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ウイスキーの香りがするユニークなシードル

ユニークだったのは、「中田農園」の「MOZU Nakata Orchard Cider」だ。中田農園の中田修弘(のぶひろ)さん(46)によると、「紅玉とトキを使い、酸味が際立った味。ウイスキーの香りもほのかにします」という。醸造工程の中で、香りづけとして、ウイスキー樽のオークチップを入れたことで実現した。オークチップを入れるのは、クラフトビールでも行われている。青森県では中田農園の商品だけという。

味わってみると、微かにウイスキーのニュアンスを感じる。おもしろい。好きな味だ。アルコール度数は、シードルの中ではかなり高めの8%。ビールのIPAほどもある。じっくり舌でころがしながら、楽しみたい逸品だ。

中田さんは、弘前市内のりんご農家の長男に生まれ、高校卒業後に上京。さまざまな職業を経験し、タイで暮らしたこともある。高校時代はバンド活動に打ち込んだ。父親が亡くなったことで、30代で実家に戻り、りんご農園を手伝い始めたが、2018年に鹿児島に転居。放牧養豚の仕事に就くが、2年後に再びUターンした。実家を継いで、2021年2月に中田農園を開業し、2022年8月から、「MOZU Nakata Orchard Cider」を販売している。

飲んだシードルは、どれも味わいが豊かで、シードル文化の奥深さを実感させてくれる逸品ばかりだった。

クラフトシードル

太宰治が飲んだ「リンゴ酒」とはシードルか?

味わったクラフトシードルの業者のひとつ、トキあっぷる社(青森県五所川原市)から、2024年3月29日、メールでニュースリリースが届いた。

五所川原市は弘前市の中心部から北に25kmほど。同じ津軽地方に位置する。同市出身の作家、太宰治(1909~48年)の小説『津軽』(1944年)に登場する「リンゴ酒」を再現した「太宰のリンゴ酒」のシリーズ第3弾となる新商品を4月3日から先行販売するという。

「太宰が飲んだとされる “リンゴ酒”がどんなものだったのか?に対する答えは、いまだに出ていません。ひょっとすると現代のシードルと同じだった可能性もありますし、まったく異なる味わいだったかもしれません。 “リンゴ酒”を探す旅はまだまだ続くのです」

3月29日にオープンした「太宰のリンゴ酒」ブランドサイトでは、こう説明されている。

日本一のりんご産地・弘前市を含めた一帯で、りんごをもとにした様々な取り組みが始まっている。シードル文化の裾野はさらに広がりをみせている。

文・写真/堀晃和

クラフトシードル
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おとなの週末Web編集部 堀
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