審査員えびすが印象に残った料理9品
ここからは、審査で食べた中で印象的だった料理をご紹介します。料理全品は画像ギャラリーをご覧ください。わかりやすく、上記で紹介したシェフの順番で紹介しています。実際に食べた順番と異なること、予めご了承ください。
まずは、注目シェフで挙げた丸山千里さんの「なまうま!バーガー」。なんと、生食のハンバーガー! 馬刺しを使用しています。食感を感じやすいよう舌に近い下部に配し、アクセントとなる食材を上部に配置しています。
馬肉のタルタルにごぼうやナッツなどさまざまな食感が楽しめれば、薫香をつけたバンズの香りも芳しい。最後にハラペーニョがガツンときて、余韻もよし。すべてのバランスが絶妙で、後先考えずに完食しそうになりました。発想も味もバッチリの逸品。さすが昨年準優勝者。実力をまざまざと見せつけられました。
続いては、渡部雄シェフの「ゲーンキャオワーンクンバーガー」。バンズを使わず、エビでソースを挟んだ意欲的なハンバーガー。これにより、エビの食感や味わいをダイレクトに味わえる設計になっています。
このソースは、アボカドのグリーンカレーピューレ。ガブッとかじるとグリーンカレーの味が口中に広がります。そこにエビのプリッとした食感が合わさって、得も言われぬ旨さ。隣に添えられたライムをキュッと搾れば、ピリ辛さが収まり、爽やかに。タイ料理好きなので、これは好みの味でした。
「これがツナサンド?」と見た目から驚かされたのが、高木祐輔シェフの「ツナサンド modern2024」。メジマグロを挟むのが、横に添えられた揚げエビ芋。最下層に配された揚げたパンの耳と挟んで食べます。
印象に残ったのが、エビ芋の柔らかさとねっとりした舌触り。メジマグロとの組み合わせで、これまでに感じたことのない食感が生まれます。食材の風味やナンプラーなどの調味料から成る複雑な香りも好印象。「紹興酒ください!」と言いたくなるお味でした。
制限時間の30分でここまで作れるの!? と衝撃を受けた料理が、加藤大貴シェフの「鴨子と土佐文旦の燻製バーガー 2種の中華ソースで」。
ドームに覆われて提供され、外すと燻煙が舞い、香りがぶわっと飛び込みます。蓮の葉の上には、バンズ(葱油餅)、家鴨のミンチで作られるパティ、ポテトなどなど。うーん、情報量が多いぞというのが最初の印象。
こういう料理は見た目先行で終わることがあるのですが、こちらはちゃんと一体感がありました。パティ、ピータンのタルタルソース、甜麺醤のサルサソース、文旦の泡菜といった具材とソースが見事に融合しているのです。パティだけ食べると結構辛かっただけに、余計にそう思えました。
審査中に「お店で出してたら食べに行きたい」と思うことがよくあります。そのひとつが、引地翔悟シェフの「Butter chicken sandwich」。
グレービーソースでフライドチキンをコーティングし、酸味を生かしています。このグレービーソースがバターチキンカレー味なので、サンドイッチなのにご飯がほしくなってしまったほど。スパイスの効かせ方や、赤キャベツをコールスローにする野菜の使い方が絶妙でした。
アプローチから面白かったのが、十文字淳シェフが作った「野菜で魚介類 Burger」。ジャックフルーツという果実でフィレオフィッシュ風のフライを作り、赤玉ねぎとキャベツのアチャール、トマト、アボカド、エリンギのオイルソテーを挟んでいます。
食べるとビックリ。魚を感じるのです。ジャックフルーツ、ホタテのような食感を生み出したエリンギ、恐るべし。ハーブの効かせ方もよかった。
演出に唸ったのが、小西豊シェフの「山賊バーガー〜骨付き猪のパティ・山菜・小芋〜」。出身地の富山の猪肉をバラ肉、脂身、骨、ジュ(肉の焼き汁)とふんだんに使用。
猪の臭みを黒文字やローズマリーの香りをまとわせることでカバーしていて、目を閉じればそこはまるで森の中。「山を感じていただきたい」という思いをしっかりと噛み締めました。あと、パンを一番おいしく感じたのがこの料理でした。
最後は、田中春光シェフの「春、惣菜カステラサンド」。まずカステラサンドというアイデアに驚きましたが、それ以上にカステラがふきのとうのカステラというのにビックリ。
カステラの卵生地で、山菜のケークサレを軽く焼き上げています。そこに、ホタルイカやデコポンといった春の旬食材、白和えを合わせてどこまでも和の風情。カステラなのに甘くないというのが斬新でした。
いろいろ食べてきた終盤に突如としてやってきた衝撃の一品に、ただただたじろぎました。