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「序・破・急」スピードは三段階

調子馬のスピード調節は三段階に分かれている。それを独特な表現で、「序(じょ)、破(は)、急(きゅう)」と表す。騎手は、徐々にスピードを早めていきながら、胸元に畳まれた母衣を後方に向けて引出してゆく。馬の足並みが「急」になるころには、母衣が地面と水平にたなびき、きれいな直線を描くその姿は美しい。2頭が織りなす、まるで母衣が舞い踊るような優美さは圧巻だ。

調子馬は、スピードが上がっても「側対歩」の足並みが変わることはない=2009年9月23日、JRA馬事公苑(東京都世田谷区)

「母衣引」が見られる機会は?

宮内庁が定例的に「母衣引」などの古式馬術を公開することは、残念ながらない。しかし、JRA馬事公苑(東京都世田谷区)で毎年秋分の日に行われる「愛馬の日」というイベントで、ときどき披露されることがある。残念ながら、こうした貴重な機会は毎年行われているわけではなく、宮内庁も馬事公苑側からの依頼を受けて実施しているのが実情だ。ただ、2024(令和6)年は同イベントの開催が予定されているとも聞く。はたして古式馬術を見ることができるのかどうか。実施の場合は、JRA馬事公苑の公式ホームページ(https://jra.jp/facilities/bajikouen/)「イベント情報」に掲載されるので、こちらで確認してほしい。

JRA馬事公苑で行われる「愛馬の日」イベントで、宮内庁の古式馬術は過去に何度か披露されている。はたして2024年はどうなるのか!?=2009年9月23日、JRA馬事公苑(東京都世田谷区)
気迫みなぎる巧みな手綱(たづな)さばきと母衣の動きから目が離せない=2009年9月23日、JRA馬事公苑(東京都世田谷区)

文・写真/工藤直通

くどう・なおみち。日本地方新聞協会皇室担当写真記者。1970年、東京都生まれ。10歳から始めた鉄道写真をきっかけに、中学生の頃より特別列車(お召列車)の撮影を通じて皇室に関心をもつようになる。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物を通じた皇室取材を重ねる。著書に「天皇陛下と皇族方と乗り物と」(講談社ビーシー/講談社)、「天皇陛下と鉄道」(交通新聞社)など。

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