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A定食が500円???こんな安くていいの?

さぁいよいよ、そろそろグルメに移りますか。歩いている途中でステーキ屋やラーメン店を見掛けたし、小島新田駅脇の商店街にもランチ居酒屋があったけど、私の腹は既にほぼ決まってた。

バスに乗ってる最中、「大師河原」停留所で降りる直前に、国道409号沿いに定食屋が見えたんですよ。さっと通り過ぎてしまったんだけど、店の前には人だかりが出来てた。

鉄路で来てたら見つけてなかったかも知れない。バスで来たからこそ出会うことができた、やはりそういう店こそ「路線バスグルメ」に相応しい。

てなわけで、行ってみました。定食屋『食堂ぺーちゃん』。もうこの店構えですからね。惹かれずにはいられない。

食堂ぺーちゃん

中はL字形カウンターと、2人掛けテーブルが2つだけ、という小ぢんまりした店内。夫婦らしきオッチャン、オバチャンで切り盛りしてた。こういうアットホームな雰囲気、大好き!

うどんやそば、丼ものなどがあるのは、表の看板などで分かってたけど、カウンターに置かれたメニューを見てみて、ビックリ。A定食500円なんて表示がいきなり目に飛び込んで来る。他にも豚丼500円、とんかつ定食650円などなどという驚異の安さが、ズラリ。

でももうここは、迷いはありませんでした。

A定食を注文。すると、出て来たのが、これですよ。コロッケに鶏唐4つ、たっぷりの刻みキャベツにお新香(大根の漬物)にご飯と味噌汁という充実っぷり。これで500円でいいの!? ここ、やって行けるの?? と余計なお世話的感慨さえ湧いてしまう。

食堂ぺーちゃんのA定食

唐揚げ、コロッケ、合間にご飯という“口福”

さぁこれだけおかずが充実してると、食べ進むのも楽しい。まずはコロッケにとんかつソース。次いで唐揚げには、2個に醤油、2個にソース、と掛け分ける。キャベツにも、マヨネーズというテもあったけど、敢えてドレッシングで挑んでみました。調味料も多種多様に揃えてあるので、こんな楽しみ方もできるのです(笑)。唐揚げを一口、コロッケを一齧り、合間にご飯を挟みながら、箸休めにお新香……という風に食べ進む。

あぁ、美味しい。そして、嬉しい。500円でこんな贅沢なひと時!

午後1時をとっくに過ぎてるのにお客の入りは途切れることなく、むしろ増えて行って、カウンターは満席になった。比較的時間に自由の効くトラックの運転手さんが多いみたいだけど、いかにも体育会系の、体格のいい大学生の姿もあった。

12時からのお昼時には工場で働く人達が押し掛けて、もっとてんやわんやになるんだろうなぁ。彼らの胃袋を満たし、働く気力を奮い立たせているのであろう、お店。日本の経済はこんなところから力の源を得ているのですね。そんなことにまで思いを馳せる取材になりました。

食堂ぺーちゃん

「川崎編」では取り敢えず3回、駅より海側の方を回ってみました。

ちょっと時間を頂いて、次は内陸側の方を巡ってみたいと思います。それまで少々、お待ち下さい。

西村健
にしむら・けん。1965年、福岡県福岡市生まれ。6歳から同県大牟田市で育つ。東京大学工学部卒。労働省(現・厚生労働省)に勤務後、フリーライターに。96年に『ビンゴ』で作家デビュー。2021年で作家生活25周年を迎えた。05年『劫火』、10年『残火』で日本冒険小説協会大賞。11年、地元の炭鉱の町・大牟田を舞台にした『地の底のヤマ』で日本冒険小説協会大賞を受賞し、12年には同作で吉川英治文学新人賞。14年には『ヤマの疾風』で大藪春彦賞に輝いた。他の著書に『光陰の刃』『バスを待つ男』『バスへ誘う男』『目撃』、雑誌記者として奔走した自身の経験が生んだ渾身の力作長編『激震』(講談社)など。2023年1月下旬、人気シリーズ最新作『バスに集う人々』(実業之日本社)を刊行。

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