スタミナ源として食べられることも多い肉ですが、じつはそれ以外にもいろんな効果があると言われています。例えば、牛赤身なら貧血や風邪の予防、羊肉なら老化防止や生活習慣病予防、豚肉には動脈硬化を防ぐ作用が期待でき、内臓も部位に…
画像ギャラリースタミナ源として食べられることも多い肉ですが、じつはそれ以外にもいろんな効果があると言われています。例えば、牛赤身なら貧血や風邪の予防、羊肉なら老化防止や生活習慣病予防、豚肉には動脈硬化を防ぐ作用が期待でき、内臓も部位によって亜鉛やビタミンA・B2など、さまざまだ栄養素がふんだん。
というわけでおいしく食べて、健康な体を目指す『おとなの週末』的゛肉活”を紹介。夏バテ対策はもちろんのこと、これからの健康に役立ててください。
「肉」の驚きの効果
健康に長生きしたけりゃ肉がイイ! 確かに100歳を超えても現役医師として活躍した日野原重明さんは日ごろからよくステーキを食べていたというし、瀬戸内寂聴さんも肉を(酒も)好むとか。
ミドルエイジからの肉活は本当に健康長寿への一歩? まずは栄養から考えてみよう。
例えば牛肉に鉄分んが豊富なのはご存じの通り。特に赤身は身体への吸収率が高いヘム鉄や亜鉛が多く、貧血や味覚障害の改善にいいとされる。
豚肉の特徴ならダントツでビタミンB1だ。糖質をエネルギーに変えるために必要なビタミンで、疲労回復や心身の活性化にも効果的。
その含有量は最大で鶏肉や牛肉のなんと10倍! 羊肉も脂質代謝に関係するL‐カルニチンという成分が多く、脂肪燃焼や脳機能向上による認知症予防の可能性も注目されている。
ホルモンだって優秀。脂こってりの印象もあるが、じつは精肉と比べて低カロリーで、部位によっては糖質ゼロというから驚く。なかでもレバーは牛肉と同じで鉄分が多く、免疫力を高めるビタミンAも豊富だそう。
となると肉活は期待大。それになんといっても肉は筋肉や骨など私たちの身体を作るアミノ酸が原料であるタンパク質の宝庫。活力の源だ。
霜降りはどうか?
「お茶の水健康長寿クリニック」の白澤卓二院長は「高齢になるほどタンパク質の摂取が減り、低栄養になります。肉や卵など良質なたんぱく質は健康長寿には欠かせません」と話す。
「肉にはさまざまな栄養がありますが、それに加えて大事なのは咀嚼力がつくこと。噛むという運動で脳の血流が良くなり、認知症の改善や予防が期待されます。それに足腰がしっかりして、要介護になりづらくなるのです」
肉食=噛み応えのある食事で咀嚼機能を鍛えれば健康長寿に近づくということ。ならばとろけるような霜降りにくはNGか――?
「脂肪たっぷりの柔らかい肉ばかり食べていてはダメです。私の言う良質な肉とは良い土の牧草のを食べて健康的に育ったグラスフェッド牛など、飼育環境がいい赤身のこと。今はニュージーランド産に注目しています」
やみくもに肉を食べればOKという訳ではないのだ。つまりは動脈硬化などの要因になる飽和脂肪酸が少ない良質な肉を正しく食べることが大事。
それにはなるべく自然に近い状態で肥育された肉を選ぶのもポイントだどう。
もちろん健康には野菜や魚もバランスよく摂取することが不可欠なのは言うまでもない。
牛・羊・豚・内臓の各栄養素
牛の栄養素
代表的な栄養素は鉄分と良質なタンパク質。人間の体で作り出せない必須アミノ酸がバランスよく含まれている。特に赤身は身体に吸収されやすいヘム鉄やビタミンB12、亜鉛も多く、貧血や風邪の予防、味覚障害の改善などが期待できる。
羊の栄養素
脂質の代謝促進や悪玉コレステロールの蓄積を防ぐとされるL-カルニチンが豊富で、ダイエットや生活習慣病の予防にもいい。胃腸病や皮膚炎を防ぐナイアシン、老化防止のビタミンEなども豊富。コラーゲン効果で皮膚や骨、目の健康にも。
豚の栄養素
代謝アップに欠かせないビタミンB1が豊富。疲れの原因となる乳酸が溜まるのを防ぐ効果も。抗酸化作用を持つビタミンB2やビタミンEも多く、老化やガンの原因になる活性酸素の除去、動脈硬化の原因になる過酸化脂質の生成を防ぐ働きもある。
内臓の栄養素
内臓全般では、喉や鼻の粘膜を強化して免疫力を高めるビタミンAなどのビタミン類、感染症予防にもなる亜鉛、貧血改善の鉄分が豊富。中でもレバーはビタミン含有量が高く、50gで成人が1日に必要とするビタミンAやビタミンB2をまかなえる。
…つづく「「酢豚に”加熱パイナップル”は入れないで」…意外と知らない「肉と相性のいい《野菜&くだもの》」…栄養士が解説」では、肉の栄養を効果的に摂る野菜と果物を紹介します。
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■白澤 卓二院長
日本抗加齢医学会理事、基礎老化学会理事などを務める傍ら、寿命制御遺伝子の分子遺伝子、アルツハイマー病の分子生物学などの研究にも取り組む。著書も多く『70歳からの肉食革命』(山と渓谷社)、『脂中毒 長生きしたければ、正しい肉を食べなさい』(海竜社)などがある。
『おとなの週末』2019年9月号より