「お燗」で変わる味わいを楽しむ
冷酒や冷やと呼ばれる常温のままでいただくのも楽しいが、近年目覚めたのが熱燗の美味しさだ。提供される温度での名称はけっこう細かく設定されている。
【日本酒の提供温度と名称】
5度:雪冷え
10度:花冷え
15度:涼冷え
20度:常温
30度:日向燗
35度:人肌燗
40度:ぬる燗
45度:上燗
50度:熱燗
55度以上:飛び切り燗
お燗をすることによる、アルコール度数やアルコールの感じ方はどう変わるのだろうか。
小澤さん:「アルコール度数はそれほど変化しませんが、温度が異なることで味の感じ方が変わってきます。味噌汁でも温かく飲むのと冷たく飲むのでは、風味や塩みなどの感じ方が変わってくるのと一緒です」
齋藤さん:「お燗にすることの最大の特徴は、味わいや香りの広がり方が変わることだと思います」
小澤さん:「燗でも膨らみを求める方と、キレを求める方がいると思います。スパッと刺さるような辛口のお酒を燗にすると、ツンとしたアルコール臭を感じることもあります。昔ながらの造りの生もとや山廃は基本的にそれがなく、燗酒に向いています」
お燗と冷やでは味の感じ方がまるっきり変わる。熱燗にすることで硬かった酒質がふわりと開いていくこの経験はまさに燗酒の醍醐味だと思う。
ぜひ味や香りをしっかりと感じられる、浅く広い形をした平杯と呼ばれるお猪口で楽しんでみてほしい。
美味しく燗をつける方法
ただ、家で燗をつけるのが難しいと感じているのは確か。
小澤さん:「家だったら小さい鍋などに熱湯を張り、とっくりを入れて湯煎のようにすると2〜3分も経ったらぬる燗くらいになります。火にかけるわけではないので、ぬるめに感じるかもしれませんが、お燗したお酒の味を見るにはぬる燗がベストです」
齋藤さん:「うちも湯煎するタイプの器具を使っています。アルバイトも燗づけするので、スタッフのパフォーマンスを考えた結果です。お酒にもよりますが、基本的には提供時50度前後がいいと思っているので、湯は60度くらいで設定しています。注いでいる間にも温度は下がるので、気持ち熱めにしています。
実際には置いておくと温度帯も変わりますし、お客さまの好みもあるので、もっと温めてほしいなど、気軽にお伝えいただきたいですね」
気軽にお願いできるのはありがたい。そういえば、過去に「燗ざまし」と、わざわざお燗したお酒を冷ましてから提供してくれるお店もあったなぁと思い出した。
本当に日本酒の飲み方ってたくさんあってユニークだ。