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11月~3月、新酒のシーズン

「伝統的酒造り」の無形文化遺産登録のニュースに小躍りしたライターの私。ただ、日本酒は大好きなのだが、薄っぺらな知識しかないのでただただ美味しく飲んで気持ちよく酔っ払うのみという付き合い方だ。

知っているのは、日本酒には季節があるということ。11月末くらいから3月頃までのまさに今は、搾りたての新酒が流通するシーズン。

『朝日屋酒店』の店主・小澤和幸さんは、日本酒の数ある魅力の一つに新酒の存在があると言う。「新酒には搾りたてという付加価値があります。おもしろいのが、できたてなのでまだ荒々しい味わいのことも多いんです」

『焼き鶏 青天上』の店主・齋藤正浩さんは「開栓して新酒らしいみずみずしさとフレッシュ感を楽しんだら、しばらくの間寝かせておくと、また違った美味しさになります。2〜3週間、中には1カ月くらい置くと、美味しくなります」

『朝日屋酒店』の小澤和幸さん(右)と『焼き鶏 青天上』の齋藤正浩さん

新酒とは、貯蔵期間を設けず、その年に仕込んで出来立てですぐ出荷されるお酒のことを指す。だからちょっと炭酸が残ったピチピチとしたヤング感と、思春期っぽい荒ぶり感があるのか。少し置いておくことで、まるで成長していくような様も興味深い。

日本酒は一般的に冬場に造る。春先に搾った日本酒を夏の間に熟成させて、9月から10月頃の秋口に出荷するものを「ひやおろし」と呼ぶ。常温の日本酒のことを「冷や」というが、「ひや=生」「おろし=出荷する」を語源とするとされている。

同じ「生」がついても、こんなに違う

ひやおろしは火入れを1回しか行わない「生詰め」という技法が用いられている。保存性の問題により、かつては酒蔵の近くに住む人しか飲めなかったという貴重品だったため、ちょっと特別視される存在だ。まろやかな飲み口と深い味わいが特徴で、「秋あがり」「秋晴れ」などとも呼ばれる。

菌の働きを抑制する火入れは通常、アルコール発酵が終了して液体と酒粕に分離させる「搾り」を行い濾過したあとと、それを貯蔵し調合などをして瓶詰めする直前という、計2回行うのが一般的だ。

一度も火入れをしないのが「生酒」、1回目の火入れのみを行う「生詰め酒」、2回目の火入れのみの「生貯蔵酒」と、火入れの回数とタイミングによって名称が異なる。

日を経ることに深みが変わってくる熟成は育てている感があって楽しい。冷暗所に置いておいて、チビチビと飲むだけだけど。“生”が付くお酒の飲み比べもいいし、ラベルの記載などを見つつ自分自身の舌で飲み比べてみるのもいいと思う。日本酒を巡る愉しみは実に奥深い。

新酒ができた合図として飾られる杉玉

参考資料:『新訂 日本酒の利酒師必携』(※本来は、口編に「利」)、国税庁「海外のユネスコ無形文化遺産(酒類関係)に関する調査業務」(https://www.nta.go.jp/taxes/sake/koujikin/pdf/0022004-077_01.pdf)、マイナビニュース:中世から続く伝統的なワイン収穫祭「Fete du Biou」|無形文化遺産への登録も申請中
「(https://news.mynavi.jp/article/20240920-3028879/)

■朝日屋酒店
1956年創業、日本酒は約400種類、焼酎は約200種類を並べる地酒専門店。キャッチコピーの「隠れた美酒・名酒を求めて…」の通り、日本酒通でなくても唸るような有名銘柄はもちろん、家族で酒造りをしているような小さな蔵元の酒なども取り揃えている。東京農業大学の醸造科で学ぶ蔵元の子息・息女が在学中には同店でアルバイトをするケースも多数。まろやかな口当たりながら強い旨みとキレのよさも楽しめる食中酒にぴったりのオリジナル日本酒「竜巻」(720ml 1375円・1.8l 2801円)も展開。東京農大の研究室との勉強会や全国の蔵元との利き酒会なども積極的に行っている。インスタライブも行っているので要チェック。

住所:東京都世田谷区赤堤1-14-13
電話番号:03-3324-1155
営業時間:10:00〜19:30
休:水曜
交通:小田急線豪徳寺駅・東急世田谷線山下駅から徒歩6分、小田急線共同駅から徒歩7分

■『焼き鶏 青天上』
2021年6月、系列店の3店舗目として西荻窪にオープン。さっぱりとしているのに味が濃い千葉県産の総州古白鶏を使った焼き鳥や刺身、一品料理などを提供する。2014年開店の焼き鳥がメインの1号店と、魚料理がメインで2015年オープンの2号店は、東京メトロ丸ノ内線南阿佐ヶ谷駅からほど近く。西荻窪の店舗は南阿佐ヶ谷の両店のいいとこ取りをしたような構成。いずれの店舗も日本酒の品揃えに定評があり、メニューにはお酒の説明書きに加え、味わいのタイプ別一覧、料理との相性などを示しており選ぶときの参考にできるようになっている。『おとなの週末』本誌やテレビなどでも多数紹介。お酒の仕入れは朝日屋酒店などいくつかの酒店で行っている。

住所:東京都杉並区西荻南3-24-1
電話番号:03-6913-7719
営業時間:16:00〜0:00、土日祝15:00〜0:00
休:無休
交通:JR総武線西荻窪駅から徒歩2分

文・写真/市村幸妙

いちむら・ゆきえ。フリーランスのライター・編集者。地元・東京の農家さんとコミュニケーションを取ったり、手前味噌作りを友人たちと毎年共に行ったり、野菜類と発酵食品をこよなく愛する。中学受験業界にも強い雑食系。バンドの推し活も熱心にしている。落語家の夫と二人暮らし。

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市村 幸妙
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