半世紀以上も愛用されているご成婚当時の傘を修理
皇室の方々は、身の回りの物を長く愛用し、大切に使われていると伝え聞く。傘も同様で、長く使われるものでは、修理しながら50年以上も愛用されているものがあるという。前原光榮商店では近年、上皇后美智子さまから1959(昭和34)年のご成婚のときに、正田家から持参したと思われる傘の修理依頼を受けたことがあるそうだ。経年で傷んだ部分を直すため、お付きの女官(じょかん)を通じての依頼だったという。
同じ傘は購入できる?
皇室に納めている傘は、さまざまな部分に工夫が凝らされている。骨は8本、石突きの先端(傘の先端)部分には「水牛の角(つの)」、ハンドルには最高級の「マラッカ籐(とう)」、生地には「絹の綾織り」を、畳んだ時に骨を固定する「玉留め」と呼ばれる部材には「純銀製」のものが使用される。また、傘をさした時のシルエットが美しくなるように、傘の直径もそれぞれお持ちになる方々に合わせて微調整を行なうそうだ。
こうした作りになっているものは、前原光榮商店の市販品にはないが、同等のものをオーダーメイドすることは可能で、男性用のもので1本15万円、女性用のものでは3万円ほどになるという。前原光榮商店の店舗「浅草三筋町店」に行けば、相談に応じてくれる。詳しくは、同社ホームページ(https://maehara.co.jp/)で確認してほしい。
文・写真/工藤直通
くどう・なおみち。日本地方新聞協会皇室担当写真記者。1970年、東京都生まれ。10歳から始めた鉄道写真をきっかけに、中学生の頃より特別列車(お召列車)の撮影を通じて皇室に関心をもつようになる。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物を通じた皇室取材を重ねる。著書に「天皇陛下と皇族方と乗り物と」(講談社ビーシー/講談社)、「天皇陛下と鉄道」(交通新聞社)など。