宿泊は茨城県庁舎
1946(昭和21)年11月には、8番目のご巡幸先として茨城県を訪問された。18日、東京駅発のお召列車で最初に向かったのは日立製作所日立工場であった。昼食は、この工場の一室で宮内省大膳寮が調理したサンドイッチを召し上がった、と伝え聞く。
その後、お召列車で水戸駅へ移動し、市内を視察されたのち、この日の宿舎である茨城県庁舎へと入られた。県庁舎では、知事室を居間として使用した。
食事は、夕食、朝食ともに宮内省大膳寮が調理したものを召し上がった。献立は、夕食が「清羹(せいかん=コンソメスープ)、ソーセージ酪煎(らくせん)、フスベル薫芋(いぶすこと、くんいも)、果物、パン、水」で、朝食は「オートミール、トースト、オムレット、サラド トマト」(以上原文ママ)と、いずれも洋食であった。このように、メモ書きとはいえ、表向きに献立が書き残されていることは珍しい。
文・写真/工藤直通
くどう・なおみち。日本地方新聞協会皇室担当写真記者。1970年、東京都生まれ。10歳から始めた鉄道写真をきっかけに、中学生の頃より特別列車(お召列車)の撮影を通じて皇室に関心をもつようになる。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物を通じた皇室取材を重ねる。著書に「天皇陛下と皇族方と乗り物と」(講談社ビーシー/講談社)、「天皇陛下と鉄道」(交通新聞社)など。