夏といえば「幽霊」といった怪談話はつきものだが、鉄道にもいくつかの不思議な話が存在する。日常的に利用している“あの路線”に”出た”のである。いくつかのお話のなかから紹介したいと思う。具体的な路線名や駅名は、あえて伏せるが、すべて私が現役の鉄道関係者から聞いた話である。気味悪がらずに最後までお付き合いいただきたい。
※トップ画像は、両国橋からJR総武線越しに見る隅田川の花火=2006(平成18)年7月29日、東京都墨田区両国
廃駅の地下ホームに女性の姿
東京の下町を走るK電鉄のH線には、かつてK駅というトンネル内に設けられた地下駅があった。廃止になったのは、1953(昭和28)年2月23日のことで、71年も前のことだ。今でもこの駅のホームは、トンネル内に残されており、通過する車内からは目を凝らせば“タイル張りの壁面”や“口出”と右書きで記された標識が見られる。ここを通過する始発電車の運転士は、ホーム跡にある地上へと続く階段に”座り込む女性の姿“を、何度となく目撃しているという。運転士のなかには、この場所を通過する際に思わず目を反らしてしまう人もいるそうだ。廃止駅のすぐそばには、都内でも有名な霊園があり、こうした話だけでも幽霊との関連性を想像してしまい、気味が悪いものだ。
トンネル内に燃え盛る炎
都内有数の高級住宅地を走るT電鉄のS線(当時)は、その昔は路面電車として運行していた路線だ。1977(昭和52)年に地下鉄として生まれ変わり、現在ではD線と呼ばれている。昭和の時代のことになるが、この路線のK駅とS駅の間(トンネル内)で、運転士が何度となく燃え盛る炎を目撃したという。そのたびに、電車は急停止し、運転士が消火器を持ってその場所へ駆け寄ると、炎は消える。この炎が目撃される場所の地上部には、T通りの旧道が通っている。いろいろ調べると、”炎が目撃されたとされる場所”の地上付近では、交通事故で亡くなられた方がいたそうだ。その後、関係者により事故現場でお祓(はら)いをしたところ、それ以来、トンネル内に炎が出ることはなくなったという。そのようなことがあるのか、と思ったものだ。