町パンにどっぷり浸かった1ヶ月。最新のおいしいパンならイマドキの店など他にもあります。素朴でさりげない、けれどまた無性に食べたくなるそのあったかい魅力とは?『おとなの週末』スタッフが調査&取材を通じて見えてきた町パンの真実を、ライター池田、市村、井島、藤沢、肥田木、編集武内と戎が語る、出来たてほやほや情報です!
画像ギャラリー「おとなの週末2024年6月号」の取材で、町パンにどっぷり浸かった1ヶ月。最新のおいしいパンならイマドキの店など他にもあります。素朴でさりげない、けれどまた無性に食べたくなるそのあったかい魅力とは?調査&取材を通じて見えてきた町パンの真実を、ライター池田、市村、井島、藤沢、肥田木、編集武内と戎が語ります!
日常の生活を支える町パンの魅力再発見
市「実は私、基本的にはご飯党なのですが、今回改めて町パンっておいしいなぁと思いました。ひとつのパンのジャンルでも店によってこんなに個性があるんだ~と感心。いやぁ、楽しかったです」
池「今まで見逃していた小さな店が結構あって再発見。パン自体のおいしさもさることながら、買い回っている時に店のご主人に話しかけてみると実直なお人柄の方がホント多いんだよね。いろいろな話を聞くのも面白かった」
戎「普段はブーランジェリーやハード系メインの店に行くことが多かった僕としては、もっと町のパン屋さんを利用しなければと思いました」
藤「そう、贅を尽くされたパンもいいけど、昔ながらの惣菜パンを食べるとやっぱこれだなってなりますよね。食べ慣れた味でもあるし、シンプルなおいしさがズドーンとストレートに響く感じがいい」
肥「誤解を恐れずに言えば、高級素材を使い、最新の設備と技で、洗練されたパンを焼くイマドキの店と比べたら味わいが違うのは当然。でもそんな店は値段も高く、いわばハレの日のパンだよね。おいしいけど毎日は買えない。あ、原稿料10倍アップしてくれたら買いまくるけど(笑)」
武「対して町パンは毎日買える価格帯で日常に寄り添ってくれる存在。店の人の温かさも大きいですよね。そういう意味でも庶民の味方です」
戎「みなさんの原稿を読んでいてもホロッときましたよ。いいなぁ、この昭和な感じの温かさ、今のニッポンに失われつつあるなぁって(涙)」
池「どした、エビー(笑)」
戎「いやいや、GW進行の忙しさで身も心もボロボロになっている中、取材や調査に駆け回りながら、あぁいい店、あぁ仕事辛い、あぁいいご主人……の繰り返しだったんで。もう躁鬱状態でしたぁ」
肥「確かに日に日にやつれていく感じがしてたよ(笑)。戎クン、よくがんばった!」
井「でも今回は町パンの定義について考えましたー。私にとって町パンとは毎日行きたくなる店。何を食べようかなとワクワクさせてくれる店。もちろん値段が高くないことも大事で、そうなれば地元の人は通うから自然と暮らしに根付く。古いとか新しいとか関係なく、そんな店がいい町パンなんじゃないかな」
藤「確かに、私が取材した『イトウベーカリー』も創業6年目と若めだけど、町への馴染み方がすごい。コロッケパンとか日常に馴染む庶民的な味が多いから、新しくても町のパン屋さんとして受け入れられているのかも」
基本を誠実に守り 心を込めた味が魅力
池「その地域に馴染むよう努力してる店も多いよね。以前は都心部の店で働いていたという『ブロートヴァルム』のご主人はもともとフランスパンとかデニッシュが得意。最初はそれらを提供してたけど、中板橋という土地柄か受けなかったそう。今ではもっと庶民的な、ちょっと甘めの生地を使ったパンにシフトして地元に愛されてる」
肥「あと、取材でよく言われたのは『うちは特別なことはしてませんよ。これしかできないし、基本を守り普通に作ってるだけですよ』という言葉。店の歴史や味を声高に誇示することなく、謙遜されるんだよね。毎日普通においしいパンを作っていることがすごいのに。もっと私も謙虚にならないと。さっきの原稿料10倍アップして……の件、前言撤回。5倍でいいや」
