世界初のGPSカーナビも圧巻
デザインよし、インテリアよし、そしてエンジンも独創的かつ画期的。これだけで終わらないのがユーノスコスモの凄いところで、機能面でもチャレンジングだった。
その筆頭が、自動車メーカーの純正品として世界初のGPSカーナビの搭載。アフターではパイオニアが『道は星に聞け』と謳い、世界初のGPSカーナビを販売していたが、CCS(カー・コミュニケーション・システム)には驚かされた。
このCCSは20B搭載のトップグレードに標準装着されていて、その車両価格は当時としてはぶっ飛びの530万円!! CCSの装着されないEグレードに比べて65万円高の超がつくほどの贅沢品だった。
そしてもうひとつ画期的だったのが、今では当たり前となっている液晶モニターのタッチパネルを採用していたこと。30年近く前のことだと思うとその先見性、マツダの技術力には敬服するばかり。
日本人が着いていけなかった!?
バブル期に登場し、そのインパクトは絶大だったユーノスコスモだが、残念ながら販売面では苦戦を強いられた。最大の要因はバブルの崩壊によって日本の景気が一気に後退したことにある。一部の熱狂的なファンを生み、今でも愛し続けている人たちはいる。しかし、チャレンジングで破天荒と言えるキャラクターを日本人が着いていけなかったのも事実。そう考えると、バルブが崩壊していなくても、変わらなかったのかもしれない。
ただ、こんな破天荒なまでの魅力を持ったユーノスコスモをマツダが市販してくれたことに敬意を表したい。
【マツダユーノスコスモ タイプE CCS主要諸元】
全長4815×全幅1795×全高1305mm
ホイールベース:2750mm
車両重量:1640kg
エンジン:654cc×3、直列3ローターツインターボ
最高出力:280ps/6500rpm
最大トルク:41.0kgm/3000rpm
価格:530万円(4AT)
【豆知識】
ユーノスコスモをデザインした小泉巌氏は、数多くのマツダ車をデザインしてきた。マツダの社員デザイナーだが、その奇才ぶりは群を抜いていたように思う。初代フェスティバ、ファミリアアスティナ、ユーノス500、ユーノス800、CX-7、ビアンテなどの市販モデルのほかにショーモデルも手掛けている。その代表作にはHR-X(東京モーターショー1991)、RX-01(東京モーターショー1995)などがある。
市原信幸
1966年、広島県生まれのかに座。この世代の例にもれず小学生の時に池沢早人師(旧ペンネームは池沢さとし)先生の漫画『サーキットの狼』(『週刊少年ジャンプ』に1975~1979年連載)に端を発するスーパーカーブームを経験。ブームが去った後もクルマ濃度は薄まるどころか増すばかり。大学入学時に上京し、新卒で三推社(現講談社ビーシー)に入社。以後、30年近く『ベストカー』の編集に携わる。
写真/MAZDA、ベストカー