皇室のヒミツ、皇族の素顔

皇室で初めて飛行機に搭乗された方は?皇室の飛行機利用の内情(1)

日本トランスオーシャン航空が運航した特別機。機材はボーイング737-800型機=2018(平成30)年3月28日、与那国空港(沖縄県与那国町)

天皇、皇后両陛下が国内外へお出かけになるときに「航空機」を利用されることがある。行先によって民間機をチャーターすることもあれば、航空自衛隊が所有する政府専用機や警視庁のヘリコプターを使用するなど、ケースバイケースで運航が行われる。皇室チャーター機の内情に迫ってみたい。

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天皇、皇后両陛下が国内外へお出かけになるときに「航空機」を利用されることがある。行先によって民間機をチャーターすることもあれば、航空自衛隊が所有する政府専用機や警視庁のヘリコプターを使用するなど、ケースバイケースで運航が行われる。皇室チャーター機の内情に迫ってみたい。

※トップ画像は、日本トランスオーシャン航空が運航した特別機。機材はボーイング737-800型機=2018(平成30)年3月28日、与那国空港(沖縄県与那国町)

皇室の飛行機利用は1953年から

皇室で初めて飛行機に搭乗したのは、1953(昭和28)年4月に当時は皇太子であった上皇陛下が、欧米旅行の途中、アメリカのサンフランシスコからカナダのビクトリアまでカナダ空軍機に搭乗したのが最初だった。

歴代の天皇として、初めて航空機に搭乗したのは昭和天皇で、1954(昭和29)年8月のことだった。戦後の「全国御巡幸」の締めくくりとして北海道を訪れた昭和天皇と香淳皇后は、帰京の際に千歳空港12:10発→羽田空港14:20着の「日本航空特別機」にご搭乗になった。

この搭乗のきっかけは、1953(昭和28)年に皇太子時代の上皇陛下が英国女王戴冠式からの帰途、「快適な飛行機旅行」を体験され、このことを両親である昭和天皇と香淳皇后に話され、興味をもった昭和天皇の希望により飛行機利用が実現したと伝え聞く。

機材は、DC-6B型機(愛称は「シティ・オブ・トウキョウ」)が選ばれ、搭乗者は当時の天皇、皇后を含む乗客13名と乗務員9名の22名だった。機長と副操縦士は外国人が務め、スチュワーデス(現CA)2名のほか5名の日本人スタッフが機内の接遇を担当した。両陛下の座席(御座所)は、機内後方に2人掛けのシートを向かい合わせにして、中央にテーブルを配置した。機内では昼食を召し上がられているが、メニューは機内食ではなく、宮内庁が機内で調理したサンドイッチやフルーツだった。

お召機は順調に航行し、羽田空港への到着が予定よりも早まったことから、東京上空を2周して皇居の上も飛行したそうで、両陛下は興味深げに窓からの景色を御覧になったそうだ。

北海道を訪ねられた帰路、はじめて飛行機に搭乗された昭和天皇と香淳皇后。日本航空のお召機(特別機)をご利用になった=1954(昭和29)年8月23日、東京国際空港(羽田空港/東京都大田区)、写真提供/日本地方新聞協会

特別機? お召機?

チャーター機として貸切運航される皇室専用の航空機は、「特別機」と呼ばれ、空港業務では「VIPフライト」と隠語で呼ぶこともある。昭和の時代には「お召機」と呼んだこともあったが、現在では聞かなくなった。航空自衛隊が運航する政府専用機も「特別機」と呼ぶが、民間機と異なる点はコールサイン=便名が「ジャパニーズ・エアフォースワン(JAF)」であることくらいだろうか。

1992(平成4)年から2019(平成31)年まで活躍した通称「ジャンボジェット」ボーイング747-47C型機を使用した政府専用機=2005(平成17)年6月26日、東京国際空港VIPスポット(羽田空港/東京都大田区)

海外への公式訪問は基本「政府専用機」

天皇、皇后両陛下の場合、航空機の利用は警備上の理由もあり、原則チャーター機を利用する。一方で、皇后陛下おひと方や、皇嗣同妃両殿下、宮家の方々の場合には、就航する航空会社の定期路線を使用し、必要な座席数を借り上げるので、偶然、同じ飛行機に乗り合わせることもあるわけだ。

海外へは基本、両陛下や皇太子殿下の公式訪問の場合には、航空自衛隊が運航する「政府専用機」を使用する。ところが、使用する空港の滑走路長の関係で、政府専用機を使用することができなかった際には、民間機をチャーターした例もある。皇嗣家や宮家の場合には、国内路線同様に定期就航する航空会社を利用する。

皇太子同妃両殿下(現・天皇、皇后両陛下)のトンガ王国ご訪問の際に運航した全日空による特別機=2015(平成27)年7月2日、東京国際空港(羽田空港/東京都大田区)

文・写真/工藤直通

くどう・なおみち。日本地方新聞協会皇室担当写真記者。1970年、東京都生まれ。10歳から始めた鉄道写真をきっかけに、中学生の頃より特別列車(お召列車)の撮影を通じて皇室に関心をもつようになる。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物を通じた皇室取材を重ねる。著書に「天皇陛下と皇族方と乗り物と」(講談社ビーシー/講談社)、「天皇陛下と鉄道」(交通新聞社)など。

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