池「全然反省してない(笑)。でもそうだよね、いい意味で“普通に”を大切にしてる。大事な材料をちょっと減らしたり、楽な方法に変えたりすると“らしきもの”になって普通じゃなくなってしまうそう。基本に忠実に、手を抜かずに、気持ちを込めて作り続けている店のパンはやっぱりおいしいんだよなあ」
武「だからこそ、あんぱんだけが飛び抜けておいしい、サンドイッチだけが素晴らしいということはなく、何かひとつがおいしい店は全部良かった。なのでジャンル別の店選びも困ってしまいました」
市「本当です。私の担当だと『ナカヤ』や『ベーカリー花火』などは全部おいしかった。前者はホスピタリティも素敵で、調査時にコソコソ写真を撮ったり、やたら長居する怪しい私にもやさしかったです(笑)。後者の店主は料理人。最初はパン作りの難しさに頭を抱えていたそうですが、パンも料理と見立てたらイメージが続々湧いてきたと話してました」
武「具も手作りにこだわる店もありますが、取材してみると実はあんぱんのあんは既製品、コロッケも揚げるだけのものを仕入れているという店も多く、ちょっと驚き。おいしい店は具材もすべて自家製と思ってました。結局パンと具材のバランスが大事なのかな。生地の甘さだったり食感だったり、みなさん自分が作るパンの特徴を理解した上で、ピッタリ合うあんや揚げ物を厳選している。旨い訳です」
藤「確かにパン作りだけでも大変なのに、高齢の夫婦で経営している店だったりすると具材も全部手作りにするのは難しいかもしれませんね」
味を守り次へ繋ぐ町パンにドラマあり
市「パン屋さんは朝が早いし、体を使う重労働だし、気象条件にも味が影響します。今は原材料の高騰もすごいのに、工夫しながらお手頃な値段で提供し続けてくれている。本当に頭が下がるお仕事だと思います。今回調査した中で早い店は朝5時半開店。残念ながら取材NGでしたけど」
井「そうそう、取材拒否も多かったみたいですね。新中野『M』も行列であっという間に売り切れて『追い付かない状態だから』とのことでNG。ここは小ぶりなパンでいろいろ楽しめるし、1個40円や50円とか驚きの安さ。午前中に新中野に行く機会があればぜひ調べて訪ねてほしい」
市「私もご高齢の店主の店から跡取りがいないといった理由で何軒も断られました。でも仕方ないと素直に納得しました。できるだけ長くお元気でおいしいパンを作ってほしいとひたすら願います!」
武「うーん、町中華などと同様ですね。後継者不足もあり、この先、閉店を考えている店も多かったのが残念です」
戎「一方、家業を継いだ若手も。特に3代目としてがんばっている人が目立ちました」
市「一度は他の店で修業して戻ってきて、長く親しまれている店のパンを受け継ぎながら新たな味にも挑戦されている。新規のお客さんも呼び込んで、地域で愛される連鎖をきちんと繋いでいる姿は素晴らしいなぁと感じました」
肥「いい話だね。町パンの店ってドラマがあるんだよね」
藤「そう!『フランダース』も職業体験に訪れた小学生が成長して就職してくれたんですって。今は立派なパン職人。その店のパンを食べて育った子に味が受け継がれていくのって素敵だな」
池「流行りのブーランジェリーやスーパー等に押されて町パンが少なくなってる今、もっと応援していきたいね」
武「近場のコンビニもいいけど、少し離れた町パンの店に散歩感覚で出かけて各店こだわりの味を楽しんでほしい。いやあ、でも今回も食べ比べ軒数が多く、また太った」
肥「だね、発酵したパンみたいに体が膨らんでる(笑)」
戎「そんな汗と涙の特集で町パンに注目が集まったら、これほどうれしいことはありません。存在は知っていても入ったことがない店があればぜひ行ってみて。やさしい気持ちになれますよ!」
撮影/鵜澤昭彦(イトウベーカリー)、小島昇(ベーカリー花火)、鵜澤昭彦(フランダース)、文/肥田木奈々
※2024年6月号発売時点の情報です。
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