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フランスの川の流域との違いに、わたしは落胆しました。それからは、森と里、川、海のつながりについて意識的に勉強し、調査をするようになりました。当時、山のことは林野庁、水田はの農林水産省と行政は縦割りで、どこに問い合わせても海と川と山を総合的に見る視点がなかったのです。

1981年(昭和56年)から、日本では「全国豊かな海づくり大会」が開催され、天皇皇后両陛下に稚魚を放流していただいています。しかし、放流しても、生き物の育つ川や海の環境を整えなければ育たないのではないでしょうか。疑問が膨らみます。

そこで、カキ養殖の名人たち「牡蠣師」に声をかけて話し合いました。ロワール川流域の落葉広葉樹の森の話をすると、こんな声が上がったのです。

「室根山に、漁師が植林したらどうだべ。海から見えるところに」

なるほど、と思いました。これが「森は海の恋人運動」のヒントになったのです。

…つづく「こんなうまいものがあるのか」…20歳の青年が、オホーツクの旅で《ホタテ貝の刺し身》に感動し始めた「意外な商売」では、かきじいさんが青年だったころのお話にさかのぼります。

連載カキじいさん、世界へ行く!第4回
構成/高木香織

●プロフィール
畠山重篤(はたけやま・しげあつ)

1943年、中国・上海生まれ。宮城県でカキ・ホタテの養殖業を営む。「牡蠣の森を慕う会」代表。1989年より「海は森の恋人」を合い言葉に植林活動を続ける。一方、子どもたちを海に招き、体験学習を行っている。『漁師さんの森づくり』(講談社)で小学館児童出版文化賞・産経児童出版文化賞JR賞、『日本〈汽水〉紀行』(文藝春秋)で日本エッセイスト・クラブ賞、『鉄は魔法つかい:命と地球をはぐくむ「鉄」物語』(小学館)で産経児童出版文化賞産経新聞社賞を受賞。その他の著書に『森は海の恋人』(北斗出版)、『リアスの海辺から』『牡蠣礼讃』(ともに文藝春秋)などがある。

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高木 香織
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