そこで、スペイン語の辞書で「リア」を調べてみると、湾という意味もありますが、「潮入り川」という意味でした。さらに、リアということばは「リオ(川)」から生まれてきたことも知りました。
つまり、三陸海岸に見られるように、複雑に入りくんだ湾は、もともと、川がけずった谷だったのです。それが大昔に、地殻変動が起こり、谷底が深く落ちこんだため、海が谷に入りこんでできた地形だったのです。ですから、海におぼれた谷、「おぼれ谷」ともいわれています。
「リアス式」とだれが最初に呼ぶようになったのかはわかりませんが、明治になって教科書をつくるとき、日本語でどう表現するか迷ったのでしょうね。英語でも、リアス・コーストとあらわしているので、「リアス式」としたのでしょう。
このことを知るまで、わたしは三陸海岸が、世界のリアス海岸の中心だと思っていました。でも、スペイン語であるなら、とうぜんスペインのどこかにリアス海岸があるということです。
みなさんは、スペインといえば、何を思いうかべますか。
フラメンコ、闘牛、バレンシアオレンジなどでしょうか。観光ポスターなどでは、光と影、かがやく太陽が強調されていますね。ところが、リアス海岸の本場は、雨が多く、「しめったスペイン」といわれる、スペイン北西部のガリシア地方の海岸なのです。
ポルトガルとの国境に近い、ビゴ湾から北へ800キロメートル、三陸海岸の約3倍の長さで、入りくんだ岸が続いているのです。そこは、「ガリシアの海でとれないものはない」といわれるほど豊かな海で、スペイン最大の漁業基地があることでも有名でした。
もちろん、波静かな湾では、養殖業がさかんで、ホタテ貝、カキ、そしてムール貝の養殖は世界一だそうです。