだ。今回は作家のみょうじなまえさんが、そんな元遊郭の建物を舞台にしたインスタレーション(空間展示)を展開している。
作品内では、性役割から解き放たれた遊女を「蝶」として表現。1950年に熱海の温泉街を焼き尽くした「熱海大火」と、その事件を期に遊女という立場やこの建物から逃れた女性たちのストーリーを繋げ、ひとつの物語として昇華している。
部屋には「はたして自分は蝶になった夢をみていたのか、それとも夢でみた蝶こそが本来の自分であって、今の自分は蝶が見ている夢なのか」と、中国・戦国時代の思想家、荘子の説話「胡蝶の夢」を読み上げる音声が流れ、当時の女性が遊女として生きることの葛藤やこの地が持つ遊郭としての歴史を振り返るきっかけを与えてくれる。
ARでアートが目の前に!
熱海市内の温泉にまつわる7つのスポットに設置された「AR湯巡りスタンプラリー」にも目を向けてみよう。
スマートフォンで掲示されているORコードをスキャンすることで、目の前の景色に出現する拡張現実のアートが楽しめるというものだ。視聴後にスタンプが自動押印されるので、会場を巡ってオリジナルグッズをゲットしよう。
パワーアップした芸術祭を通して、今まで知らなかった温泉街の魅力を、ぜひあなたなりに発見してみてほしい。
文・写真/中村友美
◆ATAMI ART GRANT 2023
【開催期間】2023年11月18日(土)〜12月17日(日)11時00分〜18時00分(17時00分受付終了)
【休催日】月・火
【会場】ATAMI ART VILLAGE/ACAO FOREST/NOT A GALLERY/薬膳喫茶gekiyaku/その他、熱海市内
【料金】一般当日(会期中)3000円
大学生・高校生・専門学生・中学生料金/当日(会期中)2500円
HP:https://atamiartgrant.com/